[2005/5/24]


水の幕による防火区画

「ウォータースクリーン」が一般認定取得

三菱地所の東京ビルに初適用


背景ウォータースクリーンの概要と特長一般認定の概要
適用第1号・東京ビルの概要今後の展望

 鹿島(社長;梅田貞夫)とホーチキ(株) (社長; 藤本二郎)が共同で開発した、微細な水粒子の幕で防火区画をするシステム「ウォータースクリーン」が、このたび特定防火設備として国土交通省の一般認定(認定番号EA-0157)を取得しました。
 ウォータースクリーンは200ミクロンの微細な水粒子を噴出する特殊なスパイラルヘッドをライン上に連続配列し、防火区画を形成するシステムです。水幕のどこでも通れる特性は、火災時の高い避難安全性と救援・消火活動を確保します。また、従来の防火シャッター等では難しい、カーブした防火区画や複雑な断面形状における区画が可能になり、空間の可能性を飛躍的に広げる画期的な防災システムです。
 これまで、ウォータースクリーンを建築物において特定防火設備として設置する場合、建物ごとに耐火性能と防火区画性能に関する検証を行い、性能評価を経て大臣認定を受ける必要がありました。このたび国土交通省の一般認定を取得し、幅50メートル、高さ6メートルまでの範囲であれば、複雑な手続きを経ずに設置できるようになりました。
 その適用第一号として、千代田区で施工中の(仮称)東京ビルに採用され現在施工中です。都心の極めて多くの人が通る部分の防火区画にウォータースクリーンが採用され、安全な街づくりに貢献します。
 
円弧状の区画も可能
円弧状の区画も可能

 

東京ビル
東京ビル
設置場所(地下1階)

背景



 従来の防火シャッターや防火扉などの設備は、開く方向が限定されていて、しかも、避難したい方向に扉が開かない場合があります。また、老人や車椅子利用者が避難する際や、担架の搬送時などには防火扉の幅や自閉機構が避難の妨げになる場合がありました。さらに、シャッターや扉では、火元や煙の様子がわかりにくく、家具や商品が近接して置かれた場合、降下・閉鎖障害が起こり、被害が拡大する恐れがあります。
 ウォータースクリーンはこれらの問題点を解決し、尊い人命の確保を第一の目標に掲げた防火設備として開発されました。
 しかし、ウォータースクリーンを建築に使用する場合、これまでは案件ごとに、耐火性能および防火区画性能に関する詳細な検証(性能設計)を行い、性能評価を経て、大臣認定を個別に取得する必要がありました。この検証に要する手間と性能評価・事務手続き期間などを簡素化する観点から、一般認定の取得が望まれていました。
 今回、国土交通省の一般認定を取得したことにより、幅50メートル、高さ6メートルまでの範囲であれば、複雑な手続きを経ずにウォータースクリーンを設置できるようになりました。

ウォータースクリーンの概要と特長



  1. 200ミクロンの水粒子を特殊スパイラルヘッドで噴出することによって防火区画を形成します。火災時の高い遮熱効果、水幕形成・保持、煙や煤の洗浄効果、水滴が当っても痛くないこと(シルキータッチ)、などの点において200ミクロンは最適な水滴の大きさであることが確認されています。

  2. 水幕のどこでも通ることができるため、避難用の広い間口が確保できます。自閉機構をもつ防火扉に比べ、車椅子利用者や怪我人の搬送が容易にできます。

  3. 双方向からの移動が容易であるため、火元の状況を確認しながら救援・消火活動が行えます。

  4. 万一、区画に障害物が置かれた場合でも、水幕は有効に働きます。

  5. 床や天井に段差がある場合でも自在に設置でき、円弧状など曲線状に防火区画を設けることも可能です。シャッターにおけるポストのような支柱を設けることなく大空間を区画できます。

  6. 建物だけでなく、道路トンネル、地下鉄など空間形状の特殊さゆえに、火災時の区画化が難しかった分野への適用が期待されています。

一般認定の概要

 

■システム
 本工法は、水幕ヘッド(ウォータースクリーン専用ノズル)を区画ライン上に配置し、霧状の水を散布することにより防火区画を形成します。火災時の高温煙が天井部に発達することより区画として用いる水幕ヘッドは通常のドレンチャーヘッドが約90度に対して、170度という広い放射角度で防火区画を形成します。また、火炎や放射熱を遮断する延焼防止機能以外に、水幕による冷却効果及び有害浮遊粒の捕捉・洗浄効果や煙の拡散抑制効果が確認されています。
 このシステムは、貯水槽、高圧ポンプと高圧配管、散水ヘッド(スパイラルヘッド)、起動制御用センサーと制御盤から構成されますが、特段の大きなスペースを必要としないので既存の建物や施設の防火改修にも適用が可能です。
 
システム概要

■一般認定
 
システム概要
 
加熱試験結果
加熱試験結果
 
システム概念図
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適用第1号・東京ビルの概要

 

 今回一般認定の適用第1号物件として施工中の(仮称)東京ビルでは、地下1階のJR京葉線コンコースに連絡する建物地下1階に5.6メートルに渡って設置され、多くの来街者のための避難安全性の向上に大きく寄与することになります。
 
工事概要

今後の展望

 

 大規模再開発プロジェクト、道路・鉄道網の整備は今後ますます加速していくものと思われます。一方、高齢化社会やバリアフリー化の進展により、多くの人の社会進出の機会が増え、防災設備は今までよりもさらに人にやさしく、かつ高性能なものでなくてはなりません。「ウォータースクリーン」というこの画期的なシステムを広く使って頂くために、あらゆる分野において積極的に提案していく方針です。また「ウォータースクリーン」を使うことで初めて実現する夢の空間創り、全く新しい空間創りにも挑戦していきたいと思います。


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