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![]() 第二名神高速道路池山高架橋(PC上部工)上り線工事 21世紀の日本の経済・社会を支える新たな大動脈として期待される第二東名・名神高速道路――。大半の区間が山岳地帯を通過するため,多くのトンネルや橋梁が必要となる。今月は,三重県の鈴鹿連峰近く,第二名神連絡道路の亀山JCT部で建設中の「第二名神高速道路・池山高架橋(PC上部工)上り線工事」を紹介する。 |
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工事概要 第二名神高速道路 池山高架橋(PC上部工)上り線工事 場所:三重県亀山市 発注者:中日本高速道路 基本設計:日本構造橋梁研究所 詳細設計:当社土木設計本部 規模:10径間連続ラーメン波形鋼板ウェブPC箱桁橋 橋長941m 有効幅員10.27m 工期:2005年1月〜2008年3月 (名古屋支店施工) |
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波形鋼板ウェブPC箱桁橋 古くからの交通の要衝で,江戸時代には伊勢亀山藩の宿場町として栄えた三重県亀山市。現場は市北西部の山間にある。 今回の工事は橋長941m,最大支間長114mの10径間連続ラーメン橋の架設である。巨大なスケールを誇る一方,スレンダーなプロポーションが特徴の橋梁は,既に周囲の緑深い景観にとけ込んでいた。 主桁の構造は,コンクリート床版と側面(ウェブ)に波形の鋼板を用いた「波形鋼板ウェブPC箱桁橋」。経済性と施工性の合理化を追求し,鋼とコンクリートのハイブリッド構造とした。コンクリートウェブと比較して主桁の自重の軽量化と現場作業の効率化が図れ,当社が手掛けた矢作(やはぎ)川橋(愛知県豊田市)などでも採用された構造形式である。 この橋梁では,当社が培ってきた設計技術が遺憾なく発揮された。詳細設計付きの工事を入手してから,基本設計をベースに土木設計本部で多角的な照査・設計を行い,綿密な構造解析を用いて具体的なかたちを詰めていった。 当社の設計力が発揮された橋梁 詳細設計では,主桁の上床版で使われているPC鋼材の設計変更が大きな課題だった。PC鋼材は,圧縮に強く,引っ張りに弱い特性のコンクリートを,締め付けることによって補強する重要な部材。長いスパンの主桁が可能となる。経済性と施工性向上の観点から,主桁での張り出しが外ケーブル(床版外部に張り出す)方式から内ケーブル(床版内部に埋め込む)方式となり,コンクリート床版の寸法やPC鋼材の本数,配置を見直した。 また,詳細設計は主桁側面に設置する鋼板ウェブの厚みまで及んだ。厚さ9mmから14mmまでの鋼板を,力が集中する橋の柱頭部から離れるに従って薄くなるよう配置し,1枚1枚の薄さを極限まで追究した。「ミリ単位の見直しでも,橋全体では100t近い重量を軽減できます。それに伴いコストも削減できるので,鋼板厚を検討する効果は大きい」と,詳細設計から担当する現場の矢野一正次長は語る。 地震から建物を守ることで知られている免震ゴム。これと同じ機能をもつ「超高減衰ゴム支承」を用いて耐震設計を見直し,低い3橋脚(P1,P8,P9)に設置した。矢野次長によると「この橋梁は支間長が長く,橋脚の高低差も著しいため,地震時に複雑な動きをする。橋梁全体の挙動を考えた上で,それぞれのゴム支承の剛性などを調整した。兵庫県南部地震クラスがきても耐えられる」と,橋の耐震性に自信を見せた。 |
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PC鋼材を錆から守るグラウト材 橋面に上がると,水とセメントなどをミキサで練り混ぜてグラウト材をつくっていた。これを小型のポンプで主桁内部に張り出した外ケーブルに送る。 「このケーブルは外径114mmで,内部に直径15.2mm のPC鋼材が19本入っています。ケーブルには約300tの力がかかっているので,錆が発生すると将来破断する危険があります。グラウト材を完全に充填して防錆することが極めて重要です」と,現場の戸張正利工事課長代理。このため,現場ではグラウト材の流動性や注入している圧力,流量などを逐一測定し,品質管理に細心の注意を払っていた。 戸張工事課長代理によると「外ケーブルの長さは約100mあり,1スパン分の14本全てを充填するのに丸4日。毎日早朝から始めても夜遅くまでかかります。しかし,橋を長く安全に使い続けるためには,この作業を確実に行うことが欠かせません」という。 |
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主桁の高さをミリ単位で管理 主桁の張出し施工は,最終段階を迎えていた。施工方法は「やじろべえ」の原理を用いて,左右対称に張り出していく方法である。中央部で設計通りにつなげるためには主桁の高さの管理が肝要だ。しかし,張出しが長くなるに従って,主桁は自重や移動作業車の重量により“たわみ”がどんどん大きくなる。 主桁の高さの施工誤差は,上方向に5mm以内,下方向に45mm以内に収めることが,発注者の品質管理基準で定められている。現場では,どのようにして基準を満たして施工しているのか。 矢野次長によると,「主桁の高さの変化は,事前に構造解析を行うことで予測できます。しかし,この現場では主桁自身の“たわみ”だけでなく,高い橋脚の“しなり”の影響が大きく,それを正確に予測することが課題でした。そこで,橋脚の傾斜を常時計測して,事前解析と実構造物の挙動のズレを監視しながら,計測結果をフィードバックしたのです。そうすることで,予測の精度を向上させました」。 主桁の内部に設置した傾斜計の角度が0.01度変わるだけで,主桁の先端の高さが10mm変化するほど影響は大きいという。 また,自重によってだけではなく,日射や気候の変化によっても,主桁の高さは変化している。直射日光があたると上床版の温度は日陰の下床版に比べて高くなり,この温度差が主桁に“そり”を生じさせ,高さにも影響してくる。これに対して現場では,上床版と下床版に温度計を埋設して温度を常時計測し,高さへの影響を考慮しながら施工している。 最後に,現場の井上正所長に話を聞いた。「この橋梁は,中日本高速道路が発注者となっていますが,入手時は民営化前の日本道路公団でした。同公団が発注する工事では,詳細設計付きとなることが一般的で,これまで当社は設計,施工の両方で信頼を勝ち取り,スペシャリストとして実績を重ねることができました。本橋においても品質向上とコスト縮減が命題のもと,発注担当者と綿密な打合せを重ねてきました。完成が間近となりましたが,引き続き,災害ゼロを達成することを最大の目標に掲げ邁進したいと思います」。 |
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主桁が出来るまで 来年3月の完成を目指し,工事はいよいよ大詰めに近づいてきた。 地上80mもの高所にある主桁はどのような手順で建設していったのだろうか。 完成間近の主桁工事を振り返った。 主桁の施工は「やじろべえ」の原理を用いて,左右対称にバランスをとりながら張り出していく方法(片持ち張出し架設)をとっている。柱頭部を支点として左右1ブロック(3.2mもしくは4m)ずつコンクリートを打設して主桁を構築,支間中央の約4mを別途コンクリートで閉合する。 主桁の張出し先端には,仮設の作業場となる移動作業車が設置されている。ここで波形鋼板ウェブの吊込み・溶接,型枠,鉄筋の組立てから上下床版のコンクリート打設,上床版のPC鋼材緊張を行い,1ブロックを完成させる。1橋脚における張出しブロック数は9〜15ブロックで,施工期間は4〜6ヵ月。 |
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