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![]() (仮称)宮城球場改修(第2期)工事 東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地「フルキャストスタジアム宮城」の改修第2期工事(フェーズ2工事)が急ピッチで進んでいる。昨年,当社の設計・施工で半世紀ぶりに生まれ変わった旧宮城球場だが,今回は第1期工事以上に作業工程はタイト。 野球観戦だけにとどまらない,エンターテインメント性を持った「フルキャストスタジアム宮城」へ――。野村新監督の采配とともに,一段と進化をとげた球場が,私たちを楽しませてくれるに違いない。 |
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工事概要 工事名:(仮称)宮城球場改修(第2期)工事 場所:仙台市宮城野区 発注者:楽天野球団 基本設計:当社建築設計本部 実施設計:当社東北支店建築設計部 規模: 敷地面積;210,227m2 延床面積;25,818m2(今回増築分14,908m2) 建築面積;13,193m2(今回増築分6,511m2) 工期:2005年10月〜2006年3月 ※球場本体施設工事 2005年11月〜2006年3月 ※球場付帯施設工事・テニスコート新設工事 (東北支店施工) |
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工事の概要(フェーズ2工事) 宮城という県名ゆかりの地,仙台市宮城野区。陸上競技場・自転車競技場などのスポーツ施設が整う運動公園「宮城野原公園総合運動場」の中に「フルキャストスタジアム宮城」はある。昨年10月から始まったフェーズ2工事もまた,プロ野球の開幕に間に合わせるという至上命題がある。現地を訪れた日も雪が舞い散る猛烈な寒気の中,建設の槌音は止むことなく続いていた。 フェーズ2工事は,球場本体施設の増設,球場付帯施設の新設,そしてテニスコート新設の3つに分けられる。 1. 球場本体施設(ギプス棟・ブルペン棟) メインスタンド正面を覆うコンクリートフレームを「ボールパーク養成ギプス」と呼んでいる。旧宮城球場の既存躯体を補強し拡充していくことから「養成ギプス」と名付けられた。今回はフェーズ1工事で増設されたこのギプス棟の1階〜2階に,M2階〜5階の4層を増設する。3階はフードコート,4階は10人程度で飲食や観戦が楽しめる個室ボックス席と一部屋根付き席(クラブシート),5階にはTVラジオの実況ブースと記者席,クラブシート,専用ラウンジなどが設けられる。 また,ブルペン棟の観客席は,チケットが売り切れることも多かったホームサイドの3塁側に約1,800席を増設。1塁側は席の増設を約250席にとどめ,3階に売店と大型ラウンジを新設する。ファミリー向きの観客席と大型ラウンジの間にはウッドデッキが設けられ,飲食しながら観戦できる。大きなガラスに囲まれた大型ラウンジは天候に左右されず観戦が可能なだけでなく,多目的パーティスペースとして結婚式や一般企業の入社式といったイベントに利用するプランがあるという。 2. 球場付帯施設 球団施設棟(S造・3階)と2棟の屋内練習場(S造・平屋),駐車場棟(S造・2階)の計4棟で構成される。総面積は約8,000m2。屋内練習場には人工芝の50m×50mのメイン練習場と30m×30mのサブ練習場を設置。球場近くの練習場を借りていた昨年と比べ,選手の利便性は格段に上がる。また球団施設棟はクラブハウスと執務エリアからなり,選手用ロッカー,食堂,浴室,トレーニングルーム,監督室,ならびに球団管理事務所が入る予定である。 3. テニスコート新設 これまで球場付帯施設建設場所にあったテニスコートを,陸上競技場の旧サブトラック用地に新設するもので,周辺整備を含めた総面積1万1,473m2。クラブハウス(S造・2階)は,どのコートも見渡すことが出来るようにコート中央部に配置。人工芝の下地は全面透水性舗装し,雨水が地下に浸透するので豪雨でも試合が行えるという。旧テニスコートで使われていたコート周りのフェンス,ネット,ベンチなどを再利用し,環境にも配慮した施設となる。 |
