特集:完成した西武ドーム

様々な制約との闘い−総合力で臨んだ工事の記録
工事に与えられた期間は2回のシーズンオフ,合わせて8か月間。超短工期という時間との闘いのほかに,既存球場の上に屋根を架けるため,新築工事にはない多くの制約との闘いとなった。そのため,様々な新技術・新工法を開発し,この難工事に挑んだ。
●一期工事
1997年7月。一期工事が開始された。野球シーズン中に球場外周に杭を打ち込む工事が行われ,シーズン終了後8,000tにも及ぶ金属屋根部の鉄骨建方がスタート。続いてステンレス製の屋根葺き工事が行われた。
リング状せりだし架設工法
通常は屋根を架けるためには,その下に数多くのベントを設けて屋根を支えながら架設するが今回は観客席がベントの荷重に耐えられないため,立てられない。そのため,外側からリング状に中央に向かってせり出しながら架設した。
鉄骨位置自動計測装置
ベントなしで鉄骨を中央へせり出していくため,鉄骨の位置決めには高い精度が要求された。このため目標座標まで自動で誘導する光波測量システムが開発された。
屋根材自動搬送・敷設装置
ドームの周辺にはクレーンを複数設置するスペースがない。この自走式屋根材搬送・敷設装置は最大5枚の屋根材をドーム半周にわたって運ぶことができる。また,急勾配の屋根での作業環境を大幅に改善した。
●二期工事
二期工事はグラウンドレベルで直径145mの膜屋根を構築し,天井までリフトアップ,一期工事で架設した金属屋根と合体させる工事だ。最大のポイントは17,000m2の巨大な膜をいかに短工期で張ることができるかであった。従来の手作業では4か月かかるため,新たに自走式膜張り装置が開発された。
自走式膜張り装置
従来手作業で行っていた膜のひっぱりを機械で行う自走式スプレッダーを開発。この膜張り装置の開発により170mにも及ぶテフロン膜を45日という驚異的なスピードで張り終えたのだ。
膜屋根リフトアップ
今回の工事の山場となった膜屋根のリフトアップは99年1月30日から3日間にわたって行われた。重量2000tの膜屋根を100台のジャッキで持ち上げていく。バランスを保ちながら37.2mの高さまで上昇した。
|