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![]() 新北九州空港旅客ターミナルビル新築工事 完成間近!北九州の新しい空の玄関 小倉を中心に商業・流通・観光都市として発展を続ける九州第二の都市・北九州市。 その東部,周防灘海上に,次代を担う新空港が生まれる。大型ジェット機の離発着が可能な本格的海上空港である。北九州圏域の利便性だけでなく,世界へ羽ばたく東アジアのゲートウェイとして,新空港への期待は大きい。 当社が建設を進める新北九州空港旅客ターミナルビル新築工事現場を訪ねた。 |
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工事概要 新北九州空港旅客ターミナルビル新築工事 場所:北九州市小倉南区 発注者:北九州エアターミナル 設計・監理:梓・HOK新北九州空港 旅客ターミナルビル設計共同企業体 規模:S造 3F 延べ14,868m2 工期:2004年8月〜2006年1月 (九州支店JV施工) |
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3つの事業が生んだ新空港プロジェクト 羽田空港から飛行機で1時間30分。周防灘に浮かぶ新北九州空港島を一瞬眼下に見ながら,飛行機は旋回して住宅街の中の北九州空港に着陸した。北九州市小倉南区にある現空港は,1,600mの滑走路を持ち,1日4〜5便の東京便が就航している。三方を山に囲まれているため,霧などの発生により着陸できず行き先変更や欠航が起きることがある。一方で,近年の九州・山口地域は航空旅客数,航空貨物取扱い高が大幅に増加してきた。これに対応するためにも行き先変更や欠航への対策が必要となった。 しかし,拡張しようにも現在の空港周辺の状況ではとても無理。そこで,北九州市東部の周防灘約3kmの海上に新空港を建設することになった。 新空港の建設は,空港島用地の造成から始まった。新たに埋立てを行うとなると費用も時間もかかるが,今回は港湾整備事業と空港整備事業の合併事業として,関門海峡の港湾整備で定期的に発生する浚渫土砂を埋立てに活用することができることになった。 併せて東九州道苅田北九州空港ICと新空港を接続する連絡道路整備事業も行われ,この3つの事業が手を組むことで,海上新空港プロジェクトが進められている。 |
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ターミナルビル建設での苦労と提案 空港島は,長さ4,125m,幅900m,総面積373ha。当社が施工を担当したのは,地上3階建て,総延床面積1万4,868m2の新空港ターミナルビル。1階が到着ロビー,2階が出発ロビーの2層方式の建物となっている。 ターミナルビルの現場事務所は新空港の最寄駅となるJR日豊線・朽網(くさみ)駅の近くにある。そこから建設現場の空港島へは新空港連絡道路橋が唯一の通行ルートだ。 現場事務所の和田明博工事課長の運転で現場へ向かう。連絡道路橋は一部が施工中のため走行は30km/hに制限されている。その上,施工中は一回の通行につき400円の通行料がかかる。「ですから,一日にそう何回も行き来はできません。上下水道やガス,電気なども整備されていないので,飲み物や弁当を忘れるともう大変」と和田工事課長。海上空港ならではの苦労を聞きながら約2.1kmの連絡道路橋をゆっくりと渡っていく。 現場に着くとまだ造成が続く正面駐車場の奥にターミナルビルが見えた。カーテンウォールに彩られた外観はほぼ完成。現在は主に内装工事と一部の外装・搭乗橋の建設を進めていた。「着工してから今日でちょうど1年経ちました」と中園定次所長が工事の経緯を温かみのある九州弁で語ってくれる。 「今回のターミナルビル建設工事では,空港島造成と同様にコストを抑えることが課題となりました。そのため当社建築管理本部,技術研究所,支店が一体となり,VE提案を施主・設計者に粘り強く行って,コストの見直しを図りました」 見積り提出時の基礎工事は,節杭と直接基礎併用のパイルド・ラフト基礎で発注していたが,地盤に対する詳細な調査・検討を行いフローティング基礎を採用することにした。原設計と同等の機能を有し,工期面でも有利なことが評価されての変更だ。 その他,地中梁のメッシュ化など躯体工事の合理化などさまざまな提案が採用された。施主・設計との良好な関係あってこそのVE提案の成功だった。 |
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小さく産んで大きく育てる ターミナルビル建設で大きな特徴は,将来の需要増を見込んで容易に拡張できるような設計になっていることだ。組柱(エコ・コラム)と組梁(エコ・トラス)で構成した22.5m四方の大きな大スパンモジュール構造の空間を1ユニットとして,そのユニットの連続でビルが形作られている。エコ・コラム,エコ・トラスそれぞれの中に空調や電気など諸設備を集約することでパイプシャフトの代わりを担い,省スペース化を図ることができる。屋根も大型トップライトを備えたピラミッド型の屋根を1ユニット完結型として備えることで,増築時にわざわざ屋根の付け替えをしなくて済む。既存部分の隣に新たなユニットを接して建設し,間の壁を取り払えばつぎはぎのない綺麗な増築が簡単にできる。 ところが,想定外のことが起こった。「まさか施工中に増築することになるとは思いませんでした」と中園所長。当初は,縦2ユニット,横5ユニットとエントランスロビーの1ユニットの計11ユニットで建設を進めていた。それが新規航空会社のスターフライヤー社の就航が決まり,事業計画が明確化。今年8月から急遽関連施設の増築を行うことになったのだ。 「びっくりしましたが,増築に対応できる構造だったので慌てはしませんでした」。成長に柔軟に対応できるターミナルビルへの自信ゆえの余裕だ。目下,内装工事とともに航空会社事務所の北側への1ユニット増築,右側の搭乗橋追加建設が急ピッチで進められている。完成後も建物の左右,駐車場側に増築が可能だ。その時々の需要に的確に応えることができることを,今回の急な増築で証明した。 「小さく産んで大きく育てる」というコンセプトの通り,航空需要の変動やさまざまなニーズの変化に柔軟に対応できるターミナルビル。これから九州の玄関口として重要な役割を果たすことが期待される。 長さ2,500m,幅60mの滑走路は,大型ジェット機の就航を可能にする。海上空港だから航空騒音の影響が少なく,離発着本数も増やすことができる。将来的には24時間化も想定されている北九州市の新しい空の拠点は,来年3月の開港予定である。 |
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空港ロビーと飛行機を繋ぐ可動式の搭乗橋(PBB/パッセンジャー・ボーディング・ブリッジ)。飛行機の乗り降りの際に,ロビーと飛行機の間を繋ぐ重要な設備である。飛行機の形状に自在にフィットして風雨を防ぎ,搭乗時の安全性・快適性を確保する。通常のPBBは通路が全て壁面で覆われているが,今回採用されたPBBは全面ガラス張り。カーテンウォールに彩られたターミナルビルとガラス張りの固定橋の外観にマッチし,発着で訪れる人々は北九州の豊かな風景を楽しむことができる。眺望,デザイン性だけでなく,ガラス面が多用されていることで自然光を最大限に活用し,照明エネルギーの低減など環境面にも配慮している。 |
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