現場から:

市街地を浸水被害から守るために

--首都圏外郭放水路建設工事



 埼玉県と千葉県の県境を流れる江戸川の西側。この地域は中川や綾瀬川等中小河川がはしり水田と住宅地が広がる。ここで今、国内最大級の地下放水路工事がゼネコン各社によって行われている。台風シーズンの水害に悩まされている流域の総合治水事業の一環として、地元住民からも期待を集めているビッグプロジェクトである。

●全長6.3kmに及ぶ地下河川建設で治水事業
 放水路とは中小河川の水を大河川に逃がす役割を果たす水路のことで、本治水事業は、シールドの発進・到達立坑と河川氾濫時の流入施設を兼ねた5つの立坑とそれらを地下約50mで結ぶ地下水路の建設である。大雨が降ると各河川から増水した雨水が地下放水路に流れ込み、ガスタービンを備えた排水機場を通じて江戸川にいち早く放水されるしくみだ。



断面イメージ
「未来につなげる地下の川」がキャッチフレーズ

●鹿島の現場(1)
第4立坑「大深度地中連続壁で地下70mの立坑をつくる」

 13気圧という猛烈な水圧のなか、まず止水と土留のため、地下122m、直径29mの円形の地中連続壁が築造された。連続壁完成後、続いて立坑の本体工事。側壁の施工には、鉄筋の自動配筋装置、高流動コンクリートも導入された。工事はこの8月に完了予定だ。


立坑本体のコンクリート打設、ひび割れの少ない低発熱コンクリートと充填性の高い高流動コンクリートを施工箇所で使いわける

外郭放水路第4立坑新設工事<工事概要>
場所 埼玉県春日部市不動院野地先
発注者 建設省関東地方建設局
設計 建設省関東地方建設局江戸川工事事務所
(パシフィックコンサルタンツ)
規模 地中連続壁−内径29.1m、深さ122m、コンクリート21,052m、鉄筋篭868.5t
立坑本体工−内径22.5m、深さ67.29m、掘削土量46,164m3、コンクリート16,323m3、鉄筋1,673t、型枠6,486m2
工期 95年2月〜98年8月
施工 鹿島 関東支店JV



●鹿島の現場(2)
地下放水路第3工区「国内最大級のシールドマシンで」

 地下放水路を掘進するシールドマシンは直径が12.04m、国内で最大級の大きさである。昨年4月に引渡しを受けた第3立坑(他社施工)にシールドマシンを搬入。シールドマシンはまず1.4km離れた第4立坑へ向けて掘進開始。99年秋に到達する予定である。


第3立坑の底で発進を待つシールドマシン、
愛称は一般公募で「ほるぞー!未来くん」に

外郭放水路第3工区トンネル新設工事<工事概要>
(※下記データは98.06現在契約分)
場所 埼玉県春日部市桶籠地先〜春日部市不動野地先
発注者 建設省関東地方建設局
設計 建設省関東地方建設局江戸川工事事務所
(パシフィックコンサルタンツ)
規模 シールドトンネル延長1,200m(泥水式、機械外径12.04m)
セグメント−外径11.80m、幅1.20m、
ダクタイルセグメント、RCセグメント、
発進防護−凍結工法2,496m3
工期 96年3月〜99年11月
施工 鹿島 関東支店JV