本工事は、東京電力が京葉側と京浜側のLNG基地を連携し、東京湾内の各火力発電所への天然ガス供給における効率的な運用を図るために、東京湾を横断する全長20kmのガス専用パイプラインを建設するものです。
本工事は、設計・施工一括発注方式として技術提案募集が行われ、鹿島・西松・大林建設工事共同企業体が富津側工区を受注しました。1台の密閉型泥水シールド機での掘削としては、世界最長のシールドトンネルであり、工事着工からガス導管配管工事へのトンネル引渡しまで37ヶ月の工期が設定されていることから、あらゆる地盤において安定した高速掘進を行うことが求められました。
本工事では、これまで開発した技術を駆使し、泥水式シールド世界最長の9.03kmの掘進距離を東京湾海底下の高水圧下(0.6Mpa)の厳しい条件下でガス導管トンネルの構築を行いました。 また、掘進地盤については、海上からの音波探査結果を10km前後離れたアクアラインのボーリングデータでキャリブレーションし、想定するという間接的な方法で行ったため、不確実性が残っていることが懸念されました。
トンネル線形は安定した洪積層を掘進することとしましたが、地盤の不確実性に対応するため、セグメントは出現する可能性のある地盤条件をすべて考慮した設計を行いました。同様に、設備計画においても、出現する可能性のある地盤すべてに対応できる設備としました。また、想定されるトラブル対策はもとより、想定外の状況に遭遇する可能性は高いことから、シールドマシンだけでなく、シールド掘進の後方支援設備である泥水輸送・泥水処理設備等、数ある設備に対して、多くのバックアップ機能・設備と対応策を予め準備しておくとともに、想定外事項への対応期間を予め設定し、常にこの期間を確保できるよう工程管理を行いました。
また、機械式地中接合工は長距離掘進後の接合作業であることを考慮し、アクアライン工事等で実績のある磁気センサー+RIセンサーと水平ボーリング機による相対位置探査工、更にかん合部の止水対策に用いる止水チューブの止水性を確保するために、両工区のシールド機がカッターのスライド機構を備えたA−DKT工法(
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Tunnel工法)を新たに開発し、適用しました。
これらの結果、ボルトレスで二次覆工省略型のQBUセグメント、及び、セグメントの自動搬送をはじめとする高速施工システムの採用により、カッタービット、テールシールを交換することなくトラブル無しの9km高速掘進を実現した後、補助工法を用いることなく、止水チューブのみで完全に止水し、機械式地中接合を完了しました。