[2005/2/15]


特殊増粘剤を使用した軽量コンクリートの

実工事への適用

商品名『ソフトクリートRマーク
良好なポンプ圧送性と優れた凍結融解抵抗性を両立

背景ソフトクリートの概要ソフトクリートの特長

ソフトクリートの現場適用例今後の展望

 鹿島(社長;梅田貞夫)は、特殊増粘剤を使用した軽量コンクリート(ソフトクリート)を開発し、このほど、盛土代替材料として、廃棄物処分場工事に適用し、施工性能を確認しました。 ソフトクリートは、花王(株)と共同開発した特殊増粘剤を使用することで、優れた材料分離抵抗性を有し、ポンプ圧送時における人工軽量骨材への吸水を抑制した軽量コンクリートです。 ソフトクリートでは、一般的な人工軽量骨材を乾燥状態で使用した場合でも、ポンプ圧送による施工が可能であり、これまでの軽量コンクリートで課題とされてきた、ポンプ圧送による施工性と耐久性を大幅に改善しています。
 
ソフトクリート
ソフトクリート

背景



 軽量コンクリートは、下部構造への負担軽減が求められるコンクリート構造物にとって大変有効な材料であり、構造物を軽量化することにより、部材のスリム化、コストの縮減、工期短縮など多くのメリットが期待できます。
 軽量コンクリートでは、軽量化を図るため、骨材に微小な空隙を多く含む多孔質な軽量骨材を使用します。 しかし、これら軽量骨材は、吸水率が大きいため、軽量コンクリートをポンプ圧送する場合、圧送圧力によってコンクリート中の水分が骨材に吸収されます。 そのため、軽量コンクリートの流動性は、ポンプ圧送により低下し、配管の中でコンクリートが詰まることになります。この対策として、従来の軽量コンクリートでは、事前に十分にプレウェッティング(骨材にあらかじめ吸水させておくこと)した軽量骨材を使用しています。 しかしながら、現場での骨材の品質管理が煩雑になるばかりでなく、プレウェッティングした軽量骨材を使用した軽量コンクリートでは、硬化したコンクリートの耐久性、特に、凍結融解抵抗性能*が低下することが問題となっています。
 一方、これらの問題を解決すべく、プレウェッティングの必要ない吸水率の低い高性能軽量骨材を使用した軽量コンクリートが開発されていますが、特殊な骨材のためコストが高く、また、供給体制が十分に整備されていないのが現状で、広く適用されるまでには至っていません。
 そこで、鹿島は、一般の軽量骨材を用いながらもプレウェッティングの必要がなく、ポンプ圧送による施工が可能であり、かつ、耐久性に優れた軽量コンクリート(商標;ソフトクリート)を開発しました。

*凍結融解抵抗性・・・土木学会コンクリート標準示方書で規定されているコンクリートの耐久性能のひとつ。コンクリートの凍結・融解を繰り返し試験し、その劣化程度を評価する。プレウェッティングした軽量骨材を使用した軽量コンクリートでは、凍結融解を繰り返すと、骨材中の水分が凍結融解を繰り返し、少ない試験サイクル数でコンクリートが劣化することが知られている。


ソフトクリートの概要


 今回開発したソフトクリートは、一般的な軽量骨材を乾燥状態で使用し、花王(株)と共同で開発した特殊増粘剤を添加した軽量コンクリートです。「KK-A」、「KK-B」という2種類の液体状の特殊増粘剤を使用するとともに、空気連行剤(AE剤)を用いて良好な空気を適切に混入することで、材料分離を起こさず、ポンプ圧送による骨材への吸水を抑制することに成功しました。このため、軽量コンクリートの課題であった凍結融解抵抗性が大幅に改善されます。
 2種類の特殊増粘剤を使用することにより、コンクリートの粘度をそれほど高めることなく、材料分離も抑制することができます。これにより一般的な人工軽量骨材を乾燥状態で使用した場合でも、軽量骨材への圧力吸水が抑制されるため、ポンプ圧送による施工が可能となりました。

 
ソフトクリートの材料分離抵抗性
ソフトクリートの材料分離抵抗性
 
人工軽量粗骨材
人工軽量粗骨材
(SHライト;巴工業社製)
 
ソフトクリートの優れた凍結融解抵抗性
ソフトクリートの優れた凍結融解抵抗性

ソフトクリートの特長

 

 ソフトクリートの特長は以下のとおりです。

  1. 施工性;一般的な人工軽量骨材を乾燥状態で使用した場合でも、ポンプ圧送による施工が可能です。
  2. 耐久性;従来の軽量コンクリートと比較して、凍結融解抵抗性能が大幅に向上します。土木学会コンクリート標準示方書の基準をクリアすることが可能です。
  3. 単位容積質量;使用する軽量骨材、配合により1.2〜2.3t/m3の範囲で設定することが可能です。
  4. 圧縮強度;使用する骨材、配合により1.0〜40N/mm2の範囲で設定することが可能です。
  5. 流動性;任意で設定でき、自己充填性を有する高流動コンクリートとすることも可能です。
  6. 製造;市中のレディーミクストコンクリート工場で製造することが可能です。

ソフトクリートの現場適用例

 

 このソフトクリートを、鹿島関東支店が施工を進めている廃棄物処分場構築工事の盛土の代替材料として適用しました。
 茨城県で施工中の「公共処分場「エコフロンティアかさま」建設工事」では、一部に重機施工による盛土が困難な急傾斜の箇所があり、軽量で急傾斜でも自立性を有し、かつ施工性に優れた代替材料が求められていました。 多くの場合、このような盛土代替材料としては、発泡モルタルが使用されますが、発泡モルタルは、施工管理が難しく、打設高さが1m以下に限定されるため何度も打設しなければならず、また雨天時に施工できないなどの条件により工期の延長が懸念されました。
 そこで、ソフトクリートの適用を検討し、盛土代替材料の要求性能(単位容積質量1.8t/m3以下、圧縮強度材齢1日で1N/mm2以上、自己充填性)に応じた配合設計を行い、各種確認実験を経て、約3万m3のソフトクリートをポンプ圧送により施工しました。 施工中ポンプの閉塞などのトラブルはなく、円滑に施工でき、水平換算距離167mのポンプ圧送が可能であることを確認しました。なお、本工事では、ソフトクリートの採用により、打設高さを最大1.9m程度とすることができ、さらに降雨量4mm未満での施工が可能となったことより、発泡モルタルによる盛土構築に比べ、工期を約45%(約5カ月間)短縮することができました。

 
施工状況(1)
施工状況(1)
 
施工状況(2)
施工状況(2)
 
施工後のコア試料
施工後のコア試料
(人工軽量粗骨材が均一に分散)

今後の展望

 

 「ソフトクリート」は、今回、実施工に3万m3適用し、その良好な施工性を確認できたことから、今後は、新設・補修・補強を問わず、軽量化によるメリットの得られる構造物や、急速施工が必要な盛土工事などを対象として、広く提案を行っていく方針です。



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