高谷 真次
〔1996年入社〕
1996年工学研究科建築学専攻修士、同年入社、建築設計本部に配属。2001年~2002年技術研究所、2003~現在まで建築設計本部。 これまで携わった主なプロジェクトは、フジクラ深川開発計画商業棟、品川シーサイドフォレスト、芝浦アイランドグローヴタワー、衆議院赤坂議員宿舎、凸版印刷堺工場。
新たな発見との出会いに向けて
1. 魅力
これまで10数年間にわたり、構造設計に関わってきました。
その経験を通して感じる構造設計の魅力は、以下3つ。
・ものができること
・自由な発想
・無限の可能性
右の写真は、私が学生時代、建築の構造に興味をもつきっかけとなった国立室内総合競技場(代々木体育館、設計=丹下健三) 。人の目に心地良い形は力学的にも優れているのではないかと感じさせてくれます。
2. ものができてしまう緊張
入社直後の研修を終え、構造設計部で最初に設計に関わったのは集合住宅(麹町ミレニアムタワー)の床スラブでした。
学生時代の研究はシミュレーションによる最適設計であり、計算結果を、実大実験などで確認した経験はありませんでした。
実務に携わり、自分が設計した床が実際につくられる段になると、その床が人の命を預かることなることに緊張感を覚え、何度も設計規準を見直した記憶があります。
今でも、その建物を目にするたびに当時の緊張感がよみがえってきます。
3. ものができるよろこび
入社3年目に、複合商業施設プロジェクト(深川ギャザリア商業棟)の構造設計チームに加わりました。
このプロジェクトでは毎日のように現場に通い、変更対応、工作図検討、現場確認などに明け暮れましたが、なにもないところから始めて建物を創り上げてゆく過程によろこびを感じました。
開店後、ひとりの客として商品を購入したときには、思わず笑みが浮かんでいたものです。
4. 自由な発想による挑戦
入社6年目、新人時代に初めて現場で柱や梁の配筋を見た時に、簡略化できるのではないかとなんとなく感じた思いを胸に、技術研究所へ異動。その思いを実現するために画期的なアイデアを盛り込んだ技術開発に挑戦しました。
骨組実験によって性能が確認できた結果、実建物にも適用されることになり、「自由な発想」が「ものができること」につながり、大きな達成感が得られました。
挑戦できる環境があることに大きな魅力を感じました。
5. 自由な発想だけではない
その後、HiRC工法、スーパーRCフレーム構法、フラットプレートなどの技術を用いて、超高層をはじめさまざまな集合住宅の設計に携わりました。
理論をベースとして自由に発想した工夫を盛り込み、最善の空間を提供できるよう設計を行いました。その成果には自信がありましたが、いざ販売となり、購入希望の方々にモデルルームで構造を説明する役目がめぐってきたとき、そのしくみや利点を分かりやすく的確に伝えることができたかどうか.….
設計に専念しているときには考えもしませんでしたが、「伝える能力」が重要であることを思い知らされました。
6. 無限の可能性
現在は半導体や電子部品などの生産施設を担当しています。
この分野は企業間の国際競争がとても激しく、施設の設計にも迅速な対応が求められます。否応なしに世界経済に巻き込まれていることを実感する日々です。
また同時に、この分野の技術、すなわちcmではなくnmの技術の世界に可能性を感じています。考えてみれば建築の構造もnmの世界から成り立っているわけなので、突き詰めて行くと、無限の可能性が開けるのではないかと感じています。
新たな発見に出会えることが楽しみです。