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災害に対する備えを万全に。
学校は生徒たちの安全を守る
重要な施設です。
東日本大震災を受け、生徒たちを守るシェルターとしての校舎の役割がクローズアップされ、想定を超えたリスクへの対応策がますます求められています。
建物の安全と機能を守り、快適な教育環境を作ることが耐震構造を超える革新的構造技術として誕生した制震・免震構造の基本コンセプトです。
鹿島は、世界に先駆けて各種の制震・免震システムを実用化し、建物への適用を図ってきました。
地震対策技術のトップランナーとして、豊富な実績とノウハウに基づき、学校の耐震診断から地震対策技術の導入まで、学校機能の維持につながる最適な災害対応策を提案します。
免震・制震・耐震とは
建物の安全と機能を守り、快適な教育環境を創る
免震は揺れを逃がす構造、制震は揺れを吸収する構造、耐震は揺れに耐える構造です。
免震構造
免震構造は、地盤と建物の間に免震装置を設置することにより、建物への揺れを低減します。
研究設備や什器等の転倒を抑えられるので、安全性は飛躍的に向上します。また交通などの振動対策にも有効です。
免震構造の特長
①地震の揺れを1/2〜1/5に低減します。
免震装置は地震の衝撃を吸収し、構造躯体への地震力の伝達や変形を低減します。
②研究設備や什器等の転倒・破損を防止し、大切な財産を守ります。
建物の揺れを低減するため、研究設備や什器等の転倒が少なくなり、安全な環境を維持します。
③学習機能の継続を実現します。
①②の特徴や設備配管等の破損も軽減できるため、災害後の学習機能の継続に寄与します。
免震レトロフィット
免震レトロフィット工事は、既に建っている建物に対して、上部の躯体に耐震部材を加えることなく地震に強く安全な建物にすることが可能なため、歴史的価値が高い建物や公共施設など業務の中断が難しい建物に有効です。
鹿島では、東京丸の内駅舎保存・復原工事に代表されるような免震レトロフィット工事の実績が多々あり、お客様の大切な建物を安全に免震改修できる技術を有しています。
東京駅丸の内駅舎保存・復原工事という国家的プロジェクトで培われた技術は、キャンパスにおいても学園のシンボル的な記念校舎の保存や、実験・研究施設を振動から守るための免震工事に応用展開されます。
多摩美術大学 図書館 ─安全性とデザイン性の両立─
多摩美術大学八王子キャンパスの新図書館(2007年竣工)は、2008年度の日本免震構造協会賞の作品賞を授賞した建物です。
「図書館という重いイメージの建物をハイヒールのように細くくびれた足で支えたい」という意匠デザインを、免震構造で実現しているところが評価されました。
51基の免震装置と、FEM解析(有限要素法)などの解析手法による制度の高いモデル化を行うことにより、スレンダーなアーチのみで構成される開放的な空間を実現させ、安全と構造美を見事に両立させました。
免震構造の適用事例
制震構造
細く高い形状の建物では、免震ではなく制震の方が有効な場合があります。アクティブ型(機械装置を駆動させて揺れを抑える)、パッシブ型(建物に組み込んだ装置が揺れを吸収する)など、鹿島独自の多様な制震メニューから、対象建物に最適なソリューションを提案します。
下記のほかにも、より安心・安全な建物の提供を目指して、継続的に新たな技術開発に取り組んでいます。
制震構造の特長
①都市型の超高層建物にも適する構造形式
制震構造は、免震構造に比べて長周期地震動に対しても効果を発揮するため、超高層建物にも適しています。
②風揺れに対しても効果を発揮
強風時の建物の揺れが小さくなり、安全な学習環境を提供できます。
制震構造の適用事例
耐震補強
免震補強や制震補強も含め、建物の耐震性能を向上させることを耐震補強といいます。
免震構造や制震構造以外にも、筋交い(ブレース)や耐震壁の設置、柱や梁の補強など、補強には様々な構法がありますが、それぞれその効果は異なります。
鹿島は、老朽化の度合い、耐力、周辺環境など校舎の特徴を分析し、補助金の活用も含め、最適なソリューションや構法を提案します。
耐震補強の適用事例
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パラレル構法とは?
パラレルフレームと細いPC鋼材で建物外部から補強を行います。そのため、良好な室内環境を確保することができます。
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鉄骨フレーム補強とは?
