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交通渋滞の解消と円滑な輸送確保を目指して 〔京急蒲田駅付近連続立体交差事業〕第4工区工事 京浜急行線は,東京・品川から川崎,横浜を経て三浦半島に至る本線を主軸に,羽田空港へのアクセス機能として重要な役割を担う空港線など4つの支線からなる,首都圏を繋ぐ主要な鉄道機関である。 現在,本線と空港線の分岐駅・京急蒲田駅付近で,交通渋滞解消と円滑な輸送確保を目的に,線路の連続高架化工事が進められている。 |
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工事概要 〔京急蒲田駅付近連続立体交差事業〕第4工区工事 場所:東京都大田区 発注者:京浜急行電鉄 設計:復建エンジニヤリング 規模:駅部―鋼製ラーメン高架橋 延長179.0m 幅員16〜22m/空港線部―鋼高架橋 延長104.3m 幅員9.5m 工期:2002年1月〜2015年3月(予定)(東京土木支店JV施工) |
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鉄道高架化の効果![]() 本線の平和島駅から京急蒲田駅を経て六郷土手駅に至る約5.4km,および空港線の京急蒲田駅から大鳥居駅間の約2.1kmを高架化することで,28ヵ所の既存踏切が廃止できる。これによって,交通の円滑化と安全性の向上を図ると同時に,利用者に優しい駅舎機能の構築,駅高架下の有効活用,側道や駅前広場などの整備を行って,魅力ある街づくりを推進しようというのがプロジェクトの狙いだ。 本工事は8つの工区に分けて行われ,当社JVは京急蒲田駅南側の駅部と空港線の国道横断部の橋梁を担当している。 京急蒲田駅界隈 本線と空港線の分岐駅である京急蒲田駅は,通勤・通学の乗客をはじめ,羽田空港への旅行者などが利用する京急の基幹駅だ。 下り線のホームに降り立つと,線路沿いに高い仮囲いが続いている。見上げると巨大なクレーンの姿が垣間見え,重機や溶接の音が鳴り響いていた。利用者の間近で,日々危険の恐れのある作業が行われているのだ。もちろん鉄道・利用者・作業員の安全確保が大前提だが,それがいかに厳しい条件であるかが覗える。 駅東口は目の前を国道15号(第一京浜)が走り,南に300mほど行くと環状8号線との交差点がある。両幹線道路とそれぞれ平面交差する京浜急行線の踏切は“開かずの踏切”と言われ,交通渋滞の都内ワースト3に入る難所になっている。 駅前の第一京浜の踏切を見て,すぐに納得した。踏切が下りると道路は瞬く間に車が連なり,なかなか遮断機は上がらない。やっと上がってもすぐ踏切の警鐘が鳴り出す。慌てて踏切を走る歩行者の安全も気になる。 一方,駅西口は雑居ビルがひしめきあい,生活道路は狭く,古い木造住宅も多い。線路の東側と西側で全く町の景色が違って見える。線路で分断されていたこの町は,高架化されることによって地域の融合が一段と促進されることだろう。 |
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営業を継続しながらの鉄道工事 当社JVが建設する京急蒲田駅は,鋼製ラーメンによる三層構造の高架駅となる。工事は国道拡幅用地を使用しての仮線工法を採用した。既存の線路を順次移設しながら,新たな構造物を建設していく方法で,鉄道輸送を継続しながら工事が行える。 2002年1月着工し,仮駅舎の移設工事,作業用構台の設置などの準備工事を経て,空港線移設のための切替え工事が始まった。使用中の線路の切替え工事は,一夜で行わなければならない。切替えの“Xデー”に向け,約1年の歳月を費やして準備工事が昼夜兼行で行われた。 2005年10月1日,まず空港線切替え工事が完了。次いで2006年11月26日に,下り本線切替えを完了した。切替え当夜は,それぞれ工事関係者約600名により,終電から始発までの約4時間で切替え作業を完遂した。 現在は,旧下り線跡地に駅部躯体の一部を建設している。場所打ちリバース工法による国内最大級の杭が打ち終わり,地中梁を構築中だ。作業スペースが狭いため,作業構台の上からクレーンで資材を搬入する。ホームの上を覆う形で設置された作業構台での作業は,安全面でも特に気を使う。 現場では,粛々と掘削作業が進んでいた。終電後は仮囲いをはずして一部建築限界内の掘削を行い,また元の状態に戻し始発を迎える。限られた数時間での地道な作業の繰返しが,ビッグプロジェクトを完成へ導くのだ。 2007年12月には上り本線の切替えが行われ,駅部躯体も2階から3階部分へと立ち上がる。こうして工事はいよいよ佳境に入る。13年の歳月を費やすこのビッグプロジェクト。完成は2014年度の予定である。 |
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仮線工法による線路切替えの流れ |
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2006年11月26日午前零時21分。 下り最終電車を見送った後,下り本線の切替え工事が始まった。 始発までわずか4時間余――。 600名の工事関係者は,この短時間に全精力を集中させた。 この工事の第4工区を統括,指揮したのが小沢徹所長である。 難工事を振り返り,時間との勝負の厳しさ,従業員たちの活躍の様子などを聞いた。 |
