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中部電力・浜岡原子力発電所5号機原子炉建屋他建設工事

日本最大出力を誇る原子力発電所建屋の建設
中部電力・浜岡原子力発電所は静岡県の最南端の御前崎から西に8kmほど,遠州灘に面した長く美しい海岸線に沿って位置している。当社は過去に1号機から4号機までの建設工事を担当しており,現在は5号機建設工事の最終段階に入っている。


現場地図
浜岡原子力発電所全景(2002年12月撮影) 工事概要
場所:静岡県小笠郡浜岡町
発注者:中部電力
設計:中部電力
規模:原子炉建屋−改良型沸騰水型軽水炉ABWR
電気出力138万kw
RC造一部SRC造,S造 地下2階,地上5階 
延べ37,480m2
補助建屋−RC造一部S造 地下3階,地上5階 
延べ13,542m2
海水熱交換器建屋−RC造 地下1階,地上1階 
延べ2,209m2
モニタ建屋−RC造 地上1階 延べ318m2
工期:1999年12月〜2004年2月
(名古屋支店施工)
現場の現況
 取材に向かったのは2月初旬,天候に恵まれたが,遠州灘特有の強い西よりの風がサイトを吹き抜ける。冬場の工事は強風のため,タワークレーンの作業を休止せざるをえないことも度々で,さらに風は浜岡砂丘の砂を運んできては作業の邪魔をするそうだ。強風は立っているだけでも体温を奪い取り,東北から来た職人もここは寒いと洩らしたという,見た目以上に気象条件の厳しい現場だ。そんな現場もあと1回冬を越し,来春には建屋工事完了の予定だ。当社は現在,浜岡原子力発電所5号機の原子炉建屋,補助建屋他を単独で施工している。工事は各棟とも順調に進んでおり,昨年6月には建屋本体の中核を担う鉄筋コンクリート製原子炉格納容器(RCCV)の工事も無事に完了,11月には原子炉建屋の上棟式を終えた。取材当日は最上階の外壁コンクリートの打ち込みや屋根鉄板の溶接などが行われており,躯体工事の最終段階にきていた。現場はいくつもの大きい山を乗り越えた後で心なしか和やかな雰囲気に包まれていた。この3月末には原子炉建屋の躯体工事が終了の予定で,全体の進捗率も93%に達する。
原子炉建屋全景
浜岡5号機の特徴について
 浜岡原子力発電所5号機は,従来型の沸騰水型軽水炉BWRに改良を加えた改良型沸騰水型軽水炉ABWRが採用されている。その大きな特徴は原子炉格納容器の違いである。従来型の格納容器は鋼製だが,ABWRの格納容器は原子炉建屋と一体化した鉄筋コンクリートと内張りの鋼板で構成されており,直径・高さとも約30mの円筒形をしている。さらに幾つかの改良で,ABWRでは建屋のコンパクト化と低重心化が図られ,耐震性,経済性,安全性の向上が実現した。国内では東京電力柏崎刈羽原子力発電所6・7号機に次いで3機目の採用。当社としては柏崎6号機に次ぐ2機目の施工となる。
 また,5号機では地元をはじめ一般の方々に原子力発電所を理解して頂くため,建設期間中に幾度か現場見学会を開催しているが,完成後も快適に見学して頂けるよう専用のギャラリーや通路を設けている。さらに,原子炉建屋にある中央制御室は,安全・安定運転に最適な室内環境となるよう電力・メーカ・鹿島が共同してデザインしている。室内は開放感,安心感が得られるよう天井を高く,曲面にし,天井や壁の色をニュートラル色にする一方,適度な緊張感も保持できるよう床面には寒色系の青色を採用する。
中央制御室 浜岡5号機の構造について
 原子力発電所は,一般の建物に比べ厳しい耐震条件で設計されている。なかでも浜岡原子力発電所は想定される東海地震の震源域に建設されるため,より一層強固な構造となる工夫が凝らされている。例えば,RCCVの土台となる基礎スラブは,縦87m,横82m,厚さ6.5mの鉄筋コンクリート造で,地下約20mにある岩盤に直接設置している。この基礎スラブには,下段と上段に直径38mmの鉄筋が格子状と円周・放射状に何段にも配置されている。また,基礎スラブから建ちあがるRCCVは壁厚が2mあり,直径51mmの太い鉄筋を縦・横5段に配している。これら基礎スラブやRCCVは重要構造物であるため高い品質が要求され,事前に実物大模型を用いた試験によりコンクリートの充填性や施工性を確認している。さらに,このRCCVを囲うように厚さが2m以上もある鉄筋コンクリートの壁が二重に配置されており,地震対策には万全を期している。
浜岡5号機原子炉建屋の内部
原子炉建屋の基礎スラブの配筋の様子(2000年10月)
当現場の建設方針について
 当現場の大塚所長は「原子力関連施設の建設は一般の建物の建設に較べて,多方面に渡り気配りが必要な工事です。“安全・品質・地域と共に”が建設工事全体のスローガンですが,この言葉通り,QCDSE(Q:品質,C:価格,D:工期,S:安全,E:環境)全てに対し,行政,得意先,地域からの厳しい評価のなか,工事を進めなくてはなりません。それには鹿島の総合力と現場作業員の意欲との融合が欠かせません」と語る。その一貫として,毎日の昼休みに安全・品質に関するビデオを放映する『安全シアター』を開催し,作業員の意識向上に力を入れている。また,最盛期には600名を超えた作業員の入退出に『掌形認証システム』を採用し,各作業に従事した作業員一人一人を把握する等,きめ細かい管理を実施している。所長は最後に「原子力施設の建設はまさに当社のキャッチフレーズ通り“100年をつくる”工事です。当社をご指名いただいた中部電力さんの信頼に応えるべく,来年2月の建屋工事完了までトラブルゼロで工事が行われるよう最大限の努力を続けます」と語った。
原子炉格納容器(RCCV)施工の様子(2001年3月)
RCCVの出入口 掌形認証システム 朝礼で挨拶する大塚所長