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高架橋直下にシールドトンネルを構築する (13号相直)東横線渋谷〜代官山間地下化工事(土木工事第1工区) |
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巨大ターミナル,渋谷。駅前にはビルが建ち並び,多くの人で賑わう。 一方で,鉄道各線が結節する渋谷駅には,乗継ぎ動線の向上や駅周辺の活性化を望む声が上がっていた。東急東横線と東京メトロ副都心線との相互直通運転化計画はそれに応えたものである。より集客力のある,魅力的な街へ。 渋谷駅から代官山駅間の地下化工事を担う当社の現場を訪ねた。 |
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工事概要 (13号相直)東横線渋谷〜代官山間地下化工事 (土木工事第1工区) 場所:東京都渋谷区 発注者:東京急行電鉄 規模:泥土圧式シールド工法 施工延長508m 仕上り内寸 幅9,500mm 高さ6,300mm 工期:2005年1月〜2015年3月 (東京土木支店JV施工) |
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82歳の高架橋と共に歩む工事 2012年度に開始する東急東横線と東京メトロ副都心線との相互直通運転により,横浜から渋谷・新宿・池袋を抜けて埼玉西南部を結ぶ広域ネットワークが形成される。当社が担当するのは,渋谷駅から代官山駅を結ぶ約1.4km区間を地下化する工事の渋谷駅側577m。うち508mがシールド区間となる。シールド工法で明治通り中央に設置した発進立坑から南に掘削,西側にカーブして渋谷川を横断し,東急東横線の高架橋直下を掘り進む。 高架橋は1927年に築造され,松杭を基礎に持つ構造となっている。高架橋の梁には,渋谷駅と代官山駅間にかつて存在し,空襲で焼け廃駅となった「並木橋駅」の乗り場案内の名残もあった。東横線が地下化するその日まで,現役で列車の運行を支える高架橋と共に,工事は進められる。 |
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24時間続く緊張状態! 明治通りにあるシールド発進立坑以外の工事区間のほとんどは東横線の高架橋下のため,トンネル掘削に先立ち,高架橋防護工事を行った。その他,シールド機掘進の障害物となる残置杭の撤去や下水管移設なども事前に行う必要があった。 列車の運行には細心の注意が必要だ。一部でもミリ単位の変状があると列車の走行に影響する。高架橋の各地点には計測器があり,3mm変位すると自動的に警報が配信される仕組みになっている。事務所のモニターだけでなく,工事管理者の携帯電話にも配信されるため,24時間緊張状態が続く。 高架橋を補強する防護工は二つの方法が取られている。一つは厚さ70cmのコンクリート盤を基礎スラブとし,橋脚をベント鋼材※で下から補強する方法。土被りが少ない区間では,高圧噴射撹拌工法で地盤改良をし,更なる強化を図る。もう一つはH鋼杭を土丹層※まで打ち,RC梁などで仮受けする方法だ。 その他,高架橋近辺の道路にあった信号機や標識の移設など,「都市土木ならではの鉄道周辺にまつわるさまざまな対応が必要になる」と山本信也工事課長代理が話してくれた。 |
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アポロ(APORO)という名の新兵器 都心における地上面積の制約と深度が変化する厳しい工区。こうした条件をクリアするのに川崎重工業と共同で開発したのがアポロカッター工法。列車の複線断面(数字の8を横にしたような形)と硬い地盤を含むさまざまな地盤に対応できるシールド機だ。All(あらゆる)Potential(可能性を秘めた)Rotary(回転式)カッターの頭文字を取って名付けられた。メイン回転ドラム上に揺動フレームを介して回転式カッターヘッドを設置し,メイン回転ドラム(公転),カッターヘッド(自転)がそれぞれ回転することで掘削する。 従来の大断面シールドに比べて,カッター部分が小さく高速で回転するため,硬質な地盤でも切削性を発揮する。また,メイン回転ドラムや揺動フレームの角度や位置を制御することで,円形,矩形,馬蹄形など任意の断面を掘削できる。余計な部分を掘らない矩形は,排出土が少なく環境に優しいというメリットもある。 並木橋交差点を過ぎると渋谷から代官山へ,地名の通りシールドトンネルは勾配3.5%で南東方面へと上昇を続け,曲率半径160mの円弧を描きながら南西へと進路を変える。この値は列車運行における最急勾配と最小曲線半径に相当する。 |
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鉄道とトンネルのプロが集結 「高架橋の一部を横断する工事はよくありますが,真下を添うように進む工事は少ない。鉄道工事とトンネル工事のエキスパートが意見を出し合いながら進めています」と話す新原亨所長は,東急電鉄の鉄道工事を25年担当している。今回が5現場目だ。「お客様が喜んで下さるように仕上げるのがいつも究極の目標です」という。 シールドトンネルに従事して16年,5現場目となるベテランの猪又勝美次長は,本工事は「矩形断面,急曲線・急勾配,変化に富んだ地質,民地ビル・渋谷川および東横線高架橋直下の通過,さらに隣接民地との近接」と,厳しい条件にあるという。このように大変なシールド工事だが,「事務所が一体となって高架橋直下の掘進を慎重に行い,到達したい」と語る。 |
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慎重に着々と工事は進む 2009年10月,シールド機は明治通り下の掘進を完了し,いよいよ高架橋下を進み始めた。シールド機は,中央管理室のコンピュータ画面やウェブカメラのモニターを見ながら遠隔操作している。中央管理室は土圧やマシンの掘進スピードの管理,ジャッキの制御など,シールド機の遠隔コックピットのような役割を果たす。エレクタ※によるセグメント※の組立てや中央柱の設置も全て機械による操作だ。 トンネル内では,天井クレーンでセグメントを搬入し,バッテリーロコで部材が運び込まれる。掘削した土砂はスクリュコンベア,切羽ベルコンを経由し連続ベルコンで運ばれ,防音ハウス内の土砂ピットに排出する。そこでバックホーでダンプに積み込み処分場へと搬出される。人を介す部分もあるが,作業のほとんどが機械化されている。シールド工事での事故は地上にある高架橋へ影響を与えかねない。「列車の運行を妨げないこと」。それが鉄道工事現場での絶対命題だ。 |
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用語解説 ※ベント鋼材:四角形に枠組みした鋼製支柱 ※土丹層:100万年位前の粘土層が長年月の圧密によって硬化し泥岩化したもの。本現場では子どもの見学者に記念品としてプレゼントしている ※エレクタ:セグメントの組立てロボット ※セグメント:RC・SRC造などの分割されたブロックで,トンネルの躯体となる |
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