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京都市高速鉄道東西線建設工事六地蔵北工区

世界初の複線大断面矩形シールド工法
京都市の主要交通網のひとつである高速鉄道東西線。二条〜醍醐までの営業区間に加え,現在,醍醐〜六地蔵間約2.4kmの延伸工事が進められている。当社は,このうち六地蔵北工区(六地蔵駅〜石田駅間)の地下鉄トンネルを,世界初の複線大断面矩形シールド工法によって建設している。


現場周辺 京都府宇治市六地蔵奈良町〜京都市伏見区石田森東町

工事概要
場所:京都府宇治市六地蔵奈良町
    〜京都市伏見区石田森東町
発注者:京都市交通局
規模:発進立坑部;深さ18.55m
シールド部;トンネル掘削工法一泥土圧式矩形
断面シールド工法
外寸法一高さ6.500mm,幅9.900mm
渡り線部(合成セグメント)一延長57m
接続部(合成セグメント+中柱)一延長5m
一般部(ダクタイルセグメント)−延長691.2m
工期:1999年10月〜2003年10月
(関西支店JV施工)
様々な施工条件を考慮した新工法の採用
 六地蔵北工区は,周辺を民家や商業施設に囲まれ,市内でも交通が輻輳する外環状線道路直下での地下トンネル工事であるため,開削工法による施工区間を最小限に抑えることが最大の課題であった。また,六地蔵駅は東西線の起点となるため,上下線が交差する渡り線区間を施工する必要があった。こうした条件をクリアし,かつ経済性を実現するために,世界初の試みである「複線大断面矩形シールド工法」が採用された。
 地下トンネルの構築には,トンネルの高さと同等以上の土被りが必要となる。矩形シールドトンネルは円形に比べ,掘削断面・トンネルの高さともに小さくなるため,土被りが少なくてすみ,シールドに連結する駅部も浅い地下に建設できる。今回駅部の施工には開削工法を適用したが,その土被りも低減できる本工法の適用は,駅部開削の工期短縮・掘削土量の軽減にも繋がった。

円形と矩形の比較

世界初の挑戦に向けた技術検討

Waging Cutter Shield マシン リング積荷試験の様子

都市土木ならではの厳しい施工条件
 着工より約2年6ヵ月を経て,今年1月シールドマシンが発進した。周辺を住宅や商業施設,交通量の激しい道路に囲まれた当現場では,都市土木ゆえの様々な苦労を抱え工事が行われている。
 「発進立坑,地上で占用できる作業場ともに狭いため,シールドマシンの搬入や組立てには大変苦労しました。発進当初は,隣接工区の一部を借りて工事を行う程でした。狭い敷地内で如何に効率よく作業を行うかが大きな課題となりました」と,現場最前線で働く溝田所長は語る。
 現在は設備も整い,一日に5〜6mを掘削,4〜5リングのセグメントを施工する。切羽から立坑までを4両のバッテリーロコが休みなく往復し,掘削土砂の運搬,資材搬入を行う他,地上までの土砂搬出は,場所をとらず効率のよい垂直ベルコンが活躍している。一方,地上の占用作業場では,常時土砂を搬出するダンプなどの作業車が出入りする。車の入出時間,作業内容,周辺道路の渋滞状況等を常に把握し,携帯電話を活用して,分単位で管理・誘導を行っている。都市部での工事は近隣に迷惑をかけることのないよう作業を行うことが大前提だ。
 「“新工法への挑戦を無事成功させ次の工事に水平展開する”という共通の目標に向かって,JV社員が一致団結できたことが大きな支えとなりました」と,想いを語る溝田所長。
 本年11月末,シールドマシンは約760mの掘進を終え石田駅に到達する。新工法採用へ向けた関係者たちの努力の成果が,土木の歴史に新たな1ページを綴る日も近い。

中柱のない渡り線部から中央に柱を配した一般線路部をのぞむ。

エレクターによって定位置に設置されたセグメントをボルトで締める作業員たち 地上の作業員はダンプが常に土砂を積載するために待機し,とても狭い

溝田所長