大成建設梶i社長:葉山莞児)と鹿島建設梶i社長:中村満義)は、建設分野における新領域開発、研究効率の向上などを目的として、2000年度から共同で研究を行っており、既にいくつかの研究成果を公表しています。現在、建設業の基盤技術といえる「コンクリートの施工性能」を強化すべく、共同で研究を推進しているところです。
コンクリートの施工性能は、構造物の種類や配筋条件、施工箇所の環境条件や施工方法の違いなどによって要求レベルが異なります。コンクリート構造物の設計体系が性能照査型に移行する中、これらの構造条件ならびに施工条件に応じたコンクリート施工性能を適切かつ定量的に評価する方法が求められていました。
このたび、コンクリート構造物のさらなる品質向上と長寿命化の実現に向けた取り組みとして、東京大学の前川宏一教授のご指導の下、コンクリート施工性能の定量評価システムの構築について、その一部を開発しました。
本システムは、大きく以下の2つの技術要素で構成しています。
第一は、コンクリートの施工性能を定量的に判定する新しい指標の導入です。ここでは、コンクリートの施工性能を「変形性」、「締固め性」、「間隙通過性」の3つの性能で構成されると考えて、それぞれの評価手法を考案しました。この評価手法によって、使用材料や配合の違いごとに、その施工性能を的確で定量的に評価することが可能となります。
第二は、コンクリートの不具合の発生確率と評価の考え方に基づいて、施工性能を評価判定する解析技術です。ここでは、「運搬性能」、「打設性能」の2つの施工段階に着目して、それぞれ設定した施工条件と使用するコンクリート(配合)との関係を、不具合の発生確率の違いで示して、最適な施工条件あるいは配合を求めるものです。最終的には、不具合の発生とその損失コストとの関係、すなわち不具合を評価解析できるようにバージョンアップします。
これらにより、コンクリートの施工性能が適切かつ定量的な指標で評価でき、施工段階での不具合の発生を最小限に抑え、ひいては、コンクリート構造物の長寿命化、ライフサイクルコストの低減にも寄与できるものと考えます。
今後は、さらに一年をかけて、コンクリート施工性能のさらなる定量評価と評価解析技術のためのデータを集積し、「施工性能評価システム」を完成させるとともに、建設業全体の基盤技術の向上に向けて本研究成果を展開していく所存であります。