津軽平野のほぼ中央に位置し,商都として栄えてきた青森県五所川原市で,現在「立佞武多(たちねぷた)の館(仮称)」の建設が進められている。「立佞武多」とは,毎年8月上旬に当地で開催される「五所川原立佞武多〜立佞武多・ねぷた運行〜」に登場する高さ20mを越える巨大なねぷたのこと。市内を練り歩く勇壮な姿は多くの人々を魅了し,毎年100万人以上の観光客を集める一大イベントとなっている。
「立佞武多の館」は,立佞武多を核とした通年観光の確立と旧市街地の活性化を目的に,五所川原市が建設を進めているもの。昨年3月に行われたコンペで最優秀となったINA新建築研究所が設計を手掛け,当社は建築の本体工事を担当している。施設の目玉となるのは,常時3体の立佞武多が展示される高さ30mを越えるの大空間。周囲に配置された緩やかならせん回廊から立佞武多を間近で観ることができ,映像・音響・照明効果と合わせて,祭りの生の迫力が体感できる。
実は,現代の立佞武多は復元されたものだ。明治の中期から大正初期にかけて,高さ20mを越える巨大ねぷたが夏祭りの主役であったが,まちなかに整備され始めた電線が障害となって小型化し,大正の 初めにその姿を消した。90年ぶりにその勇姿が甦ったのは平成8年。明治末期に撮影された1枚の写真に感銘を受けた市民有志が製作資金もカンパで集め,まさに手づくりで復元し,「立佞武多」と命名した。新生・立佞武多は全国に大きな反響を呼び,その後は,市政も参画したプロジェクトにより,立佞武多の市内運行コースの電線は移設・埋設され,昔のようにまちを練り歩く威容を多くの人が仰ぎ観られることとなり,現在の祭りの隆盛に至っている。
立佞武多の製作所も兼ね,多目的市民ギャラリーや体験学習室など地元に密着した施設も整備される「立佞武多の館」の竣工は来年3月,オープンは来年4月を予定している。
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