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東京・都心部で進む 「都市再生」。
既存ビル建替えの決め手は「地下」にあり!

(仮称)丸の内一丁目計画
わが国経済を支える国際ビジネスセンターとして国内外の有力企業が集積する大手町・丸の内・有楽町地区(東京都千代田区)でいま,既存ビルの建替えが相次いでいる。この地区で現在当社JVが施工しているのが,金融機関の本店となる超高層ビル。24時間施工,地上・地下“二段打ち工法”で9月の上棟を目指し,急ピッチの工事が進められている。
MAP 工事概要
JFEビルディング解体工事

場所:東京都千代田区
発注者:三井不動産
規模:地上解体工事,地下設備・内装撤去 S造一部SRC・RC造 B4,18 F,PH2F 延べ 65,280m2
工期:2007年4月〜2007年12月
(仮称)丸の内一丁目計画
場所:東京都千代田区
発注者:三井不動産
一括テナント:三井住友銀行 本店
設計・監理:日建設計
規模: S造(CFT構造)一部SRC・RC造 B4,23F,PH2F 延べ 80,362m2
工期:2008年1月〜2010年7月
(東京建築支店JV施工)
「都市再生」,第2ステージへ
完成予想パース 大手町・丸の内・有楽町地区(大丸有地区)では10年ほど前から,東京駅周辺エリアでビルの建替えが進められ,当社もグラントウキョウノースタワー・サウスタワーなどの超高層ビルの建設に関わってきた。
  大丸有地区で政府が指定した都市再生緊急整備地域の規制緩和の効果が,ここに来て顕在化,企業の統合や連鎖型建替えなど,大手町一,二丁目と丸の内一丁目北側エリアに「都市再生」の動きがシフトしている。
  「(仮称)丸の内一丁目計画」は,三井不動産が,「JFEビルディング」(1974年竣工:旧日本鋼管本社ビル)の解体後に新築するオフィスビルで,三井住友フィナンシャルグループと三井住友銀行の本店機能が移転する。
18層の躯体を4ヵ月で
磯部和明次長 7月下旬,現場を訪れた時,工期の60%強を経過し竣工まで1年を切って上棟直前であった。工務担当の磯部和明次長に聞くと,「本工事の工期は30ヵ月ですが,最初の12ヵ月は山留工事と地下解体工事。地上解体工事を合わせると約39ヵ月のうち半分以上の21ヵ月が解体工事なのです」という。
  残り18ヵ月で地上・地下の躯体〜仕上工事を行う短工期のプロジェクトだ。すでに建ち上がっている18層の躯体はわずか4ヵ月足らずで組み上げた。「これだけ急ピッチな工程は,工種ごとの細かなマイルストンの設定と工程管理によってのみ実現できます」と磯部次長は語る。
解体にあたりアスベストの安全・迅速な除去方法としてウォータージェットが採用された(2007年6月時点)
解体工事にかかるJFEビルディング(2007年7月時点)。せり下げ方式仮設足場が組まれた
基礎・地中障害撤去及び床付(2008年10月時点)
地上・地下同時進行の“二段打ち工法”
山川祐司課長 地上解体工事から担当した山川祐司課長は,「通常,ビルを短期で建てる場合,“逆打ち工法”で1Fレベルから地下に向かって地下躯体を,同時に地上の躯体も構築します。しかし,地中に既存地下躯体が4層もあるので,逆打ちを行うには既存躯体の補強,埋戻しが大きくなるため適さない」という。四辺を隣地建物と地下鉄路線に囲まれ,アースアンカーもできない厳しい施工条件だ。
  一方,周辺の地下水位の影響で,地下3,4階の地下躯体をそのまま解体すれば被圧水が吹き出す。「そこで,コストと工期はもちろん発生する廃棄物抑制も考慮して新工法を発案。既存の外周壁・外周梁は残したまま地下3階より下の外周壁内側にマンメイドソイル(流動化処理土)を埋戻し材として施工。地下4階以下にSMW山留壁を構築しました」(山川課長)。
  既存地下躯体の梁部分の下部にできるSMWの欠損部分は,地盤改良工法のスーパージェット工法で塞ぐ。手間をかけることで結果的に山留工事の工期を短縮できた(特許出願中)。
  SMW山留壁構築後,水平方向に切梁をして順次地下躯体を解体した。耐圧盤から地下部分鉄骨建方を実施し,まず1階スラブを先行打設。躯体工事は,地下は地下4階からRCを,地上は1階から鉄骨を並行して構築する “二段打ち工法”で全体工期を短縮している。
山留新工法イメージ ※当社・ケミカルグラウト共同開発
タワークレーン建方(2009年3月時点)。AIG大手町ビル(後方),パレスホテル(右),日比谷通り/道路下:都営地下鉄三田線(左上),永代通り/道路下:東京メトロ東西線(左下)に囲まれた敷地
地上では20mを超える大梁地組が最上階で行われた(2009年4月時点)
地下では仮設切梁の柱梁と本設の柱・スラブが交錯しながら施工が進む(B3F:2009年7月時点)
外周山留施工手順
井戸を設置し,揚水を行う
地下では仮設切梁の柱梁と本設の柱・スラブが交錯しながら施工が進む(B3F:2009年7月時点)
マンメイドソイル打設(B3F梁下まで)
地上では20mを超える大梁地組が最上階で行われた(2009年4月時点)
SMW構築(フレーム部SMW欠損あり)SMW欠損部スーパージェットによる止水
地下では仮設切梁の柱梁と本設の柱・スラブが交錯しながら施工が進む(B3F:2009年7月時点)
切梁を架設しながら各階既存梁・スラブ解体
24時間超高速施工の工夫
夜間に行われるPC取付作業(2009年8月時点) 夜間人口が極端に少ない都心部の工事現場では,工期短縮を目的とした24時間施工が行われることが多い。しかし,これも現場を取り巻く周辺状況によって事情は異なる。
  現場の一方の隣接ビルは,平日日中の騒音・振動が課題となるオフィスビルで,もう一方は営業上夜間および土日に静謐さが要求されるシティホテル。そのため施工可能な工事の内容と時間を調整しなければならない。
  工事は,8時から17時までの昼間の工程と20時から5時までの夜間の振動・騒音の少ない工程に分かれている。解体工事期間中は夜間にスーパージェットや既存地下躯体解体に伴う小割,仕分け作業およびSMWやCD杭を断続的に行った。躯体工事に入ってからは地上では昼間に鉄骨建方作業や床版工事を,夜間にPC取付作業を行っている。地下では昼間に鉄筋・型枠工事を,夜間に支保工組立・解体作業を行っている。このサイクルで工程を圧縮した。
海外建材の積極的な調達
 すでに5割方取り付けられ,端正な表情を見せている黄色い花崗岩打込PCaカーテンウォール。石材は中国内モンゴル地区産だ。適度に陰影のある“割肌”による垂直方向のマリオンが独特の重厚感を生み出す。
  鉄骨は柱・大梁を中心に全体約1万3,000tのうち60%を,アルミカーテンウォールの80%を,ガラスの90%をタイ・中国にて生産・輸入した。品質面が格段に向上している海外建材を積極的に調達している。
  国内のこの規模の施設では初めてアルミカーテンウォールに粉体塗装(超高耐候ポリエステル樹脂)を採用し,揮発性有機化合物(VOC)を使用しない環境に配慮した取組みがなされている。
花崗岩打込PCaカーテンウォール外観(2009年8月時点)。超高層ビルでは珍しい“割肌”仕上げの石材を打ち込んでいる
格調高い銀行本店のたたずまい
 内装工事はこれからだが,オフィスフロア,エレベータホールをはじめ共用部分の諸室についてモックアップを製作するなど,デザイン・仕様についても入念な準備が進められている。伸びやかな空間,木質系の内装など,格調高いたたずまいだ。
  「銀行本店なので,セキュリティ面でも通常のオフィスとは仕様が全く違う。執務室も機能的で最新鋭なものになる」と磯部次長は話している。

