クローズアップ
かじまじん:

新称ハゼの名付け親の“おさかな博士”
   <海洋バイオテクノロジー研究所出向 萩原 清司さん >



 天文学者が新しく発見した星に名前をつけるように、世界で初めての魚は新種、日本で最初に確認された魚は新称として、発見した人が名前をつける習慣があります。今回のかじまじんに登場する萩原さんは、すでに4種のハゼの名付け(和名)親となっている“おさかな博士”です。


萩原 清司さん
はぎわら きよし
1989年入社。以来葉山水産研究室勤務。99年(株)海洋バイオテクノロジー研究所釜石研究所に出向。海に流失した石油が分解される際に生物に与える影響の研究などを行なっている


 岩手県・釜石。鉄の街として有名だが、三陸海岸に位置し、恵まれた漁場を擁する街でもある。萩原さんが現在勤務している研究所も、すぐ目の前に太平洋が広がっている。

「小さい頃から生き物が大好きで、大学も水産学科に進み、江ノ島水族館に学芸員として就職しました」。その後、鹿島に入社して葉山水産研究室(現:技術研究所葉山水域環境研究室)でビオトープや干潟の環境保全などの研究を行なってきたという、ちょっとユニークな経歴の持ち主だ。その仕事の傍ら、慣れ親しんだ三浦半島・相模湾をテーマにハゼの研究を続け、魚の図鑑も共著で何冊も執筆している。

またそうした学術的な活動だけでなく、子供を対象とした自然観察教室の先生役や、葉山の町民大学の講師なども務めてきた。「子供たちには、生き物、魚に興味をもってもらうよう実際に触れさせてみる。かたや大人は、理論などから入ると関心を持ってくれるんですよ」と“魚”の魅力を多くの人に伝えるため、様々な苦労や工夫もしている。


ホムラハゼ
名付けの親となったうちの一つ『ホムラハゼ』。
何故その名前にしたかというと、「その色・形から“炎”を連想したので」

 この4月に、10年近く研究を行なってきた葉山から、岩手県釜石市に仕事の場を移すことになった。萩原さんが今一番興味があることは、「豊かな自然に恵まれたこの土地で、“川”の魚を観察することです」

 さらに将来の夢となると、「ナチュラリストでありたいというのは、自分の生涯のテーマであり、ライフワークです。それから企業人としては、“建設会社=環境破壊”というイメージが強いけれど、一方でそれを再生する、修復できる理論や技術を持っているのも、建設会社だと思うんです。せっかく建設会社にいるのだから、その辺りをやっていきたいと思います」。

 個人的には「実はまだ新種のハゼをいくつか持っているので、はやく論文にまとめなくちゃいけないんです」と笑う“さかな博士”の多忙な毎日は、まだまだ続きそうだ。