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交通混雑の解消と魅力あるまちづくりを目指して
一般国道12号札幌市創成改良工事

札幌市の都心部を流れる創成川は市内を南北に貫く人工河川である。
この川を中央に配する創成川通でいま,交通混雑の緩和と,都市空間の有効利用,都心環境の改善を目的にアンダーパス(地下道)の整備が行われている。
このプロジェクトで当社は,創成川通と国道12号の交差部のアンダーパス化工事を担当。
厳しい寒さの中,供用中の国道直下で昼夜問わずの工事が進む現場を訪ねた。
完成予想パース ※完成予想パースは実際と多少異なる場合があります。
一般国道12号札幌市創成改良工事
工事概要
一般国道12号札幌市創成改良工事
場所:札幌市中央区/発注者:国土交通省北海道開発局/設計・監理:国土交通省北海道開発局/規模:開削トンネル(ボックスカルバート工)アンダーパス(北行・南行線)―延長30m/渡河構造物―延長26m 掘削工6,100m3 コンクリート工1,700m3ほか/工期:2006年10月〜2009年3月
(札幌支店施工)
創成川通アンダーパスの連続化と緑地の整備
 札幌市南5条通から北3条通を結ぶ延長1.1kmの地下道を構築する創成川通アンダーパス工事(札幌市発注)は,連続化されていなかった南北二つの既設アンダーパス(1971年竣工)を取り壊し,新たなアンダーパスを構築し,連続化するもの。片側4車線の創成川通のうち2車線を連続アンダーパス化することで,創成川沿いの緑地を拡幅し市民の憩いの場として整備する。
 当社が施工を担当するのは,国道12号を管理する国土交通省・北海道開発局が発注する創成川通と国道12号の交差部約37m。開削工法で既設のアンダーパスと橋を取り壊し,新たに高さ5.4m,幅9.6mのアンダーパス上下線(2車線×2)と創成川を通すカルバート(RC造の箱)を建設する。

古くから市民に親しまれてきた創成川
 創成川通の中央を流れる創成川は,江戸時代に幕府より開拓の命を受けた大友亀太郎が官営農場の用水路としてつくった「大友堀」が前身。明治時代,札幌の街は東西に貫く大通と南北に流れる創成川を基線に碁盤の目状に形成された。創成川は物資を運ぶ運河としても,札幌付近の開拓に大きな役割を果たし,昭和初期までは市民の生活用水として身近な存在であった。しかし昭和40年代にコンクリート護岸に改修され,創成川通が幹線道路となるにつれ,市民が創成川に直接触れることは少なくなった。
 こうした中,2002年札幌市は「都心まちづくり計画」を策定。交通混雑の緩和と都市空間の有効利用,都心環境の改善を目的に,創成川通アンダーパスの連続化を計画した。計画当初から市民の関心は高く,経済,観光,環境保全など多様な方向から意見交換する市民懇談会が重ねられた。

