1.【早期地震警報の社員への配信】
気象庁が配信する緊急地震速報は、震源に近い観測点で観測された初期微動
(P波)をとらえ、遅れて到達する主要動(S波)と呼ばれる大きな揺れが到達する前に、地震の発生時刻、震源位置、地震の規模などを知らせる仕組みです。試験運用を経て、今年8月から本運用が開始されています。当社では、緊急地震速報の情報を元に、当社がこれまで蓄積してきた豊富な地盤データや解析手法を用いて、当該地域までの地盤における地震の伝わりやすさ、その地盤の揺れやすさ、また、その建物固有の揺れ方を評価した上で解析を行うことで、より精度の高い情報を提供する「鹿島早期地震警報システム」を開発、既に複数のマンション建設現場に適用しています。
今年、本社の震災訓練では、
「地震まであと10秒。震度5強」の想定の警報を、部署長をはじめとする約140名の社員のパソコンに表示するとともに、館内放送で警報を社員に伝える訓練を初めて行います。地震までの10秒間で一体何ができるのか。社員が身をもって体験し、後にアンケート調査を行うことで、その有効性、伝達方法の検証を行うことにしています。
2.【重要拠点施設の被災状況を推定するツール】
今回の訓練では、「本社の震度は5強。本社ビル群は一部に建物損傷があり、火災が発生した箇所もある」との想定で行われます。大地震時には、赤坂に点在する本社ビル群はもとより、首都圏周辺の重要拠点の被災状況をいち早く把握することが業務継続のために非常に重要です。鹿島では、早期地震警報や地震発生時に観測される地震記録を元に、特に優先度の高い首都圏の拠点の被災状況を自動的に評価するシステムを開発し、本年の震災訓練にて、実際に情報収集に活用します。
このシステムにより各拠点の被災程度を把握し、地震後どの程度の機能を発揮できるのかを早期に確実に判断し、事業継続のための意思決定に役立てる考えです。
3.【広域的な被災状況を推定するツール】
もしも夜間や休日に大地震に襲われたら・・・従業員の安否確認や社員の自宅の被災状況の把握は困難を極めることが予想されます。また、被災状況によっては、出社できる社員の確保が難しい場合もあるでしょう。
今回開発した「マクロ被災状況表示ツール」は、従業員の所在地(自宅やそれぞれの勤務先)を元に、被災状況を評価できるツールです。地理情報システムを用いて、広域的な震度分布や建物の損傷を評価し、地図上に図示します。
このシステムの従業員の被災度推定には、後述する「従業員自宅耐震診断ツール」で蓄積した従業員の自宅のデータを活用します。
4.【従業員の自宅を耐震診断するツール】
本システムは従業員の自宅について簡単に耐震診断するためのツールです。実際に、社内イントラネットにこのツールを8月末から公開し、社員自ら診断を行っています。社員が入力した自宅の建物情報は前述した「マクロ被災状況表示ツール」に反映され、より精度の高い被災度推定に役立てるほか、従業員は自宅の地震危険度を認知し、防災意識の向上や安全対策を行うるのに役立てています。