現場から:
![]() ■山陰地方の気候 雪をいただく伯耆富士(ほうきふじ)と呼ばれる中国地方の名峰・大山(だいせん)を南方に望む米子市。パルプをはじめとした製紙産業の街である。日本海に面 したこの地方は風が強く季節風によっては中国大陸から黄砂も飛んでくる。冬期間は曇天が続き日照時間が極端に少なくなる。特に今年は,米子地方気象台始まって以来の降雪の多さだという。取材当日も天候変化が目まぐるしい。朝,晴れ間がのぞいたと思うと,急に曇ってそして氷雨が。しばらくして止んだと思えば,また雪がぱらぱらと…。「この時期は本当に洗濯物が乾かない」と現場事務所の女性の声。
■複雑な形状の施設 この施設は,だ円形のホール,4層吹き抜けのアトリウムからなるバシリカ,屋上ウッドデッキを備えた投票所(馬券売場)から構成され,特徴ある形状が組み合わされている。集合住宅や事務所建築のようないわゆる基準階プランというものが存在しない。鉄骨建方からコンクリート打設まで場所場所で異なる。外構は完成時に芝生で覆われ,施設の一部が盛土によって隠される設計となっている。さらに壁面 はコンクリート打ち放しが多用され,内装仕上は杉材型枠によって木目を出す工夫もされている(本誌99年8月号「縄文博物館」参照)。 敷地は砂地,杭の支持層は45〜50mである。このため,沈下を防ぐ竹の節のようなリブがついた摩擦杭を使用し,15mくらいまで埋め込む方法がとられている。また近くに米子空港があるため,クレーンには45mの高さ制限が。さらに漁場や蜆(しじみ)の養殖場もあるので浄化装置を通 して濁水処理を行なっている。
■1年という工期の中で ホールやバシリカには高さ10.5mの大型ガラスも使用される。施設の一部には膜構造も使っている。これら構造のバラエティさは,施工図作成や設計との打合せにマンパワーを要する。複合的な構造のため,施工法の検討を含め短工期の中では準備作業が非常に厳しいという。一部の外装工事と内装工事とが並行に進められている現在,一日平均600〜700人が現場に入る。コンクリート打設も夜中の0時1時は当たり前,事務所で朝まで明かす社員も多い。あと2カ月余り。いよいよラストスパートに入っている。
米子空港から東京へ旅立つと,ちょうど現場の真上を旋回する。窓から無事竣工を祈りつつ山陰米子をあとにした。施設オープン予定は5月20日である。
|