現場から:

西武ドーム 膜屋根リフトアップ



 プロ野球,西武ライオンズの本拠地・西武ドーム(埼玉県所沢市)では,2回のシーズンオフを利用して既存球場に屋根を架け,ドーム球場とする工事が進んでいる。昨シーズンオフに行われた一期工事ではドーナツ状の金属屋根を観客席上部に取りつけた。プロ野球の1シーズンを挟んで,昨年10月からの二期工事では,金属屋根の穴の空いた部分に,グラウンドで構築した膜屋根をリフトアップして合体させる工事が行われている。二期工事のクライマックスといえる膜屋根のリフトアップが,1月30日から3日間にわたって行われた。



リフトアップ中

 グラウンド上で構築された膜屋根は直径145m,重さは約2000t。この膜屋根,円形に見えるが,正50角形なのだ。金属屋根からその50の角にワイヤーロープを垂らし,膜屋根を吊り下げている。一つの角に2台の油圧ジャッキが取りつけられ,そのジャッキがロープをつかんで尺取り虫の要領でよじ登っていく。

機器の点検やリフトアップ高さの測量などを行いながらリフトアップは慎重に進む。その速度は1時間に約2mだ。



1日目,午後8時30分,リフトアップ高さ約13.5m


2日目,午後5時45分,リフトアップ高さ約25.0m


3日目,午後6時5分,リフトアップ終了時
リフトアップ高さ37.3m

 既存球場に屋根を架ける,しかもプロ野球のシーズンに支障を与えないように工事を進めるためには,短工期,しかも,既存の観客席があるため,多くの支柱が立てられない,などの厳しい制約条件の下,様々な工法が検討された。剛性の強い金属製屋根を一期工事で張り出し架設し,二期工事でそれを反力として膜屋根のリフトアップに使う。そのために膜屋根をより軽く,スピーディーに構築しなければならない。通常の工法だと4か月かかる,17000m2のテフロン膜を張る工程を,新規開発した膜張り装置により,45日間という驚異的なスピードで架設した。

 既存球場に屋根をかけるという世界初の工事。そのクライマックスとも言える膜屋根のリフトアップ工事は,慎重に3日をかけて無事終了した。この後,膜屋根を固定するための微調整と溶接作業を10日間かけて行い,仮受けベントやジャッキの解体作業となる。こけら落としは3月20日,西武対巨人の交流試合だ。


西武ドーム工事
<工事概要>
場所 埼玉県所沢市上山口2135
発注者 西武鉄道
設計 当社設計・エンジニアリング総事業本部
規模 柱脚部・・・鉄骨造 
上部構造・・・周辺金属屋根部−鉄骨造
        中央膜屋根部−テフロン膜による        鉄骨骨組み膜構造
屋根直径223m(膜屋根部は145m)
最高天井高さ64.5m
工期 1997年7月〜1999年3月
施工 関東支店施工