テクニカルノート:
空気圧によるカプセル式土砂搬送システムの開発
大深度立坑工事の効率化技術

 近年地下空間の利用計画が活発になり,地下トンネルはますます大深度に成りつつあります。それに伴い作業用の立坑もまた深いものになってきています。今月の技術のページ「テクニカルノート」では,昨年末実証実験を終えた,掘削土砂(ズリ)を空気圧カプセルによってより効率よく安全に運ぶシステムを紹介します。

実証実験に使われたカプセル
実証実験に使われたカプセル



■ますます大深度化する地下空間の利用
 都市部において,新たな地下鉄や共同溝,下水道等を構築する場合,これらは,既存の地下構造物を避けてより深い場所に構築せざるを得なくなっている。このため掘削機械や資材の搬入用の立坑は深さ50mを超えるものも少なくない。また山岳トンネル等でも,換気用の立坑は100〜500mに及ぶものも出てきている。
 国土庁でも大深度の公益利用の法制化概要がまとまり,特に3大都市圏における鉄道,道路,電気,ガス,通 信といった公益事業を対象に,地下40m超の利用に関し,体系的に法制化する動きもある。

■従来のワイヤーロープ巻上搬送法には深さに限界がある
 従来の立坑工事は,ズリをいれたバケットをワイヤーロープで地上に引き揚げるという搬出方法だった。この場合,大深度になるほど巻上用のやぐらを高く丈夫につくらなければならず地上構築物が大規模になる。
 さらにロープの自重の関係で装置強度上立坑の深度は700mが限度であるとされている。また自動化を図るとバケットとワイヤーロープの連結を固定するために搬出サイクルが長くかかり,またサイクルタイムを短縮するために複数バケットを脱着すると自動化は困難となるのである。

■空気圧でカプセルを上昇させる
 今回開発された装置では1,000m級の立坑にも対応可能であり,将来的な大深度地下空洞建設においても汎用可能な効率的で安全性の高いシステムである。
 まず立坑底部にある掘削機でズリを搬出用カプセル(1.5m3)に積む。このカプセルを地上から伸びる搬送管路にセットし,空気吸入装置(ブロア)で地上から吸い上げるというもの。カプセルが移動する管路内に気圧差を少し発生させれば鉄製のカプセルでも上昇が可能になるのである。また,上から吸い上げる方式なので,カプセル上昇に伴い,立坑内の空気も吸い上げられて自動的に十分な換気もできるメリットがある。
 本システムは直径5〜15m,深さ30〜1,000mの立坑構築用に開発したものである。従来方法に比べ,搬送速度が高速化するとともに,安全性・省力化がはかれる。


図1


■土砂運搬の手順
図2



【システムの特長】
(1)搬送サイクルタイムが従来工法の3倍速く,ズリ搬送効率が飛躍的に向上する
(2)ズリ搬送カプセルは搬送管内にあるため安全性が高まり,万一停電等で動力が止まっても空気圧によってカプセルの急激な落下はなく安全に制御できる
(3)1,000m級の大深度立坑にも適用が可能である
(4)コストは従来工法に比べ,1/5程度ですむ
(5)生コンクリート等の材料搬入にも応用できる
(6)大深度地下での掘削からズリ搬送まで一連の自動化運転にも対応できる

立坑工事への実用化が検討中である
立坑工事への実用化が検討中である