[2005/6/17]


地下鉄13号線用の
複合円形シールド機が完成!


開発の背景本システムの特徴今後の展望

 東京地下鉄株式会社(東京メトロ)発注の「13号線神宮前工区土木工事」において、鹿島(社長:梅田貞夫)は、池袋〜渋谷間の8.9km区間のうち、明治神宮前停車場から渋谷停車場(以下駅名はすべて仮称)間の地下鉄シールドトンネル工事で、複合円形トンネルを構築する「EX-MAC(Excavation Method of Adjustable Cutter)工法:イー・マック工法」を開発し、このたび、本工法で使用される複合円形のシールド機(製造:石川島播磨重工業株式会社)が完成しました。
 
マシン
 
表
複合円形断面シールド機

開発の背景



 地下トンネルを構築するためのシールド機は、正円形のものが一般的です。これは、正円が最も力学的に安定しているためです。しかし、地下鉄や道路といった断面が大きな交通インフラにおいては、正円でトンネルを構築しようとする場合には、トンネル上下の利用しない部分も掘削することとなり、掘削量が多くなるとともに不要空間をコンクリートで充填するなどの課題がありました。そこで東京メトロでは、円形の力学的特性を活かしつつ、円を上下から押しつぶしたような複合円形断面のシールドを考案し、明治神宮前停車場から渋谷停車場間の地下鉄シールドトンネル工事に採用しました。
 本工事を受注した当社は、既に矩形シールド断面で多数の実績のある「WAC(Wagging Cutter Shield )工法:ワック工法」の基礎技術を応用して、シールド機のカッターを回転に応じて伸縮させる事により、この複合円形に対応した「EX-MAC工法」を開発しました。
 
断面
断面:円を上下から押しつぶしたような形

 東京メトロでは、現在建設を進めている地下鉄13号線工事(池袋〜渋谷8.9km)において種々の環境負荷低減方策を実施していますが、本工事ではその一環として掘削土を減らすため複合円形断面を採用しました。
 これにより、正円形で掘削するのと比較すると掘削断面が10%程度縮小するとともに、不要空間を充填するインバートコンクリート量を約40%低減させることができます。
 その結果、複合円形トンネルの採用により、セグメント製作費用等が若干増加しても、従来の円形シールドトンネルと同等の建設費用で環境負荷低減を図ることが可能となります。
 当社では、この複合円形断面を実現するために、「EX-MAC工法」を開発しました。

本工法の特徴



 本工法は泥土圧シールド工法で、特徴は次のとおりです。

●1つの回転軸で複合円形を実現

 当社で多くの実績がある矩形シールドの「WAC工法」における伸縮カッター技術を応用して、複合円形トンネルの構築を可能にしました。
 「WAC工法」では、二つの回転軸で矩形トンネルを実現しましたが、カッターの伸縮幅を650mmから820mmに伸ばすことに成功し、1つの回転軸で縦横比1.0:1.15の複合円形を実現しました。
 
伸縮カッター
伸縮カッター

●安定した切羽を実現

 泥土圧シールド工法では、切羽をチャンバ内の泥土による圧力で安定させています。本工法では、4本の伸縮カッターによる掘削が常時行なわれているため、チャンバ内の容積が変動しないように、2箇所に伸縮カッターに連動して動く土圧変動抑制装置を装備して、切羽土圧の安定を実現しました。

〔土圧変動抑制装置〕
 

土圧変動抑制装置1
伸縮カッターが伸びると、土圧変動抑制装置のジャッキが縮み、
容積を一定に保つ。

 

土圧変動抑制装置2
伸縮カッターが縮んでいる時は、
土圧変動抑制装置のジャッキが伸びる仕組み。

●形状保持装置を装備

 シールドマシンのテール内にある組立前セグメントは、土圧などを受けていないため、掘進初期に変形する可能性があります。一方で、テールから出た時点で裏込注入圧を受け変形する可能性があります。これらを抑えるために、以下の2種類の形状保持装置を装備しています。

  1. 空気圧によりセグメント外部から圧力をかけてセグメントを安定させるテール内形状保持装置(東京メトロ他が開発)


  2. 裏込注入等によるセグメントの変形を抑えるために、セグメント内部からセグメントを支える門型形状保持装置(2基)


●洗浄設備を装備

 本工事では、掘削対象土層が上総粘性土層(固結シルト層)となっていることから、伸縮カッター部分への付着・圧密が懸念されるため、伸縮カッター部分には洗浄設備を装備しています。

今後の展開

 

 今後当社では、平成17年7月にシールド機を工事現場へ搬入し、11月頃から掘削を開始する予定です。
 また、今回のシールドは複合円形断面となっていますが、それ以外の馬蹄形断面などへの対応や、拡幅可能なセグメントと組み合わせることで,断面形状を途中で変えることも可能となります。
 さらに、正円と同様の安定性があることから、土水圧の対応が重要となる大深度の交通インフラにも積極的に提案していく考えです。


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