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19号春日井共同溝(大泉寺・瑞穂)工事

私たちがより安全で快適な生活を送るために,
社会インフラの整備は必要不可欠である。大深度地下法の成立は地下の有効利用を促し,ライフラインをはじめ鉄道,道路・・・と,今後地下空間の利用は限りなく広がる。
こうした地下構造物の構築に欠くことのできないシールドトンネル技術は,いま大きく進化している。

工事概要
19号春日井共同溝(大泉寺・瑞穂)工事
場所:愛知県春日井市大泉寺町〜勝川町4丁目
発注者:国土交通省 中部地方整備局
規模:トンネル延長6,820m
仕上がり内径 4,200mm
トンネル掘削工法 泥土圧式シールド工法
(リレービット工法)
工期:2001年3月〜2007年3月
(名古屋支店JV施工)

現場周辺。中央に見える四角の建物が発進基地。手前に走る国道19号直下を掘り進む
春日井共同溝
民間技術を導入したシールドトンネル工事
 当社JVが施工を進める春日井共同溝は,愛知県春日井市大泉寺町から勝川町4丁目までを結ぶ,中部電力とNTTケーブルを収容する共同溝である。完成すると,楠・味美(あじよし)共同溝と接続し,名古屋市と春日井市を結ぶライフラインのネットワークの一部として重要な役割を担う。
 当工事は,1日約7万台の車が行き交う一般国道19号直下で行われるため,道路交通の確保と沿道の環境保全が大前提となった。こうした課題の克服と建設コストの低減を図るため,設計・施工提案型入札時VE方式による入札が行われ,民間の優れた技術に期待が寄せられた。
 工事を受注した当社JVの提案技術は,泥土圧式シールド工法により,延長6,820mの堅固な砂礫地盤を1台のシールドマシンで掘り進む,国内最長のシールド工事となった。当社の保有技術「リレービット工法」による新たな挑戦だ。
 従来,シールドマシンによる平均掘削距離は2km程度。掘り進むにつれてカッタービット(土砂を削る刃)が磨耗するため,長距離掘削の場合は,地盤改良を施し作業員が切羽に出てビットを交換するか,或いは立坑を構築し交換作業を行っていた。従ってカッタービットの交換に多くの時間とコストがかかっていた。リレービット工法はマシン内部から“いつでも,どこでも,何回でも”任意のカッタービットを簡単に交換できる。交通阻害の低減,コスト・工期の縮減に加え,作業員の安全確保と品質の向上を図る画期的な技術だ。
 この他にも当現場では,新型セグメントの開発によるセグメントの自動供給・組立て工法や,資機材の自動搬送システムなど最新の開発技術を導入し工事を行っている。
トンネルの部分拡幅工事
 工事は平成13年(2001年)3月着工。大泉寺工事(3,420m)と瑞穂工事(3,400m)の2期に分け行われている。平成15年12月には大泉寺工事の掘進が無事終了し,シールドマシンの安全性,耐久性を確認。現在,瑞穂工事が1日当たり10mの掘進で順調に進んでいる。
 10月中旬,現場を訪ねた。シールドマシン・愛称「モグ丸」は,3,800m地点まで掘り進んでいた。現場を総括する辻井孝所長に現場を案内してもらった。人車に乗り込みトンネル先端部へと向かう。完成したトンネル内を片道40分ひた走る。途中,見学に来た子どもたちが記念に描いた絵の数々がトンネル内を飾る。作業員が集うベンチを配した休憩コーナーを見て,地中での長時間労働に頭が下がる。土砂を積載した無人バッテリー・ロコ(電気機関車)とすれ違う。長距離トンネル施工には不可欠なシステムであることを実感した。
 一部シールドの内径が拡幅し鋼製のセグメントにかわる箇所がある。共同溝に設置される電力ケーブルの分岐点だ。
 「トンネルの部分拡幅もこの工事の特徴のひとつです。事前に地盤改良を行った後,既設のセグメントを撤去して,拡幅推進機を使用しトンネル側から手掘りで地中空間を2.5m切り広げます。人と地山とが接する部分なので,安全には非常に気を使います」と辻井所長が説明してくれた。
 部分拡幅工事もコスト・工期の縮減を目指し,従来の技術と新技術とをマッチングさせて新たな施工法を生み出した。高度な技術の実現の裏には,工事関係者の汗と努力がある。

リレービット工法を採用した高耐久性シールドマシン「モグ丸」
使用前のカッタービット(左)と磨耗したカッタービット。これまでに計4回交換作業を行った
完成した春日井共同構大泉寺工事部
新セグメントの開発で全自動組立てを実現
 トンネルの先端部では,セグメントの組立て作業が行われていた。無人バッテリー・ロコで地上から搬送されたセグメントは,自動供給装置にセットされ,エレクターによって順次組み立てられて行く。全自動でセグメントの供給から組立てまでを可能にしたのは, QB(クイック・ブロック)Uセグメントの開発(当社とジオスターの共同開発)による。従来セグメントはボルトにより連結されていたが,QBUセグメントはボルトレスで相互のセグメントをワンタッチで締結でき,二次履工も省略できる。1リング・5ピースのセグメントの組立てを30〜35分程度で辻井所長行える。
 辻井所長はこう語る。
 「これからは 技術で価格競争して行く時代です。当現場で実証された新技術は,現在他現場でも積極的に導入されて来ています。パイオニア現場としての任務をまっとうするよう,無事工事を完了させます」。 
 当社のシールドトンネル施工技術の粋を集めた春日井共同溝工事。平成19年3月の完成時,とびきりの辻井所長の笑顔に会えることを期待する。
19号春日井共同溝(大泉寺・瑞穂)工事
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無人バッテリー・ロコで地上より約40分かけて搬送されたセグメントは,自動運搬機によって供給装置へセットされる
拡幅部分は,通常通りシールドマシンにより施工後セグメントを撤去し,拡幅推進機を設置。トンネル内部から拡幅部を手掘りし,鋼製セグメントを設置する。拡幅推進機によりセグメントを前へ推し進め,繰り返し拡幅部を掘削する
供給装置にセットされたセグメント(右)は,一つずつエレクターにより自動組立てされる。エレクターがセグメントの位置決めをする様子(左)は人間さながら
リレービット工法は,カッターディスク内に作業空間を設け,任意のビットを簡単に引き抜き,新しいものと交換できる