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キャピタルマークタワー新築工事


新たな免震技術の開発で,超高層マンションを地震から守る
顕著な都心回帰現象を受けて,首都圏は超高層マンションの建設ラッシュが続いている。
地震国日本に住む私たちが,住まいを選ぶ上での必須の条件は,いかに安全で安心して暮らせるか,である。これまで,地震に強いが超高層ビルへの適用には難しい制約などがあった「免震構造」。当社は,様々な課題をクリアした新技術「ウインカー工法」を開発し,47階建ての超高層マンション「キャピタルマークタワー」に導入した。
工事概要
キャピタルマークタワー新築工事
場所:東京都港区
事業主:東急不動産,安田不動産,三菱地所,昭栄,サンケイビル
設計・監理:日建ハウジングシステム,佐藤総合計画
構造設計協力:当社建築設計本部
規模:基礎免震構造(ウインカー工法) RC造一部S造 B1,47F,PH2F 869戸 延べ 99,858m2
工期:2005年1月〜2007年12月
(東京建築支店施工)
キャピタルマークタワー新築工事
完成予想CG
安全で快適な住まいの創造
 JR山手線田町駅前に広がる港区芝浦地区は,超高層マンションの建設が随所で行われている。巨大クレーンが休みなく動き,その数に目を見張る。そして各々の個性を主張したタワーが続々と姿を現してきた。交通の利便性,港区というブランド,水辺の風景――。誰もが憧れる住環境がそこにある。
 当社が建設中の「キャピタルマークタワー」は,JR田町駅より徒歩8分。白を基調としたトライアングルフォルムが印象的な,47階建ての超高層マンションだ。このプロポーションは,デザイン性だけでなく,周囲の建物と対面しないように設計配慮がなされている。約1万1,000m2の敷地には,多くの緑地を配し,憩いの場を創出。ダブルチューブ架構による柱や梁の出ない自由度の高い居室空間,360度の大パノラマを満喫できるラウンジやゲストルーム,低コストで安全なオール電化システムの採用,そして地震に強い免震構造などの最先端技術を導入し,真に安全で快適な暮らしを提供する。
南北断面図
1F 配置図
超高層免震技術「ウインカー工法」
 建物と基礎の間に揺れを吸収する装置を設け,建物に伝わる地震力を小さくする「免震構造」。地震時の建物の揺れを2分の1から5分の1に低減し,内部機能を維持できる信頼性の高い耐震技術として,近年そのニーズが広がっている。
 しかし,免震構造は超高層ビルやスレンダーで不整形な形状の建物には不向きとされていた。免震装置として使用される積層ゴム(鋼板とゴムを交互に重ねた構造)は,自重を支える圧縮力に強い反面,鉛直方向に引き抜く力(引張力)に弱い性質をもつ。そのため,引張力が局部的にかかる超高層ビルなどに適用した場合,積層ゴムに破断などの損傷が生じる可能性がある。従来,同種の建物を免震構造にする場合,設計上困難な制約が伴い,特殊な装置を設置しなければならず,コスト面など多くの課題があった。
 このたび当社が開発した「ウインカー工法」は,積層ゴムを直接建物の基礎に固定させるのではなく,ウイングプレートと呼ばれる鋼板を介して定着させることで引張力対策を施す。積層ゴムに引張力がかかった際,ウイングプレートがその大部分を吸収し損傷を回避する。積層ゴム本体の加工や特殊な装置を使わないため,低コストで信頼性の高い免震構造を実現できる。本工法は,日本建築センターの一般評定を取得しており,煩雑な手続きが必要なく他社設計の建物にも適用可能である。
 ウインカー工法
超高層免震ビルの揺れ方のイメージ
ウインカー工法模式図
通常時:建物の自重は積層ゴムから直接基礎に伝わる
大地震時に引張り変形を受けた場合: ウイングプレートが鉛直方向に動き,積層ゴムは水平に保たれ,ほとんど引張力を受けない 引張力によって持ち上がるウイングプレート 大地震時に引張り・せん断変形を受けた場合:引張力をウイングプレートが吸収し,左右の揺れを積層ゴムが吸収する
ウイングプレートの種類
建物の規模によって1枚の鋼板でできた平面タイプと機能性の高い2枚の鋼板をあわせた連結タイプがある。また,設置場所の納まり具合によってプレート枚数を2〜6枚に選択できる。
キャピタルマークタワーは連結タイプの6枚プレートを使用
平面6枚タイプ 平面4枚タイプ 平面2枚タイプ
鉛プラグ入り積層ゴムの構造
免震装置の配置図
トライアングルフォルムのキャピタルマークタワーには,大きな引張力のかかるコーナー部にウインカー工法の免震装置24基を配置。従来型の免震装置を含めると,69基の免震装置が設置された
免震装置の配置図