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![]() 2005年10月1日の空港線切替えの後,2回目の線路切替えを実施しました。切替えルートの選定,施工手順の検討といった計画段階を経て,準備工事がスタートします。準備工事と平行して駅部の躯体工事も行いましたので,大変な時間と労力を要しました。準備に約1年を費やし,線路の敷設,ホームや連絡通路の設置など,あらかじめ作業できる箇所は全て施工を完了させ,切替え当夜に備えました。 切替え日が近づくと,施主や各工事関係者が打ち合わせを繰り返し,分刻みのスケジュールを計画。松井工事課長が中心となって,細かい折衝をしてくれました。ホーム設置については,前日までのリハーサルで,計画時間内での作業完了を確認しました。 |
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切替え工事当夜 下り本線切替え当夜は,軌道工事を行う京急建設をはじめ,電力工事や通信工事の担当者,そして土木工事を行う当社JVならびに他工区関係者など約600名で,作業が行なわれました。 工事はエリアに分けて,松村副所長の指揮の下に協力会社担当者を割り振りましたが,これだけの人が集まると,現場は戦場です。担当が分かれていても,どこに誰がいるか見分けるのはひと苦労でした。それでうちの作業員には,胸に青いゼッケンをつけてもらいました。これは結構効果がありました。 今回,当社JVが行った土木工事の中でメインとなったのが,ホームの設置作業でした。ホームの設置は,準備工事の段階で大部分を施工しておきますが,一部当日でないとできない箇所があるのです。作業構台からあらかじめ製作したホームの一部を吊りおろして設置し,細かな部分を修正します。この工事は,軌道工事が終了した後でなければスタートできません。線路とホームの距離を調整しなければならないからです。 軌道工事は,200名を超える作業員が運行期間中に設置できなかった箇所に枕木を設置し,新しい線路を敷設しました。あらかじめルート設計がされていますが,微妙なカーブの具合は工事担当者の“匠の技”によって決まります。目視により何度も線路の配置を調整し,予定時間内に無事線路は設置されました。 ホームの設置作業の管理は,当時まだ新入社員だった新井君に中心になってやってもらいました。準備工事から作業員とコミュニケーションを図り,信頼関係を築きながら仕事をしてくれました。軌道工事との兼合いや作業員の管理など,新井君も焦る気持ちはあったでしょうが,無事時間内に作業は完了しました。それぞれが自らの役目を全うし,無事始発を迎えた時の喜びはひとしおでした。 |
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「和」の大切さ 切替え工事当夜は,ライトを照らし,複数の重機を使って作業をします。日頃から近隣の皆様にはご迷惑をお掛けしていますが,この日は特別だったと思います。でも今回の工事では,1件のクレームもありませんでした。これは本当に有難いと思いました。近隣には,普段から事務の岡橋君や工事担当者が工事の状況説明に回ってくれています。また,駅の東口改札に事業内容を理解して頂くための情報コーナーを設置していますが,こうした地道な近隣対応が,工事へのご理解を頂けたのだと思います。 現在当事務所は,兼務を含め鹿島社員7名が働いています。現場は何よりも「和」が大切です。長い工期の中で,社員と作業員との信頼関係,施主や他業者との協力関係を日々築いていくことが,工事を円滑に進める大きな力となるのです。 私の所長方針でもありますが,みんなが力を最大限に発揮し,お互いに快適に,明るく楽しい職場を目指し,これからも工事に邁進していきたいと思います。 |
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松村 徹 副所長 鉄道工事の経験が豊富で,若手のよき相談役になっている。「鹿島の技術があれば切替え工事は必ず成功する」と,自信をもって工事に臨んだ。 |
松井修治 工事課長 施主との折衝,工程管理,現場管理など,多忙な現場を取り仕切る。切替え工事当日も多くの担当エリアを指揮し,工事を成功に導いた。 |
橋爪 武 機電課長 工事の機電関係を一手に掌る。安全管理に余念がない。切替え工事当日は複数の担当エリアの責任者として活躍した。 |
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庄子 茂 工事課長代理 松井課長と共に,施主の窓口役と現場管理を担当。赴任後まもなく切替え工事を経験した。今年12月の上り本線切替え時の活躍が期待される。 |
岡橋 徹 事務係 複数現場を兼務。定期的に工事状況の説明のため,ビラを作成して近隣を回る。切替え工事では弁当手配やお客様対応などに奮闘した。 |
新井優太 工務係 入社2年目。ホームの設置作業の管理という大任を全うし,一回り成長!「貴重な経験が出来る環境にいることを感謝し,さらに頑張ります」 |
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