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![]() 一戸町民コミュニティセンター工事 自然と造り手の温もりが交差する木造ドーム 林業が盛んな岩手県一戸町。そこで,全国でもめずらしい木造のドーム型の文化施設を建設中だ。地元の森林の間伐材が有効利用され,オープン前から,県の内外より広く注目を集めている。 |
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![]() ![]() 工事概要 場所:岩手県二戸郡一戸町字砂森地内 発注者:一戸町 設計・監理:BAO設計室 用途:多目的ホール,図書館他 規模:ドーム部ー木造一部RC造 図書館他一木造 地下1階,地上2階 延べ2,690m2 工期:2001年3月〜2002年3月 (東北支店JV施工) |
Project 当施設は一戸町の新市街地整備事業の一環として,JR一戸駅から徒歩15分の砂森地区に建設するもの。ドーム部のホールは町民の集会や発表会などに利用され,人々が集う新しい町の中心となる。 |
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完成予想。ベージュ色部分が図書館,会議室 | 昨年11月,カラマツの集成材で組み上げた美しいフォルム |
100%地元産カラマツの間伐材を使用 杜と水の都・盛岡市から,JR東北本線の特急「スーパーはつかり」で約40分。岩手県の北,青森県境の近くに位置する一戸町は,町の総面積約3万haの73%が森林である。そのほとんどが,戦後に造林され約50年かけて育てた森林で,間伐など適正な管理が必要とされている。 町の新しいシンボルとなる「一戸町民コミュニティセンター」は,その間伐材を有効活用した木造建築だ。当施設は,直径37m,高さ20mのドームの多目的ホールとドーム部を取り囲む風車状ウィング部の会議室と図書館から構成される。ドーム型の文化施設は,国内でもめずらしい建物である。 当施設の最大の特徴は,建物の主材料が木材であるということだ。ドーム部の屋根と,併設する図書館・会議室の柱,梁は木製で,しかもほぼ100%地元産カラマツの間伐材の集成材を使用している。 木と鉄のハイブリッド構造 当施設は単に鉄骨造,鉄筋コンクリート造を木造に置き換えた建物ではない。ドーム部の構造は,長さ約16mの大梁32本と,それを束ねるドーム頂部,端部の両リング(桶のたがの役割を果たす)にスチールの張弦を張ることによって,ドームの変形を防ぐとともに強度を高めている。また,図書館部の柱と梁は,ドリフトピンと呼ばれる金物で接合させて,より剛性を確保している。 このような木と鉄の良さを生かした,ハイブリッド構造によって,木造アーチが美しい弧を描くドームを具現化している。 |
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立体張弦アーチ構造。傘の骨のような役割を果たすタイロッド*などで大梁のアーチ32本を連結し,開きを防止 *タイロッド:上写真の赤と白の鋼線 |
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ドリフトピンと呼ばれる金物で接合される,図書館の柱と梁 | 朝礼時の緊張感の中にもリラックスする大森所長と作業員 |
生きている木を扱うということ 当社はこれまで出雲ドーム,信州博グローバルドーム,そして長野市オリンピック記念アリーナなど,木造の大空間建築において豊富な実績がある。 ただ,大森所長個人にとって,木造は初めて。当初はイメージが湧かなかったと言う。それだけに謙虚に,慎重に対応できた。木は,鉄やコンクリートと違い,品質にバラツキがあり,一本一本異なる。まさに,生きているのである。原板(集成材の構成材)の検査にも立会い,強度等を確認した。また施工に当たっては,集成材は傷つきやすく,ワイヤーで吊り上げる際にも,布のベルトで巻いて養生するなど細心の注意を払った。また,木は水分を含むと変形するなど特有の性状があり,仮置き一つにしても神経を使う。雨にさらすなど絶対にできない。 当施設は曲線で構成されたデザインがコンセプトの一つとなっており,このため,一つ一つの部材が曲線で,かつ寸法が違う。実施工面では施工精度を確保するため,墨出しを最重要管理項目の一つとした。 木の如く自然体で 工程も厳しいなか,繊細さが要求される施工を,大森所長とJV社員2名で担当している。「少ない人員で,いろいろ気苦労もあるのでは」と尋ねると,「ない物ねだりをしても仕方がないですから」と大森所長は,さらりと冗談交じりに答えた。「現場で木は使いますが,共に働く仲間には『気』を使ってはいません」。その言葉どおりに軽やかで,自然体である。 現在,当現場は3月末の引渡しに向けて,奮闘中だ。木を植え,育てた地元の方々と,そして,それを大切に扱い工事に携わった我々の想いの入った木のアーチが,ドームを訪れる人をやさしく包んでくれるはずだ。夏前にはオープン予定である。 |
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一戸ドームの広報WOMAN | ||
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