[2005/8/8]


超高層ビルを対象とした建築的に自由度の高い経済性に優れた構法
『ハイブリッドマルチタワー』を開発し施工中

神奈川工科大学情報学部棟に初適用


背景ハイブリッドマルチタワーの概要ハイブリッドマルチタワーの特長
適用第1号神奈川工科大学情報学部棟の工事概要今後の展望

 鹿島(社長;中村満義)は、超高層ビルを対象に、自由度が高く経済性に優れた構法「ハイブリッドマルチタワー」を開発し、このほど、神奈川工科大学情報学部棟に初めて適用し、現在施工中です。
 この構法は、鹿島が超高層住宅用に開発したスーパーRCフレーム構法(コア壁で地震力の大部分を負担し、柱・梁のないフレキシブルな居住空間を提供する構法)と、中低層建物用ローコスト構法であるニューNEOS構法(柱RC造PCa+梁S造)の長所を組み合わせ、100m超クラスの超高層ビル向けに開発したものです。
 メリットとしては、1)平面計画では効率的なコアプランが可能となりレンタブル比が従来より高くなる、2)断面計画では途中階での吹き抜け空間の設置がリニューアル時に容易に行えるなど断面構成の自由度が向上する、3)梁成が小さくてすむためファサードデザイン及び設備システムの自由度が高まる、などがあげられます。
 コストは、超高層ビルで一般的なCFT造と比較して、躯体費で約15%の低減が図れます。

背景



 従来の超高層ビルは、鉄骨造、または、近年では、コンクリートを鋼管内に充填するCFT造が一般的でした。しかし、これらの構造では、耐震性能を確保するため柱・梁をフレーム構面として設置する必要があり、空間構成に多くの制約がありました。
 一方、当社は超高層集合住宅において、鉄筋コンクリート造のコア壁に建物の耐震要素を集約することにより、居住空間の柱・梁が不要となり自由で開放的な居住空間を提供するスーパーRCフレーム構法を開発し、これまで多くの超高層マンションに採用され、実績をあげています。しかし、この構法を超高層オフィスビルへ展開する場合、執務空間に大スパンが要求されるため、床や頂部梁(スーパービーム)の重量が増加し、不経済な設計となります。
 ハイブリッドマルチタワーは、スーパーRCフレーム構法を基本に、軽量化を考慮したS造床組とローコストに実績のある柱RC造PCa+梁S造のニューNEOS構法を組み合わせ、超高層ビル向けに改良を加え開発した構法です。これらの構成により、ハイブリッドマルチタワーは、経済性に優れ、建築的に自由度の高い空間を提供することができます。
 現在、その第1号として、神奈川工科大学情報学部棟に採用され、施工中です。

ハイブリッドマルチタワーの概要



 ハイブリッドマルチタワーは、スーパーRCフレーム構法と同様に、耐震要素の多くを中央のコア壁に集約させて、柱・梁の出ない居室空間を実現しています。大きく異なる点は、スーパーRCフレーム構法では地震力の大部分を負担するコア壁に曲げ補強鉄筋を用いますが、それをハイブリッドマルチタワーでは鉄骨に変更することで施工性の向上を図っています。
 また、スーパーRCフレーム構法においては、制震装置HiDAMにより地震のエネルギー吸収を行っていましたが、ハイブリッドマルチタワーでは、鉄筋コンクリート造の境界梁が、コア壁を連結するよう配置され、その役目を果たします。
 建物外周架構は、地震力の負担から開放され、自重を支える機能が主となるため、圧縮力に強いRC造を用いたニューNEOS構法(柱RC造・梁S造架構)を高強度化して用います。
 居室の床にはロングスパンに対応し、軽量化と施工性の向上を図るために、逆ハンチ鉄骨小梁とデッキスラブを採用しています。この逆ハンチ鉄骨小梁は耐震要素でなく、梁端部に大きな力を受けないため、端部の梁成が小さくなっていることも、この構法の大きな特徴です。

ハイブリットマルチタワー

   

鉄骨内蔵耐震壁

   

ニューNEOS構法

   

逆ハンチ鉄骨小梁

ハイブリッドマルチタワーの特長

 

 
  1. フリーモジュール(平面計画の効率性向上)
     従来のフレーム構面の制約から脱却し、建物コアプランを外周の柱割りに合わせる必要がないため、それぞれ最適なスパンで設計することが可能となり、占有面積の有効率(レンタブル比)が向上します。
     例えば、基本スパンを7.2mとし、コアのスパンをエレベータのスパンに合わせて6.4mとすることで効率的で無駄の無いプランを成立させることができます。

  2.  
    レンタブル比の向上
    レンタブル比の向上
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  3. 三次元フリースペース(断面計画の可変性向上)
     逆ハンチ鉄骨小梁は従来の大梁ではなく、耐震要素ではない小梁であるため、床スラブに開口を設けることが容易になり、平面的にも断面的にも可変性のある空間を実現できます。
     例えば、リニューアル時にも、テナント専用のエレベータや階段、2層分の高さのある空間(ホール等)の確保、吹き抜け空間の自由なレイアウトなどが可能となるなど、新たな床開口の増設が容易に行えます。
     さらには、将来の事業上の要求に添った変更に対応可能な建物であることから、建物の資産価値の維持及び向上が図れます。

  4.  
    縦方向にプランニングの自由度

    縦方向にプランニングの自由度が高まる

     

  5. インテグレート・デザイン(外装・設備の自由度向上)
     外周梁・逆ハンチ鉄骨小梁の端部の梁成が小さいため、外壁際とコア壁際の梁下(キャビティ)に余裕が生まれるため、外装デザインの自由度が高まります。例えば、ファサードに外気の取り入れ口を組み込んだデザインが容易になります。
     設備的には、空調ダクトの展開が容易なため、さまざまな部屋ごとの人口密度に対応したきめ細かい設備計画が可能となり、将来的なレイアウト変更の自由度が高まります。また、空調機を分割せずに効率的な空調計画が可能となり、従来比で約25%の空調機スペースが削減できます。
  6. オフィス密度

    さまざまなオフィス密度


    設備計画

    逆ハンチ鉄骨小梁を有効利用した設備計画


     
    フロア断面図
    フロア断面図
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    フロアイメージ画像

     
    逆ハンチ鉄骨小梁により設備計画の自由度が高まる

適用第1号 神奈川工科大学情報学部棟の工事概要

 

 

工事概要

完成予想パース

神奈川工科大学情報学部棟 完成予想パース

工事概要


今後の展望


 このハイブリッドマルチタワーは、高さ100m〜150m程度の超高層ビルに適用が可能です。80mを超える高さになれば、仮設材のユニット化等の工夫により、従来のCFT構法に比べ、20%の工期短縮が可能となります。
 今後当社では、このハイブリッドマルチタワーを、経済性に優れ、建築的に自由度の高い超高層オフィスビル用構法と位置付け、今後も積極的にオフィス、学校、その他業務施設に提案していく方針です。


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