[2005/10/20] |
世界最長の泥水式シールドトンネル(9km)が機械式地中接合完了
★延長9km、高水圧下、海底トンネルが、機械式地中接合完了
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|工事概要| |
鹿島(社長:中村満義)は、東京湾を横断するシールドトンネルにおいて、泥水式としては掘進距離世界最長記録(9.03km)を達成した後、相手工区のシールド機と機械式地中接合を、トラブル無く完了しました。
本工事は、東京電力株式会社発注の「東西連係ガス導管新設工事(富津)のうち土木工事(第1工区)」(トンネル仕上り内径φ3.0m)で、泥水式シールドトンネルとしては、世界最長9km(全線が東京湾の高水圧下(最大0.6Mpa)の海底面下という条件下)の掘進終了後、相手工区シールド機と機械式地中接合を行い、東京湾中央部海面下57mという難条件にも係わらず、従来用いられる凍結工法等の補助工法を全く用いることなく、接合を完了させました。本工事は、海上からのボーリング調査が困難なことから、海上からの音波探査及び既往の地質調査資料からの評価という間接的な方法で得られた地盤情報しかなく、工事は困難が予想されました。そこで当社は、想定されるあらゆるトラブル及び想定外の状況にも対応出来る様、綿密な検討・計画の基に、多様かつ広範囲な対処機能・設備を用意し、施工した結果、所定の全長(9.03km)の掘進と機械式地中接合工をトラブル無く完了しました。
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背景
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現在、環境・防災・国際化等の観点から都市の再生が進められています。都市再生に向けた社会インフラの整備は、大深度地下利用法の成立もあり、地下の有効利用が可能となってきています。都心地下部に、「鉄道」「道路」「下水道」「共同溝」等を構築する方法の一つとして、シールド工法が採用されるケースが多くあります。
シールド工法は、近年ますます長距離化、高速施工が求められています。当社では、社会インフラ構築におけるコスト縮減という社会的要請からトンネルの長距離化、高速施工、大深度化等に対応する様々な技術開発を行っています。 しかし、これまでの国内のシールドトンネルは泥水式工法により6.5kmが最長でした。今回の9km超は、これまでの記録を遥かに上回る世界最長の距離であり、しかも高水圧下の海底トンネルであること、さらに、ボーリング調査なしの不確実な地盤情報の中で、掘進終了後、相手工区と機械式地中接合を行うこと等、難工事が予想されました。
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工事の概要
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本工事は、東京電力が京葉側と京浜側のLNG基地を連携し、東京湾内の各火力発電所への天然ガス供給における効率的な運用を図るために、東京湾を横断する全長20kmのガス専用パイプラインを建設するものです。
本工事は、設計・施工一括発注方式として技術提案募集が行われ、鹿島・西松・大林建設工事共同企業体が富津側工区を受注しました。1台の密閉型泥水シールド機での掘削としては、世界最長のシールドトンネルであり、工事着工からガス導管配管工事へのトンネル引渡しまで37ヶ月の工期が設定されていることから、あらゆる地盤において安定した高速掘進を行うことが求められました。 本工事では、これまで開発した技術を駆使し、泥水式シールド世界最長の9.03kmの掘進距離を東京湾海底下の高水圧下(0.6Mpa)の厳しい条件下でガス導管トンネルの構築を行いました。 また、掘進地盤については、海上からの音波探査結果を10km前後離れたアクアラインのボーリングデータでキャリブレーションし、想定するという間接的な方法で行ったため、不確実性が残っていることが懸念されました。 トンネル線形は安定した洪積層を掘進することとしましたが、地盤の不確実性に対応するため、セグメントは出現する可能性のある地盤条件をすべて考慮した設計を行いました。同様に、設備計画においても、出現する可能性のある地盤すべてに対応できる設備としました。また、想定されるトラブル対策はもとより、想定外の状況に遭遇する可能性は高いことから、シールドマシンだけでなく、シールド掘進の後方支援設備である泥水輸送・泥水処理設備等、数ある設備に対して、多くのバックアップ機能・設備と対応策を予め準備しておくとともに、想定外事項への対応期間を予め設定し、常にこの期間を確保できるよう工程管理を行いました。 また、機械式地中接合工は長距離掘進後の接合作業であることを考慮し、アクアライン工事等で実績のある磁気センサー+RIセンサーと水平ボーリング機による相対位置探査工、更にかん合部の止水対策に用いる止水チューブの止水性を確保するために、両工区のシールド機がカッターのスライド機構を備えたA−DKT工法(Advanced-Direct Docking Tunnel工法)を新たに開発し、適用しました。 これらの結果、ボルトレスで二次覆工省略型のQBUセグメント、及び、セグメントの自動搬送をはじめとする高速施工システムの採用により、カッタービット、テールシールを交換することなくトラブル無しの9km高速掘進を実現した後、補助工法を用いることなく、止水チューブのみで完全に止水し、機械式地中接合を完了しました。
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本工事の技術的特徴
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本工事の技術的な特徴は、次のとおりです。(詳細は、参考資料参照)
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今後の展開
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当社では、社会的ニーズの多様化に伴い、「二次覆工省略」、「長距離トンネルの高速施工」、「大断面化」、「小口径化」、「内水圧対応トンネル」、「トンネル覆工の耐久性向上」、「経済性の向上」に合致した合理的な各種シールドトンネル覆工技術の開発と水平展開を実施してきました。
当社では、今後もQBUセグメントを、二次覆工省略型の長距離シールドトンネル覆工における高速施工システムの強力な手段として、積極的に採用していく方針です。QBUセグメントは本工事の他に、春日井共同溝瑞穂工事(国土交通省中部地方整備局)、仙台北部共同工事(仙台市)、新杉田共同溝(国土交通省関東地方整備局、設計施工一括発注方式)、多摩川上流水再生センター(東京都発生)でも採用されています。 また、高水圧下での機械式地中接合に成功したことで、同様な条件の他工事への展開が可能になりました。 本工事で得られた長距離・高水圧下・機械式地中接合シールドトンネルの設計・施工における様々なノウハウを、今後の長距離シールド工事に活かしていきたいと考えています。 また、ダブルジャッキ式同時掘進工法についても、後方設備のコストアップを抑制した上で、安定した高速掘進を行う有効な手段として、今後とも長距離シールド工事へ広く水平展開を図っていきたいと考えています。
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工事概要
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