本工事では、子機発進のための開口を設ける方式がこれまでに前例のない新方式(ゲート旋回方式)であること、また、子機発進防護のための地盤改良を行わないことなどから、特に、地中で確実にゲートを開けること、ゲートを開けた後の出水事故の危険回避が課題となりました。
分岐発進におけるゲート旋回方式
分岐地点と地中接合地点が近接しているため、地中接合地点の到達精度が求められましたが、実績のある外胴スライド方式では、補助ジャッキによる到達掘進となるため、到達精度の確保が懸念されました。そこで、シールドジャッキによる到達掘進を可能とするため、到達後にモータでゲートを旋回して子機発進用の開口部を設ける「ゲート旋回方式」による分岐発進工法を採用しました。
地中でゲートを確実に開けるために、シールドの外とシールド内の圧力差を同じにする事としました。具体的には、マシン内部に内郭圧力室を設け、マシンの外側と同じ0.3Mpaの泥水を注入することで、ゲート内外の圧力を均衡させたのちにゲートを旋回させる方法を取りました。これにより、発進防護工なしという条件下で、トラブルなく分岐発進を行うことができました。
ゲートを開けたあとの出水事故防止のための対策
ゲートを開けた後、4分割された子機を順次親機内で組み立てながらの発進となるため、ゲートを開けたあと、シールド機がエントランスを通過するまで約1ヶ月かかります。その間の出水事故防止のため、子機発進のエントランス部に2段エントランスパッキンを採用し、ゲートと分岐胴のクリアランスにも耐水圧0.7Mpaのシールを採用するなど、様々な止水対策を施しました。また、万が一ゲートが開かなかった場合には、地下水位低下工法と圧気工法の併用で対応することを想定し、また、出水事故が起こった場合の対策として、坑内に緊急止水隔壁を設けましたが、出水等のトラブルなく、分岐発進工を無事終えました。