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設計担当者のコメント

zigzag

建築設計の立場から
「都市に浮かぶダイアゴナル」

上岡 修

敷地は昔ながらの電気街エリアと再開発エリアが出会う潮目にある。
場所は秋葉原、不動産投資顧問会社のコンペで始まった商業系マルチテナントビルの開発プロジェクト。東京という都市と建築を同時に捉え、どう関係を結ぶか思案してきた。それは社会・経済・環境を建築の問題として引き受け、プロジェクトの与件から価値を導く行いである。
街路は歩く人波で溢れ、店舗の引力により人々の立体的な分布も豊かにみえる。この街に充満する商業の活力をあらわし、生き生きとした都市の群像を映す商いのかたちを考えた。
街並に対して、2つのエリアを繋ぐ路地とピロティを仕組み、どこからでも寄り付ける開いた場を構えた。建物では、閉じた外殻の現代商業建築に対し、多様な店舗のアクティビティや商品そのものがファサードとなり、それに誘われ人が集まる、商いの祖形に近づこうと試みた。透明な外殻は、密集地でもフルハイトガラスが可能な鉄製のカーテンウォールで設え、都市の風景に奥行きを与えている。架構は最小断面を求めて、柱を傾けブレース効果で応力・変形を制する「ダイアゴナルカラム」を開発した。店舗をまとい都市に浮かびあがる柱の有機的な姿とともに、内側から拡がって内外をにじませるような、街並との一体感をもたらすスペースをめざした。
顧客の構想を発展させるインセンティブが、常に我々を価値の創造に駆りたてる。変貌する都市と向き合い、揺るぎない思考を重ねたベストソリューションを描き続けたい。

構造設計の立場から
「受身でない構造設計」

樋口 聡

構造設計者は、安全を提供することに重きを置いて仕事をしている。顧客やそこに集う人々の生命や財産を守ることを第一に考え、日常的な重力または地震や台風の外乱に対して安全性の確保を目指し設計している。
さらに二つの配慮も重要である。
一つは、設計を共同で行う意匠設計者と設備設計者の職能やフィロソフィーへの配慮である。構造設計的に満点の設計だけすれば良いのではない。設計チームが望む、美しく、快適で心地いい建築を共同して設計していかなければならない。
もう一つは、顧客に対して、投資する額以上の付加価値をもたらす建築を提供することである。顧客の要望の深層を理解することも構造設計者には必要なスキルだと思う。
「zigzag」は、秋葉原という新しい文化を生み出し続けている地に建つ商業ビルである。時代の変化に順応するために、店舗面積を最大化し、かつインパクトのある外観デザインが要望された。そこで生み出されたのが、柱を外周だけに配置し、その柱をやや斜めに傾けブレース効果を付加した「ダイアゴナルカラム」システムである。また、設備の更新性向上にも配慮し、コア計画にも細心の注意を払った。
この建築は、意匠・構造・設備が統合的に設計されたものであり、その成果が顧客の満足度や、テナントの賑わいに現れていることに大きな喜びを感じている。

設備設計の立場から
―シンプル&フレキシブル―

岩崎 由佳

A 初めて設計した建物
物販店舗、飲食店舗といった商業テナントを心地よく招き入れるための設備計画とは。
どちらの用途がきても、またこの地で展開されるであろう多種多様なテナントがきても、最大限受け入れることのできる設備計画とは。 様々な制約がある中で、いろいろなことを想像し、自分なりにその在り方を考えた。

B 3つの答え
1.建物の存在感を高める
特徴である斜め柱を、足元に仕込んだLED照明によりライトアップすることで、建物のコンセプトをシンボリックに浮き上がらせる。秋葉原の過剰になりがちな外壁や看板などの中にあって、照明を抑えた演出で省エネルギーを図りながら商業系マルチテナントビルとしての存在感を発揮している。

2.テナントに貸すスペースをできるだけ広く確保する
コア周りのシャフト・外部メカニカルバルコニーに設備機器を整理・集約し、合理的な展開ルート、メンテナンス方法を検証して設備スペースの最小限化を図り、貸室面積有効率90%実現に貢献している。

3.最大限の設備を想像し、必要最低限の設備を用意する
将来に渡って変化するニーズに伴い入居するテナントの様相も変わる。なかでも、飲食店舗が入居する場合は厨房に対応する設備が必要となるため、全館飲食店舗が入居しても良いよう備えることで建物のフレキシビリティを高めることができる。「最大限の設備が構築できるスペース」を確保した上で、「どんなテナントにも必要な最小公倍数の設備と、最大限を実現するための基幹設備」のみを抽出し備えておくことで、よりシンプルでフレキシブルな設備システムを実現している。

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