 完成予定は2010年7月。三井住友銀行は2001年の合併以来,日比谷地区と大手町地区に分散していた本店機能を,大手町地区に集約することができる。
内装モックアップ1.基準階オフィス
2.エレベーターホール
3.視察風景
全景(2009年8月時点)
集合写真
「丸友会」のクリーン大作戦

大手町界隈をきれいにすることから一週間が始まる 現場では,現在約450人の現場関係者が工事に携わっている。工種ごとに各班から1名ずつ合計約30名からなる「丸友会」を結成,毎週月曜の朝礼後に工事現場周辺の歩道の清掃を行っている。大手町交差点を中心に大手門や和田倉橋あたりまで,30分ほどかけた,吸殻やペットボトルなどのごみ拾い活動。週明けのビジネス街を,皇居周辺の美しい環境で迎えてほしい,という気遣いだ。
所長メッセージ
施工力アップは「顔が見える」現場づくりから

松島潤所長 今後の大深度地下施工を伴う都心部大規模工事のモデルとなる現場です。厳しい工期を克服するため,マイルストンの設定などきちんとした工程管理をつくることから始めました。施主・設計・現場一体となって外内装モックアップを含め設計確定工程の遵守を進めています。施工法では山留めに新工法を採用したほか,二段打ち工法,カーテンウォールユニット化など様々な最適工法を検討選定し総合的施工法の工夫をしています。
  どんなに技術が進んでも現場の基本は「人」。所員はもちろん,職長には過去の工事で最も優秀な人たちに集まってもらいました。また,顔が見えることが現場の意思疎通・情報伝達で最も大切と考え,新規入場者教育にはできる限り所長として出ています。顔色を見れば工事の状況が分かります。夜勤もある厳しい条件ですが,休日管理を徹底して現場で働く人の健康を守り,施工力アップを図っています。