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短工期との戦い ![]() 工期は約130日。現場工事事務所の柴田剛典次長によると,ギプス棟は当初4階の予定を5階に設計変更を行ったことで工期はより一層厳しくなったという。この短工期内にいかに安全で高品質なものをつくりあげるか。様々な工夫が凝らされているが「コラムモールド補強ゲージの採用とユニットルーフ工法もそのひとつです」と柴田次長はいう。 「コラムモールド補強ゲージ」の採用は型枠作業の手間の軽減,作業員不足の対応に貢献した。ギプス棟M2階部分(階高4.5m)の丸柱は直径4.5mの円形にくりぬかれた壁と接合する。RC造の壁と丸柱を同時にコンクリート打設するためには,通常ベニヤ板を筒状に加工した型枠に加え,コンクリートの側圧から型枠を保持するための櫛型型枠が必要だ。「コラムモールド補強ゲージ」は予めスチール製の筒状の“カゴ”を作り,ベニヤ板に比べ廉価で加工しやすい厚紙製のボイド型枠をスチールの内側に取り付けてから吊り込み,壁型枠と接合する。スチールがボイド型枠を外側から補強するため,櫛型型枠の作業を省略することができた。 鉄骨の組立てや外装パネルの取付け,屋根の樋を含めた屋根葺き,避雷針配管などをすべて地組みで行うのが「ユニットルーフ工法」である。1ユニットは12m×7.8mで重さ約8t。地組みされた屋根1ユニットをひとつずつ,150tクレーンで吊り上げる。ユニットの数は全部で14スパン。この工法により,高所作業の低減,地組みによる作業の効率化と精度確保,工期短縮が図られた。 一方,作業員不足を補うために,フェーズ1工事に関わった有能な作業員を今回も指名。限られた工程の調整は各担当課長が協力して効果的な作業を進めている。休みは正月2日間のみ。当社の技術と職員の努力が短工期の作業を支えている。 「マスコミだけでなく,社内外の注目が高いのがこの工事の特徴です。宮城野原公園総合運動場の一角に位置していることで,市民の方々も工事の進捗状況を間近で見ることができる。関心をもって見守ってくれるということは,我々の士気も高まるし,励みにもなる。毎日緊張感と誇りを持って仕事をしています」と柴田次長は語ってくれた。 |
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理想のボールパークの創造へ 現場事務所の職員スタッフは30名。平均年齢が34.7歳と今回も若年層で固められた。短工期ゆえの緊張感で溢れているのではと思いつつ訪ねた現場事務所は,和やかな雰囲気に包まれていた。設計と施工部隊とのコミュニケーションだけでなく,建築・土木・事務の連携の良さが特に印象的だった。「理想のボールパークをつくりたい」という共通の熱い思いが,良好なチームワークの源泉なのだろう。 開幕戦は3月28日。鹿島の知恵と技術と人の輪がつくりあげた「理想のボールパーク」,ひとまわり進化した「フルキャストスタジアム宮城」に会えるのももうすぐだ。 |
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第1期工事(フェーズ1工事) 昨年,旧宮城球場は当社の設計・施工で改修第1期工事が行われた。約110日という短工期で工事を成し遂げたことや,砂かぶり席,楽天山など,それまでの野球観戦の概念を打ち破るユニークなスタジアム設計で注目された。2005年度グッドデザイン賞(建築・環境デザイン部門)を受賞している。 |
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このフェーズ1,2両工事を担当したのが大久保実所長である。大久保所長に「フルキャストスタジアム宮城」への思いを聞いた。 「フェーズ1工事はただがむしゃらにやるだけでした。しかしフェーズ2工事ではその経験から人手不足や風雪の対策を事前にすることができた。また発注者の楽天野球団さんと良好な関係が築けたことは大変ありがたかった。この工事は2期通して延べ13万人の作業員と約40人の鹿島のスタッフが携わりましたが,スタッフは朝早くから夜遅くまで頑張ってくれている。こんなに多くの人に注目され,期待されて,喜んでもらえる建物はめったにないことですから頑張ります」。 注目工事での重責の中にも大きな喜びがあると教えてくれた大久保所長。この工事に携わってからというもの,テレビでプロ野球中継を見ていても,試合内容よりも他球場の施設が気になって仕方なかったという。 「無事竣工したら,家族とゆっくりこのスタジアムでの観戦を楽しみたいですね」。 |
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(仮称)楽天野球団練習施設建築工事 「フルキャストスタジアム宮城」から北に10km。東北自動車道泉インターチェンジ近くの「仙台泉インターシティ」内でも,楽天野球団発注の練習施設の建設が進んでいる。総面積約3万6,300m2の敷地に,選手寮(RC造・2階・延べ1,340m2・30人収容)と人工芝練習場(中堅122m・両翼101.5m )を新設。ダグアウトと外野にラバーフェンスを設置するほか,室内練習場(S造・1階・延べ804m2),サブグラウンド(2,025m2)を設ける。将来は公式戦が開催できる球場へ設備を整えて行くという。 |
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