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静岡空港 本体用地造成工事

巨大造成現場を操るIT土工管理技術
美しく雄大な富士山を仰ぐ静岡県に,2007年春,新たな空の玄関口・静岡空港が誕生する。
現在,建設地では,空港本体部の用地造成工事が着々と進む。
この大規模な造成工事を無事完成させるには, ITを駆使した土工管理技術が不可欠だ。

工事概要
平成14年度静岡空港本体用地造成工事(第4工区)
場所:静岡県島田市・榛原町
発注者:静岡県
規模:盛土工2,600万m3(うち第4工区320万m3
工期:2003年3月〜2004年3月
(横浜支店JV施工)
静岡空港本体用地造成工事
“新たな大地を創る”造成工事のサイト
 何の目印もない砂漠を思わせる砂地を,巨大ダンプが駆け抜ける。起伏の激しい路面を,唸るように轟くエンジン音と共に砂煙をあげて走る姿は,凄まじい迫力だ。その周囲を,ブルドーザーが土砂を押し均し,振動ローラは何度となく同じ箇所を辿り地面を締め固める。彼方ではマンモス・バックホーが土砂を掘削する。各々の重機は黙々とその任務を果たす。この延々と続く地道な作業は,昼夜を問わず行われる。造成工事の厳しさを垣間見た。
 現場は,お茶の産地・牧之原台地の東に位置し,島田市と榛原(はいばら)町にまたがる尾根部にある。東西に長い約190haの空港本体部用地は,西側に小高い山を擁し,東に移るにつれ谷や沢と共に低く傾斜していく。
 山を切り崩し土砂を運び,沢や谷を埋め平らな大地を造る――。土工量約2,600万m3,最大盛土高75mに達する大規模造成工事は平成10年に着工し,この3月末には約58%の造成が完了する予定となっている。

大規模造成工事の大きな課題
 この工事では,切り出した土砂(切土)を全て埋め立て(盛土),残土を一切外へ出さない,環境配慮型の造成計画が採用された。これは非常に難しい計画といえる。掘削した土砂の種類は一様ではない。多様な種類の土砂を,各々の特性や強度に適した場所へ,余すことなく盛土するよう設計しなければならない。事前の地盤調査にもかかわらず,予測した種類とは別の土砂が出る場合もあり,日々設計変更が繰り返される。
 また土砂の種類や作業環境に応じて,掘削・積込み・運搬・敷均作業を行うマシンを使い分ける必要もある。多数の重機をいかに効率よく安全に使いこなし,安定した品質を確保するか。その管理にも多大な労力が要求される。
 こうした課題を克服するため,当社工区ではコンピュータやGPS(汎地球測位システム),無線システム等の情報技術(IT)を統合した土工管理システムを構築,実用化している。
IT土工管理システムイメージ図。
現場で活躍する重機。
ITによる土工管理を支える若き鹿島マン
 ITによる土工管理は,3つのサブシステムとそれを束ねる「中央管理システム」から成る。サブシステムの1つ「ダンプトラック運行管理システム」は,GPSと無線を活用し,ダンプのリアルタイムな位置情報をはじめ,オペレータによる積載土砂の種類情報を送信することで,運転回数,運搬土砂の種類・量を把握できる。土質別の施工実績はコンピュータ管理され,日々の施工管理や設計変更に大いに役立つ。  
 盛土の品質確保に活躍するのは「締固め管理システム」だ。振動ローラに搭載されたGPSがその軌跡を計測し,転圧回数をコンピュータの画面上に色分け表示する。どこを何回転圧したかが一目瞭然だ。
 「施工状況管理システム」は常時現場状況を監視する定点カメラを設置し,安全性の向上,施工管理の効率化を図っている。
 これらサブシステムで得られたデータは,現場事務所に設置された中央管理室のモニタに常時映し出され,事務所にいながら広大な現場の状況を一元管理できる。現場を指揮する船田所長に伺った。
 「各々のシステムは,単体ではこれまでにも当社の現場で採用されていました。しかし複数のシステムを一括導入し,一元管理したのは当現場が初めてです。設計変更の多い工事でもありますし,従来のように作業終了後記録する各重機の運転日報を元に,手作業で土量を集計していては,とても追いつきません。短時間で大量の土を動かす工事には,正しいデータを迅速に得ることが不可欠なのです」。
 システムの運用では若手社員が大いに活躍する。システム導入の際には現場に張り付き,機械の設置から作業員の教育までを一手に担当した,機械技術センターの交野さん。現在も点検やメンテナンスのためにしばしば現場に赴く。
 加地さんは作業員たちの声を聞き,システムに対する質問や苦情に対し交野さんと対応策を講ずる,現場とシステム管理者のパイプ役だ。
 日々設計変更に対応する丹工事課長代理は,最もこのシステムを活用するひとり。システムから得たデータをもとに,効率的,経済的な施工計画を練り出す。
 「チームワークは万全です!」と若手三人衆。
 「今後こうした大規模な土木工事がどれだけあるかわかりませんが,ここでの成果をまた別の形に転用していきたいです。若手社員が新たな技術の伝承者となって,活躍してもらうことを期待します」と語る船田所長。頼もしく成長を続ける若手社員の姿を,嬉しそうに見つめる所長の笑顔が印象的だった。
「締固め管理システム」は振動ローラの転圧回数が車載パソコンと中央管理室モニタに色分け表示される。
中央管理室にて。左より加地さん,船田所長,丹さん,交野さん
2007年春 静岡空港始動!
完成予想イメージ 静岡空港は,北海道や九州など国内6路線のほか,アジア各地,ハワイやグァム,サイパンなど海外9路線が就航する予定となっている。この空港はアクセスのよさが魅力だ。東名自動車道路,第二東名自動車道路が近接。空港内には無料大駐車場も整備される予定となっている。車での利用はもちろん,鉄道・バスなどの公共交通機関を使用しても便利だ。また新たに東海道新幹線の空港新駅の設置も期待されている。
 もうひとつの魅力は,空港周辺の約300haという広大な敷地が,緑地や公園など自然と触れ合う場として整備されること。利用者に安らぎを与える空港となりそうだ。空港内も建設の際に伐採した樹木で作ったチップを利用し,法面などに郷土種の苗木が植栽される。自然を大切にした空港の実現には,環境専門家をはじめ地域住民の多大な努力があったという。
 空から富士山とともに,緑の木々に包まれた滑走路を見る日が待ち遠しい。
 
静岡空港