テクノ・ライブラリ![]() |
![]() ![]() |
![]() 進化するコンクリート橋 ――機能と経済性の両立を目指して―― 右肩上がりの経済成長時代の終焉。 限られた公共投資の中で,いかに効率よく社会資本を整備していくかが求められている。 石器時代から私達の生活基盤を支えてきた橋の建設も例外ではない。 今月のテクノ・ライブラリは,経済効率を追求しながら進化するコンクリート橋の技術を紹介する。 |
長大スパンが可能な斜張橋 そもそもコンクリート橋は,鋼製の橋に比べて建設コスト,メンテナンスコストを節減できるメリットがある。その中でも,橋脚の上にのびる主塔が桁を吊って支える斜張橋は,桁橋に比べてスパン(橋脚と橋脚の間の距離)を長くできることが最大の特徴である。斜張橋の登場によって,海や渓谷を渡る場合のように,多くの橋脚が建設できない立地でもコンクリート橋をかけることができるようになった。 スパンとコストのバランスから生まれたPC桁橋とエクストラドーズド橋 同じ全長のコンクリート橋では,その建設コストはスパンが長くなるほど大きくなる。スパンが長くなると,より大きな桁の重みを支えるために橋脚・主塔が大型化する。その建設コストがかさみ,小さな橋脚を数多く建設する短いスパンの橋のトータルコストを上回るからだ。 コンクリートは引張る力に弱い。桁の重みを橋脚が支える桁橋では,桁自身がその重みでたわもうとするため,その影響はスパンが長くなるほど大きくなる。このため,単純な鉄筋コンクリート桁橋のスパンの長大化には限界があった。 斜張橋ほどではないが,鉄筋コンクリート桁橋より長いスパンを可能とするのがPC(プレストレストコンクリート)桁橋だ。PC桁橋は,コンクリート製の桁にPC鋼線を用いたプレストレス(圧縮力)を導入し,桁の長大化を実現したものだ。 |
![]() |
![]() |
![]() |
|
|
近年,適用スパン・コスト・構造などにおいて斜張橋とPC桁橋の中間的な特徴を持ったエクストラドーズド橋が注目されている。これは,橋脚の上部に設けた主塔に,PC鋼線を配置してプレストレスの導入効率を高め,さらにスパンの長大化を図ったものである。 長大スパンには斜張橋,短スパンにはPC桁橋,中間のスパンにはエクストラドーズド橋。コンクリート橋技術の進化は,スパンと経済性のバランスに対応した多彩なメニューの提供を可能としている。 |
![]() |
||
![]() |
||
|
鋼の特性を活かしたコストダウン 鋼・コンクリート複合橋 桁橋の構造形式を変えずにコストダウンに取り組んだのが鋼・コンクリート複合橋である。 鋼材は,少量で大きな引張り力に耐えることができる。この特性を活かして鋼材とコンクリートを組み合わせることで,コンクリート単体の橋より建設コストを抑えることが可能となった。特に,桁を軽量化することは,重みを支える橋脚もスリム化できる二重の効果があるためコストダウンの決め手となる。 |
![]() |
![]() |
||
![]() |
|||
|
|
コンクリート箱桁の側面(ウェブ)を鋼管製のトラスに置き換え軽量化を図ったのが鋼・コンクリート複合トラス橋である。国土交通省による国内では初めての「設計・施工一括発注方式」に採用され,来年3月に和歌山県新宮市の山あいに木ノ川高架橋がその姿を現す。 波型鋼板ウェブ橋では,ウェブに波型に加工した鋼板を用いている。鋼板を縦方向にアコーディオン型に折り込むことで,より軽量でも大きな力に耐える構造となっている。 |
![]() |
![]() |
||
![]() |
|||
|
|
工期短縮の決め手 プレキャストセグメント工法 時は金なり。時間が価値に換算され,スピードアップによる効率化が求められる時代に,大幅な工期短縮を可能とするのがプレキャストセグメント工法だ。桁をいくつかのコンクリートセグメントに分割し,あらかじめ工場・製作ヤードなどで製作する。現地に運搬されたセグメントを一つ一つの部品のようにつなぎ合わせ,組み立てていく方法である。 この工法は,橋脚の施工中にセグメントを製作でき,セグメントの架設中にも次のセグメントの製作を行えることから,上部工の工期を大幅に短縮することができる。また,セグメントは管理の行き届いた環境で製作されるため,高品質が確保される。工場・製作ヤードでも,機械化された型枠システムの導入や,先行して製作したセグメントの端面を型枠がわりとするマッチキャスト工法などによって,工期短縮と品質向上が同時に図られている。 昨年6月に竣工した木曽川橋は,ここに紹介した多くの技術が集積されたエクストラドーズド橋である。桁の重みの影響が大きいスパン中央部には,軽量で引張り力に強い鋼桁が用いられている。橋脚付近の桁は,マッチキャスト工法で製作されたプレキャストゼグメントを架設して構築した。一本の橋においても,各部にそれぞれ利点のある部材と工法を検討・採用し,最長275mの長大スパン,経済効率,工期短縮,品質の確保が同時に実現された,近年のコンクリート橋技術の粋を集めた道路橋である。 機能と品質の確保を前提とした経済性の追求。社会の要求に対応したコンクリート橋の進化が今も続いている。 |
![]() |
![]() |
||
![]() |
|||
|
|