整備前後の比較

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制約だらけの現場
 1月末,JR札幌駅から徒歩10分ほどの現場に向かった。周囲は,テレビ塔,バスターミナルがあり,一般車両,観光バスなどが絶え間なく行き交う。歩行者も多く,想像以上の交通量だ。
 この現場は今年4月末までに主要な工種を完了する予定で,急ピッチで作業が進んでいた。しかし,供用中の国道直下工事ならではの制約が現場を悩ませる。
 現場の松村典明所長に話を聞いた。
 「国道12号は,札幌と旭川を結ぶ幹線道路で,通行止めにして作業することはできません。夜間,車線を減らして作業を行い,翌朝には元通りに復旧させる。これを繰り返し行います」。
 それで,現場は必要に応じて24時間施工となる。既設のアンダーパス解体時は,道路の強度を保つために空洞部分に土砂とグラウト材で埋戻しを行って,翌朝の道路復旧に対応した。また札幌市の中心部は,道路下に凍結防止のヒーティングが埋設してあり,切り回し工事も難しい。加えて現場に資材を置くスペースが無いため,隣接工区に場所を借りながら作業をする状態だ。周辺にはホテルも多く,音も気になる。現場では,工事状況を知らせる『創成改良工事だより』を作成し,近隣に配布。工事への理解と協力をお願いしている。
 「制約の多い現場ですから,ここでは発注者や他工区との綿密な打合せが工事の鍵を握っています。それで毎日,現場スタッフが他社,近隣との調整に奔走しています」と松村所長は言う。
工事区間外の創成川 着手前(2006年11月)
現場全景(2008年2月)。交通量の多い国道12号と創成川通の交差部の地下でアンダーパス化工事が進む
厳しい寒さの中で
 地下の現場に降りると,覆工板のすき間から雪解け水が落ちてくる。この日の札幌の最高気温は0.3度。泥水に濡れながら,現場では側壁上部の配筋作業が慎重に行われていた。
 真冬の施工は苦労が尽きない。コンクリートを練るときに温水を使い,打設後は温風を当てて養生する。雪が降れば除雪作業に時間がとられ,常に効率のよい作業の検討を行わなければ工程に影響が出てしまう。
 現場では,工期を確実に守るために,当社とピーエス三菱が共同開発した「プレキャストコンクリートソケット構造」を採用した。通常,開削でボックスカルバートを構築する場合,底版,側壁,上床版までを場所打ちするが,ここではさまざまな理由から上床版を場所打ちすることが出来ない。この工法は,工場でプレキャスト上床版を製作し,現場で場所打ちした底版・側壁と接合させ,ソケット部をモルタルなどで固定する。接合部の配筋・コンクリート打設・養生の必要がなく強度が保てる構造のため工期短縮を図れる。
 工事のハイライトとなる上床版の設置は4月末まで。正念場の工事が続く。
既設アンダーパス上床版の撤去作業 現在は黒い管(暗渠)の中を創成川が流れる
覆工板をあけて重機を降ろす 杭打ち
工事手順
着工前
着工前
創成川暗渠切替え・既設アンダーパス埋戻し
創成川暗渠切替え・既設アンダーパス埋戻し
仮水路を流れる創成川を暗渠にいれ,地中に埋設する。既設アンダーパス内を土砂とモルタルで充填する
北1条橋・アンダーパス上床版撤去
北1条橋・アンダーパス上床版撤去
既存の北1条橋と既設アンダーパスの上床版を撤去する
杭打ち
杭打ち
覆工板を支える杭を約140本打つ
路面覆工・掘削
路面覆工・掘削
舗装路面を撤去し覆工板を設置する。北1条橋・既設アンダーパスと地下の土砂を搬出。創成川の暗渠は杭を利用してワイヤーで一時的に吊っておく
構築工
構築工
新たなアンダーパス底版・側壁を場所打ちする。創成川を通す水路を構築する
上床版の設置
上床版の設置
プレキャスト上床版を約40基設置,モルタルなどで接合する
路面復旧
路面復旧
上床版の上を舗装道路に復旧する
より魅力ある札幌の街へ
 JR札幌駅周辺は現在,活気ある都心のまちづくりを目指し,創成川通アンダーパス工事のほか,地下鉄さっぽろ駅から大通駅を結ぶ地下歩行空間なども整備中である。潤いのある都市空間,経済の活性化,観光客の増加など,一連のまちづくりへの市民の期待は大きい。
 「札幌は近年,外国からの観光客は増えましたが,もっと国内からの観光客が増えて欲しいですね」と話す松村所長も,札幌の街をこよなく愛す一人。現場スタッフは札幌出身者や,入社以来札幌支店管内を歴任したメンバーが揃う。少ない人数で夜勤もあり,全員が顔を合わすのも難しい毎日だが,安全で高品質なものづくり,札幌のまちづくりへの熱い思いは皆同じ。現場一丸となって仕事に邁進している。
 創成川通アンダーパスの開通は,2008年度末の予定で,地上部の緑地は2010年度中に整備完了の予定である。
松村典明 所長 松村典明 所長
入社以来,札幌支店の現場を歴任。唯一札幌支店外で担当した「サハリン2」の現場は印象深いという。「若い人は一度海外の現場を経験するといいですね」
アンダーパスの内部。側壁の残りのコンクリート打設後,プレキャスト上床版の設置が行われる
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佐藤昌志 副所長
佐藤昌志 副所長
工事全体の管理を担当。都市土木の経験が豊富で松村所長の信頼も厚く,若手を牽引する。「完成したらゆっくり工事を振り返りたい」
住吉 智 事務課長
住吉 智 事務課長
事務全般を統括。2007年12月に着任。複数の現場を兼務する。「工務系職員を少しでもサポート出来ればと思っています」
高橋英樹 工事課長
高橋英樹 工事課長
施工計画・施工管理全般,安全を担当。発注者,隣接工区対応に奔走する毎日。「完成したら家族でアンダーパスを走りたい」
小佐野修治 機電課長
小佐野修治 機電課長
機電工事全般と安全を担当。札幌支店の土木・建築の現場を歴任し,この現場に着任して1年。「高齢者も生活しやすい札幌になって欲しい」
大橋考暁 工事係
大橋考暁 工事係
測量,写真,検査,調整,『創成川改良工事だより』の発行などを担当。「全国の人から『住んでみたい』と思われるような札幌であって欲しい」
土門泰江 事務係
土門泰江 事務係
見積書,請求書,安全の書類作成などの事務全般を担当。夜勤明けでも疲れを見せない現場マンの姿に「自分も頑張ろうという気持ちになります」