[2005/11/1]


山岳トンネルのコンクリート巻厚を高精度に計測

〜新電磁波レーダ装置の開発〜

背景開発した装置の概要開発した装置の検証今後の展開

 鹿島(社長:中村満義)は、コマツエンジニアリング梶i社長:津村勇三)と共同で、このたび供用中の山岳トンネルの健全性を判断するためにコンクリートの厚さ(巻厚)を電磁波で高精度に計測できる「速度解析型電磁波レーダ装置」を開発しました。

 従来の電磁波を使った計測装置では電磁波の送信器と受信器が一方向で構成されており、コンクリートなどの測定対象の正確な電磁波速度が得られず、コンクリートの厚さの調査精度に課題がありました。このたび開発した装置は、1つの送信器から発した電磁波を2つの受信器で受信する仕組みで構成されています。これにより電磁波速度を正確に算出でき、従来の方法に比べ格段に高精度化を達成しました。
 開発した本装置を用いて、奈良生駒高速鉄道株式会社が建設しているけいはんな線東生駒トンネルで測定したところ出来型検査に近い計測値が得られ、その有効性を実証することができました。
 今後、供用中のトンネルで構造物の補修案件が増える中、本装置を用いて積極的にトンネルの健全性調査診断を実施していく方針です。

背景

 近年、供用トンネルの健全性の調査や補修を必要とする案件が急増しています。特に在来工法で施工されたトンネルでは、二次覆工コンクリートの巻厚不足や背面の空洞などに起因する変状も少なくありません。そのため供用トンネルの健全性を評価するためには、コンクリートの巻厚及び背面空洞の調査が重要となります。
 トンネルの巻厚や背面空洞の調査では、トンネルのコンクリート面にレーダ装置から電磁波を放射し、電磁波がコンクリート内を透過・反射する往復時間によって電磁波速度を算出し、巻厚と背面空洞を計測します。しかし、従来の受信アンテナが1つの装置では、正確な電磁波速度の算出が難しいことから、計測された電磁波速度と文献データや経験値などを統合した推定値が採用されており、計測精度の向上が求められていました。

開発した装置の概要

  1. 電磁波レーダ装置の原理
     電磁波を利用したコンクリートの厚さ調査方法の原理は、コンクリート表面から電磁波を放射し、内部を透過した電磁波が奥の境界部から反射してくる反射波を受信器でキャッチして、厚さを調査するものです。

  2. 装置と計測方法
     本装置は、アンテナ装置と制御・解析装置に分かれていて、アンテナ装置には発信アンテナと受信アンテナが内蔵され、制御・解析装置にて電磁波速度を算出する仕組みです。

    自動速度解析型電磁波レーダ装置全景

     計測を行う際は、アンテナ装置をコンクリート面に接地させながら測定方向へ進み計測を行います。
     従来の調査方法では、トンネル壁面の一部に穴をあけコンクリート巻厚(厚さ)を実際に調べることもありますが、開発した電磁波レーダ装置は連続的に厚さを測定できるので構造物に損傷を与えることなく短時間の調査が可能です。

  3. 従来装置の比較と電磁波速度
     巻厚は、電磁波がコンクリートを透過する正確な速度がわかれば算出が可能ですが、従来の装置は、電磁波を受信するアンテナ装置が1つであったために往復時間(T)しか計測できずそのため、電磁波速度を仮定した上で、巻厚を算出していました。
    従来装置の比較

     そこで、今回開発した装置はアンテナ受信器(受信2)を増やしT1とT2の往復時間が計測できるため、正確な電磁波速度を算出することができました。

  4. 電磁波のルート
     電磁波は、アンテナ装置の送信器から流れ、共通反射点で跳ね返り2つの受信器アンテナ装置に戻ります。
     また、背面空洞が発見される箇所は、電磁波がコンクリートを透過し背面空洞を越え岩盤(共通反射点)に到達するまでの空洞を透過する時間差により、特定の位置が確認できます。
    ※共通反射点⇒電気的性質が変わる部分で、コンクリートと岩盤の境目部分を言う

開発した装置の検証


磁波速度の自動算出により、高精度の調査が可能
 開発した電磁波レーダを用いて、「けいはんな線」東生駒トンネルにて実証試験を行いました。従来の装置では巻厚推定値に20cm程度(±10cm計測誤差)の幅を生じますが、開発した装置では、計測結果に推定幅を持つことはありません。また出来型検査結果と比較したところ±2.5cm程度の高い計測精度を確認することが出来ました。

結局、従来の方法に比べ4倍程度の高精度化を達成しています。(当社実験比較比)

実証実験の比較
<現場で実証試験をした際の比較>


今後の展開

 今後、供用中のトンネルで構造物の補修案件が増えるなか、本装置を用いて積極的に調査診断を実施していく方針であります。


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