石垣の修復には、まず、第一に石垣の現状を正確に把握することが重要です。本システムでは、最新の測量技術である3次元レーザー測量と最新の画像処理技術を組み合わせ、石垣全体の3次元モデルと石垣を構成する個々の石の3次元座標など、石垣の修復に必要な現状の石垣の状況を遠隔測量します。そして計測されたデータを基に、築城当時の姿をシミュレーションにより再現します。また、修復に必要な設計図、施工図を簡単に作成することができます。
以下に、本システムの基幹となる2つのシステムを紹介します。
T. 3次元レーザー測量と画像処理技術を用いた測量システム
今回のシステムでは、「3次元レーザー測量」と株式会社エマキ(秋月直道社長 本社;福島県会津若松市)が開発した画像処理技術「Mofixテクノロジー*」という二つの最新の測量技術を組み合わせることで、石垣全体の3次元モデルと石垣を構成する個々の石の3次元座標を遠隔測量で正確に計測することが可能となりました。この測量システムによって、仮設足場が不要になるだけでなく、測量時間も格段に短縮することが可能です。また、足場上での高所作業が無くなるため、安全性も向上します。
* Mofixテクノロジー・・・動画データから連続した高解像度・静止画像を全自動で生成するシステム。1枚の写真で収まりきらない長大な構造物などの正確な全体像を、高精細な静止画像に変換可能。
 対象石垣の断面
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3次元レーザー測量で求めた3次元座標と、Mofixテクノロジーで取得した画像データをマッピングする(重ねる)ことで、個々の石の精度の高い3次元座標を求めることができます。
また、画像データを重ね合わせることで、石の表面の微細な割れや色などの情報も記録でき、後の施工管理に大いに役立ちます。
U. 修復図作成システム
測量システムから得られた現状の石垣のデータを解析し、築城当時の石積み技法による形状を再現します。具体的には、築城当時から変状が無い断面を抽出し、その断面を基準に築城当時の石垣形状をシミュレーションにより再現するもので、積み直しの必要な範囲とその形状を定量的に確認することができます。また、再現された形状を基に、修復に必要な図面を任意の断面で簡単に作成できます。
日本の城郭の石積み技法である「野面積」「打込接」「切込接」に対応しており、日本に存在する全ての城郭の石垣の形状を再現することが可能です。