KAJIMAエコプラザ

住民参加によるハゼ調査

 江戸前の風物詩のひとつにハゼ釣りがあります。東京湾は,ちょうどお盆を過ぎた頃から秋にかけて,運河筋や岸壁,船からハゼ釣りを楽しむ人々で賑わいます。
 今月は,先月に引き続き,当社の技術研究所環境技術研究部・水域環境グループが葉山水域環境研究施設で行っている調査・研究の中から,ハゼについての研究を紹介します。
 同グループでは,沿岸土木構造物などが水産資源や自然環境に与える影響について,様々な観点から調査・研究を行っています。1980年代後半から,内湾域や汽水域の代表魚種であるマハゼの調査研究に取り組み始め,これまでにハゼの生態調査手法や飼育・人工増殖技術の確立に努めてきました。近年では,特にハゼがカニの幼生を餌としていることに着目して,カニの住みかとなるコンクリートパネルを開発しています。また,護岸に砂ガニやゴカイが住める干潟の機能も持たせることによって,ハゼやウナギなどが育つことのできる環境を創造する研究もしています。

ハゼ釣りは子供から大人まで気軽に楽しめる 1年で15〜20cmに成長して親になる
ハゼ釣りは子供から
大人まで気軽に楽しめる
1年で15〜20cmに
成長して親になる

 一方,ハゼの生活を守ることのできる護岸の開発と平行して,ハゼの資源調査・モニタリングを地域住民と一体となって実施しています。具体的には,この5年間,横浜市金沢区の平潟湾で,住民・大学・行政とタイアップして,資源調査を目的としたハゼ釣り大会を実施しています。調査は,参加者が釣ったハゼやその他の魚の数と魚体長などをアンケート形式で報告してもらう形で実施しています。昨年の大会では,金沢区内の小学生約100名が参加し,参加者の中には初めて魚釣りをする子供たちも多くいて,釣ったハゼは試食できるなど,好評を博しました。
 なお,当社では,ハゼの資源調査の他に,潮干狩りを利用したアサリの資源調査や,トビハゼの産卵巣調査なども住民と共に実施しています。このような調査に当っては,生物をホリマリン等の固定液で殺すことなく,現場で生きたまま調査・測定した後に,元気な状態で海に帰すキャッチ・アンド・リリースを実践しています。それは,研究担当者が,生物をいたわりながら情報を得ることが大事であると考えているからです。

当社が開発したカニ護岸パネル 当社が開発したカニ護岸パネル
当社が開発したカニ護岸パネル
カニが好むよう凹凸や目地をつけ,住みかとなる穴を設けている
カニが好むよう凹凸や目地をつけ,
住みかとなる穴を設けている

調査では,当社が考案したアンケートシートが活躍した
調査では,当社が考案したアンケートシートが活躍した

平潟湾でのつり大会の様子。参加者には餌や記念品が提供された
平潟湾でのつり大会の様子。参加者には餌や記念品が提供された