KAJIMAエコプラザ

食品の安全衛生を確実にするために

 今年もまた,食中毒事故の記事が新聞をにぎわす季節となりました。1996年,病原性大腸菌O-157による食中毒事故が発生し,大きな社会問題となったことも記憶に新しいところです。それを契機として,PL法施行に伴い食品の安全性についての関心が高まる中で,HACCPという国際的な食品の衛生管理手法が注目されています。HACCPは,食品の製造・加工から消費者に至るまでの各工程・段階で,主として食中毒菌等の微生物危害を調査分析し(HA),この危害の発生を防ぐ重要管理点(CCP)を設定,これをリアルタイムで監視することにより,食品の安全性を確保する科学的な管理手法です。1995年,厚生労働省は食品衛生法を大幅に改正し,乳・乳製品など6製品を対象にHACCPによる衛生管理方式が承認制度として取り入れられました。これによりHACCPを導入する食品企業が全国的に増加しています。HACCPは,米国等では義務付けとなっていますが,日本では今のところ自主管理方式です。しかし実際には,大手コンビニエンスストアなどでは,納入先に対して取引条件の一つとしてHACCP方式による衛生管理を求めることが多くなっています。
 当社では,数年前から各種のHACCP支援技術を開発し,安全で衛生的な食品加工施設の提案を全国的に展開しています。
 食品の安全衛生管理上で最も重要なことは,食中毒の原因となる細菌等微生物の抑制管理です。この支援システムとして開発したのが微生物簡易検査ユニット「Ins-CUBE(インスキューブ)」です。これは汚染指標菌である一般細菌数や大腸菌群を簡単かつ迅速に発見し,日常的にこの検査結果を製造工程にフィードバックすることにより食品の安全衛生を管理するシステムです。
 また,これまで多くの食品工場において,コンクリート床及び仕上げ材の塗床の損傷による不衛生が課題となっていました。この解決策として当社は,「ステンレス打ち込みPC床」を提案しています。従来,厚板のステンレス板を全溶接により床に敷く方法はありますが,高コストのため,採用するところは限られていました。当社の開発したものは,工場で薄いステンレス板とコンクリートを一体化させたPC床版です。この床版は高品質で短工期の施工ができ,かつコスト面でも従来の塗り床とも競合できるものです。更に,ニーズの高いリニューアル対応の「ステンレス置床」を新たに開発し,施工実績を重ねています。
 その他に,魚介類など生鮮食品の鮮度保持という観点から開発した「殺菌済み海水シャーベット製造システム」,HACCP運用を支援する情報システム「KA-FETERIA」等,食品施設におけるハード・ソフト両面の安全衛生に関する豊富なメニューを揃えています。

危害分析 重要管理事項
食品の製造加工工程のあらゆる段階で,発生する恐れのある微生物汚染等の危害についての調査・分析 製造加工工程のどの段階で,どの様な対策を講ずればより安全性が確保された製品を得る事ができるのか重要管理事項を定め,常時モニタリング,管理記録を行う

微生物簡易検査ユニット「Ins-CUBE(インスキューブ)」
微生物簡易検査ユニット「Ins-CUBE」 微生物簡易検査ユニット「Ins-CUBE」

ステンレス打ち込みPC床を採用した食品工場
ステンレス打ち込みPC床を採用した食品工場