[2006/02/17]


地震による上水道管路の被害予測と復旧戦略を
事前検討できるシステム

「上水道ネットワークの広域復旧戦略シミュレータの開発」

背景システムの概要システムの特徴今後の展望

 鹿島(社長:中村満義)は、想定地震に関する地震動の予測結果を取り込んで、上水道管路網の被害予測や復旧戦略、復旧期間を予測することができる「上水道ネットワークの広域復旧戦略シミュレータ」を開発しました。

 昨今の地震では、建物に限らず水道施設も大きな被害を受け、完全復旧までに時間を要し地域住民に多大な影響を及ぼす結果となっています。そこで対策として考えられることは、地下埋設管で構成される上水道管路網を耐震化することですが、実際には相当の時間とコストが必要となることから思うように進んでいないのが現状です。そのため、現在は地震発生直後の応急復旧対応能力を普段から訓練することが重要な対策の一つとして考えられています。

 当社は、日本水道協会等で取りまとめた水道管路網の地震被害予測をもとに、過去の地震で蓄積された復旧経験と広域ネットワークの解析技術(経路探索技術)を応用することにより、応急復旧戦略を一貫して検討できるシステムを構築しました。 本システムは、自治体で管理する実際の水道管路網を対象に、地震後の応急復旧戦略を事前検討することが可能です。更に、地理情報システム(GIS)を活用することで、パソコン上で入出力情報をビジュアル化して被害予測や復旧戦略、復旧期間を算定することが可能となります。

 今後、当社では、管路網の耐震化対策の検討や震災対応の経験が少ない自治体における防災教育・訓練ツールとして活用していただくよう、本システムを広く提案していく考えです。また、将来的には、当社が水道事業に関する技術提案型入札や拡大が見込まれる水道PFIに参加する際、事業の災害リスク評価ツールとして活用することを考えています。

背景

 地震発生直後の初動体制、断水している地域住民への応急給水、被災した水道施設の応急復旧は、復旧人員数や普段からの緊急対応への準備状況により実際の対応に差が生じ、事前に応急復旧対応能力を訓練しておくことが重要であると言われています。
 従来、上水道管路網は地中に埋設された管路であるため、地震時の挙動の把握が困難でした。しかし、近年発生した大型地震の経験をもとに被害データの蓄積と研究開発が進んだことにより、概略的な被害予測が可能な状況になりました。
 本システムの開発は、文部科学省が推進する開発テーマ「大都市大震災軽減化プロジェクト」において、大都市圏で大地震が発生した際の人的・物的被害を大幅に軽減するための研究開発です。そのサブテーマである「シミュレーション活用方法の開発」で、本システムの研究を当社が受託することが決まり、実施してきたものです。

システムの概要

 広域復旧戦略シミュレータは、想定した上水道管路網の被害予測結果を基に、管路被害を効率的に応急復旧するための人員配置や優先復旧順位などの考え方を訓練・習得するためのパソコン向けのソフトウエアです。
 地理情報システムの技術を活用することにより、解析の入出力情報を可視化情報として提供することが可能です。

上水道管路網の可視化イメージ
上水道管路網の可視化イメージ

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システムの特徴

1.システムの導入が簡単画面イメージ1
 上水道管路網のデータの電子化が完了している自治体の水道事業者は、比較的簡単にシステムを導入することができます。特別なソフトウエアを準備することなく、WindowsをOSとするパソコンでシステムが使用できます。
自治体が管理する全ての管路網(本管から小管)を対象に広範囲に画面上で確認できます。

2.上水道管路網の被害予測機能画面イメージ2PDF59KB
 自治体の水道管路網において、任意の想定地震に関する地震予測を基に被害予測をします。必要な情報として、被害予測をする範囲の構造物、管路、設備データを取り込むことで、簡易被害予測の結果が出力されます。

3.最適復旧戦略の予測機能画面イメージ3PDF100KB
 復旧戦略を算定するには、被災箇所、被災程度、管種、管径等の被害予測をもとに、優先復旧拠点、復旧人員、給水人口、管の重要度(本管、支管)等、復旧戦略別に復旧予測が可能です。

4.地震直後の復旧戦略の違いによる復旧期間の比較画面イメージ4
PDF245KB

 例えば、2つの復旧戦略でシミュレーションを行うと以下のようになります。

  • 配水池から各給水地点への給水量を最大とする復旧
  • 防災拠点(医療機関、避難場所等)、大口径管、中口径管への復旧を優先しつつ、各給水地点への給水量を最大とする復旧

 本システムでは、地震直後の復旧戦略の選択により、地域全体の応急復旧期間がどう違うのかをシミュレーションすることが可能となります。


今後の展望

 当社は、本システムを自治体での上水道管路網耐震化対策の検討や事前教育訓練ツールとして活用していただけるよう広く提案します。また、将来的には、当社が水道事業に関する技術提案型入札や今後拡大が見込まれる水道PFIに参加する際、事業の災害リスク評価ツールとして活用することを考えています。


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