極める

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高山晴夫
「植物の達人」

技術研究所 環境技術研究部 生物環境グループ長
高山晴夫さん
1. 高山さんが手がけた東通原子力PR館「トントゥ・ビレッジ」のビオトープ
2. 加太小学校ビオトープに来たアオサギ
3. ヒマラヤ山脈で高山帯の植物の調査にも参加

 環境意識への高まりとともに,建設に対しても様々な環境への配慮が求められる時代となっている。そうした中,当社では屋上緑化・壁面緑化やビオトープなど,緑化や生態系保全に対する様々な技術開発を行っている。その先頭に立っているのが高山さんだ。
 高山さんは大学及び大学院理学部生物学科で植物,特に海岸崖地の植物群落を専門に研究していた。当社に入社したのは1989年のこと。これまでの研究とは全くの異分野である『建設業』に飛び込むことに不安はなかったのだろうか?「植物の研究,特に私のような特殊な分野の研究をしていると,他分野の人と関わる機会は非常に少なく,自分の世界をもっと広げたいという気持ちはありました。建設業はこれまで『つくる』ための技術を磨いてきたわけです。一方,環境問題が叫ばれるようになってきたものの,自然や生態系を真に理解している人がいないということでした」。当社における植物の専門家の第一号が,高山さんだった。
 入社後は,道路を作る際の法面緑化やゴルフ場の芝関連の技術開発・施工支援,アトリウムに適した植物の選定などの業務に従事した。当時は建設会社が緑化の研究をすることに批判の声もあったという。「社内でも肩身が狭く,味方もいませんでした」と笑うが,そうした状況下でも研究を続けた結果,ビオトープ創生技術,屋上緑化用軽量培養土「ケイソイル」,壁面緑化パネル「グリーンスクェア」など,数々の緑化技術が生まれ,当社は現在,この分野では他社をリードする存在だ。
 「自然」と「都市」――。これまでこの二つは敵対するものと捉えられていた。実はそうではなく,色々な段階の自然があるのだと高山さんは言う。「人間は原生林の中に置かれても快適ではないんですね。ある程度管理された半自然的な環境のほうが住みやすい。植物にとっても同じで,そうした半自然的環境でしか生きられない種もあります。建設業のこれからの仕事は,自然と人為環境の接点をどのくらいのレベルに置くのかを考えていくことにあると思います。我々は様々な構造物をつくっているわけですが,そのときにちょっと工夫することで,全く生物がすめなかった場所に生物がすめるようになったり,失われつつある環境を復元できる可能性がある。そういったことを積極的に進めて『自然 対 建設』ではなく,『自然のためになっている建設』というところを目指していきたいと考えています」。
 いま取り組んでいるのは,現場で出た残土を,簡易に緑化に利用する方法だ。「緑化に不向きな土でも,緑化に使えるレベルの土に,現場で簡単に改良するシステムを開発中です。今後は事業を行っていく上で,トータルで環境面にプラスになっているかどうかが重要になってくると思います。それをつくるためにどこか他の環境を破壊しては意味がないのです。建設業と植物の分野はまだ言葉や文化が違ったり,お互い接点が見出せないでいる。そうした中で両方の言葉を理解して『通訳』をしながら,両者の橋渡しになれればと考えています」。


アオサギ

ヒマラヤ山脈
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