BACKSTAGE![]() |
![]() 報道をつなぐ多方向階段 日々のニュースを追って東奔西走する報道記者たち。通信社のオフィスはそんな記者たちの熱気であふれている。 わが国有数の通信社である共同通信社の新社屋への移転にともない,編集局と関連部署が超高層ビルの6層に展開することとなった。 それをつなぐのが多方向に延びる階段だ。今月のBACKSTAGEでは報道の舞台裏として,コミュニケーションを誘発する15本の階段をレポートする。 |
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建築概要 汐留メディアタワー 場所:東京都港区 発注者:共同通信社 設計:当社建築設計本部 用途:事務所,宿泊施設,商業施設 規模:S造(CFT構造)一部SRC造 B4,34F, PH2F 延べ66,489m2 工期:2000年10月〜2003年6月 (東京支店JV施工) |
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昨年6月に完成した共同通信社の新本社,汐留メディアタワーの編集局では,日々記者たちが上下階へ慌ただしく行き来している。しかし,そこには超高層のオフィスに見られがちな,共用エレベータを待つ姿や,フロアの隅の非常階段に駆け込む光景はない。 彼らが使っているのは非常階段でもエレベータでもなく,フロアの中心にある多方向階段だ。おむすび型のプランの中心に設けられた吹抜けに階段が渡されており,踊り場から上下各3方向に分散した動線が6層に分けられた編集局のフロアをつないでいる。合計すると15本。なぜ,これほどたくさんの階段が必要だったのか? 編集局は社会,政治,経済,文化,スポーツなど複数の部署からなる。以前にオフィスを構えていた虎ノ門の共同通信会館では,編集局の多くの部署がいわゆる大部屋に入っており,各部署の連携が水平方向にとられていた。新本社の超高層化にともない危惧されたのは,垂直方向に延びるオフィスで以前と同じように連携がとれるかということだった。 そのような不安の声を受けて,オフィスの設計にはコミュニケーションを誘発する仕掛けが随所に盛り込まれることになった。設計当初から提案されていた吹抜けによって,視線や声の交錯,フロア間の熱気の伝播が意図されていたが,多方向階段が加わることによって,より積極的なコミュニケーションが図られるようになった。 そのひとつが,階高の3分の1の高さに位置する踊り場。一般的な階段に比べると低い設定位置だ。実際に踊り場に立ってみると,フロアがひと目で見渡せるようになっている。「より身近で生まれる,“見る,見られる”の関係が互いの活動に刺激を与えることを意図した」と設計者は語る。回遊性をもった独特の構造が,直接的なコミュニケーションを生んでいるようで,別のフロアから来た局員が階段のそばで情報交換をしている姿は,もはや日常の光景となった。 そして,この階段が最も効力を発揮するのが大事件のときである。中枢機能を担うニュースセンターと政治,経済,社会などの出稿各部が連携をとりあいながらスクープを追いかけることになり,大勢の記者が一気に階段を駆け下り,駆け上っていく。その姿を想像すれば15本という上下動線の数にもうなずける。 日々ニュースを追いつづける記者たちの万全の体勢はオフィス環境の整備にも表われている。15本の階段がつないだ記者たちの熱意は,これからも数多くのニュースを私たちに届けてくれることだろう。 |
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