今年4月に建築物省エネ法が完全施行となるのを前に,建設業界や不動産業界をはじめ,
一般社会の環境意識が高まっている。
法改正にともなうBELSやCASBEEといった認証制度の複合的な運用や,
快適性を損なわない環境技術の拡充に注目が集まる。
当社では2013年3月に「鹿島環境ビジョン:トリプルZero2050」を策定して以来,
持続可能な社会に向けた取組みを進めている。
2016年8月,本社隣地に完成したKTビルは当社の省エネ技術におけるひとつの到達点といえるだろう。
自社の技術を昇華させた都市型中規模オフィスの最新モデルは,環境性能と知的生産性の向上を図り,
ZEB Readyを達成。CASBEE第三者認証でもSランクを獲得した。
今号の特集では,KTビルに投入された技術の粋に迫るとともに,低炭素社会の実現に向けた当社の実践を紹介する。
法改正で変わること
建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)の一部施行が始まったのは2016年4月1日。オフィスビルにおいては建物規模に応じた規制措置と,エネルギー消費性能の向上を促す誘導措置のふたつが重点項目となった。同法が1年間の段階的な運用を経て今年4月に完全施行される。法改正のポイントは,2,000m2以上の特定建築物等に対してエネルギー消費性能基準への適合が義務化されることだ。そして,省エネ性能の第三者認証にBELS(建築物省エネルギー性能表示制度)が用いられる。BELSはBEI(一次エネルギー消費量)の数値に応じて,省エネ性能が★の数で5段階表示される。視覚的にも明快な指標であり,今後の普及が見込まれる。
トリプルZERO2050からKTビルまで
当社ではこうした法整備に先立ち,持続可能な社会の実現に向けた全社をあげての取組みを進めてきた。2013年3月に策定した「鹿島環境ビジョン:トリプルZero2050」はそのひとつだ。社会基盤整備を担う企業として今果たすべき役割を問い,「CO2排出ゼロ」「廃棄物ゼロ」「自然へのインパクトゼロ」をめざす将来像を描いた。その足がかりとなる中期目標「ターゲット2030」では,2020年にZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)を実現し,2030年にこの普及をめざすことを掲げている。
昨年8月に完成したKTビルはこうした流れに対応した最新鋭の省エネビルである。わが国において,今後最も省エネ化の需要が見込まれる都市型中規模オフィスの最新モデルとして環境性能を追求した。その結果,計画段階のエネルギー消費量を標準値から54%削減し,BELS五つ星を獲得,国内オフィスビルでは初となる「ZEB Ready」を達成した。CASBEEのBEE(環境性能効率)では認証期限が継続している建築物としては国内最高数値となる8.1を記録し,CASBEE第三者認証(建築環境総合性能評価システム)でSランクを取得している。