 「キャピタルマークタワー」には,ウインカー工法による重さ10t,直径1,600mmの世界最大級の巨大な鉛プラグ入り積層ゴムを24基使用。引張力の生じやすい建物のコーナー部に設置した。このほか,通常の免震装置45基をバランスよく配置することで,47階という超高層マンションで免震効果を最大限に発揮する。
 施工においては,免震装置を置く基礎コンクリートの精度が要求された。基礎コンクリートに歪みや傾斜が生じると,装置を水平に保つことができなくなり,免震効果が発揮できないばかりか,大地震の際,積層ゴムに損傷が生じる可能性もある。誤差±1.5mmという高い精度のコンクリート打設には細心の注意が払われ,手作業による補修を行って,この条件をクリアした。
免震装置設置時の現場(2005年8月)
ウインカー工法の免震装置。六角形にウイングプレートを配置
ウインカー工法の免震装置設置手順
免震基礎型枠コンクリート打設。装置を置く土台となるので,高精度が要求される 重さ10tの免震装置をクレーンで吊り上げる。施工中に積層ゴムが損傷しないように,カバーがかけられている
免震装置据付け ウイングプレートの取付け
ウイングプレートと免震装置をボルトで連結する ウイングプレートの基礎コンクリート打設
「全員の和」をモットーに安全管理を向上
 9月上旬,現場を訪ねた。2005年1月よりスタートした工事は,8月に免震装置の設置を無事完了。36階の躯体構築,ならびに内装・設備工事が行われていた。当現場では,柱・梁・壁・床の部材の90%以上をプレキャスト化して工期短縮と品質の向上を図り,1フロア5日のサイクルで躯体を施工している。
 現場を統括する大塚啓史所長は,これまで多くの超高層ビル建設を手掛けた大ベテランだ。その経験と実績をベースに,信頼ある部下のバックアップのもと無事故無災害で工事は順調に進んでいる。
 大塚所長に現場方針について聞いた。大塚啓史所長「お客様に真に安全,安心で,また快適な住まいを提供するための大前提は,無事故無災害で建物を完成させることだと思っています。この大現場で十分な安全管理を行うためには,“全員の和”が大切です。仲間の安全を思いやり,自分の安全を自分で守る。現場全体にこうした意識を広めるよう,職長会の中に安全に関する複数の部会を設けています。各々が責任と自覚をもって活動してくれています」。
 36階フロアの現場では,強い日差しの照りつける中,スラブの鉄筋の配筋が行われていた。下層階では暑さと湿気がこもる室内で,もくもくと内装作業をする作業員の姿があった。こうした厳しい作業環境の中で頑張る作業員の安全と健康を思いやる大塚所長。「朝“おはよう”と言って私の現場に来られた作業員の皆さんを,夕方“ご苦労様”と言って無事家族のもとに帰すことが私の役目です」という言葉が,印象的だった。

 2007年12月,「キャピタルマークタワー」は完成を迎える。超高層免震という新技術への挑戦は,今後の超高層建築の可能性を益々広げるであろう。

※建築部材を,工場などであらかじめ決められた寸法・規格に製作し,現場で組み立て,結合すること。
現場全景(2006年8月)
36階スラブ配筋の様子。残暑が厳しく,強い日差しの下での作業は熱中症予防が重要
400tクラスの巨大タワークレーン3台が活躍。効率的に作業を行うために,1回に吊り上げる部材についてもシステマチックに管理されている