方形のロの字型フレームを採用することで窓開口を確保し、補強後の教室の使い勝手及び通風、採光を確保しています。
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ハイブリッドマルチタワー構法とは?
中央のコア壁に耐震性能を集約させる構造。床や間仕切りの可変性を高め、自由な教室ボリュームを創ることが可能となります。設備配管の変更も容易なことから、中高層の校舎に最適です。
天井耐震化・天井レス化
児童生徒等の安全確保に万全を期す
東日本大震災では、天井などの大規模な崩落事故による人的被害や事業中断が大きな問題となりました。
文部科学省は、2013年に「学校施設における天井等落下防止対策のための手引き」を発行し、天井の耐震点検と対策を各学校設置者に要請しています。
その中で、児童生徒等の安全確保に万全を期す観点から、天井撤去(天井レス化)を中心とした落下防止対策の検討を促しています。
鹿島は、豊富な実績を基に、大空間の特徴に合わせて天井吊り下地の補強、天井形状の単純化、天井の軽量化など最適な補強法を提案し、学校の価値向上を実現します。
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天井撤去(天井レス化)とは?
通常、天井裏には設備や配管などが配置されており、これを天井材が覆っていますが、天井落下防止のためには、天井材を撤去してしまうことも根本的な解決策の一つです。
こうした天井レス化(直天井化)による天井落下防止対策は、主に体育館やショッピングセンターなど、見栄え(設備や配管が露出して見えます)や機能面(音響や断熱など)よりも耐震安全性が優先される空間に適用が可能です。
非構造部材(天井・設備)の被害の概要
天井の破損や落下の原因
東日本大震災では、建物の構造体から吊られた天井材や設備機器は、地震動により揺れが増幅され、構造体よりも大きな加速度を受けました。天井自体の崩落やこれまで耐震対策の検討から除外されていた範囲の設備機器等で被害がみられました。
段差のある天井部や天井内の設備機器は、それぞれが異なる周期で揺れることにより、相互干渉も発生します。このような要因が複合して、天井の破損や落下の原因となりました。
このような要因が複合して、天井の破損や落下の原因となりました。
対策前(非耐震)
下の映像は耐震性が考慮されていない天井を東日本大震災で得られた地震波を用いて、鹿島の大型振動台で揺らした場合です。地震により地盤から建物内に伝搬して来る地震力は、天井面においては段差部等の天井の吊り長さが異なるエリアに集中しやすくなり、次の順序で天井の崩壊や設備機器の落下が発生しています。
- ①:天井の段差部分(中央部のやや右側)と低い方の天井(段差部から左側)で下地金物が外れる。
- ②:低い方の天井が一体となり崩落する。
- ③:高い方の天井(段差部から右側)が大きくゆれ始める。
- ④:高い方の天井が右端部の壁に激しく衝突し、壁が崩壊する。
- ⑤:天井内設備機器(左側箱状の機器)を吊っているボルトが切れ、天井裏面に落下する。(実験の安全のため、ワイヤー吊りしています)
対策後(耐震)
右の映像は、非耐震の天井実験の結果をもとに、損傷した部分に対策を施した天井を同様の地震波で揺らした場合です。対策により天井は崩壊しません。実施した対策は以下のような内容です。
- ①:天井を揺れにくくするために、天井内に2対の斜め補強材を設置。
- ②:段差部分の補強。
- ③:下地金物を滑りにくいものに変更。
- ④:設備機器を揺れにくくするために、吊っているボルトに斜め補強を襷掛けに設置。
国の施策(法令、補助金等)
法令、指導等
国土交通省 | 文部科学省 | |
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2013年8月 |
天井の脱落対策に関する基準を新たに定め、新・増改築時の適合を義務付ける建築基準法施行令・告示を公布 脱落によって重大な危険を生じるおそれがある天井を「特定天井」(※)と定め、新築、増改築時には当該基準の適用を義務付け。 (※)以下のいずれにも該当する吊り天井
既存建物へは原則として適用されないが、防災拠点施設(庁舎、体育館等)や、固定席を有する劇場、映画館、公会堂等には、改修が行政指導される。 |
「学校施設における天井等落下防止対策のための手引き」を発行し、天井の耐震点検と対策を各学校設置者に要請
|
2013年9月 | 技術解説書を開示 | |
2014年4月 | 建築基準法施行令・告示を施行 |
補助金等(平成26年度の例)
最新の詳細情報は、各省のホームページ等をご参照下さい。
国土交通省 | 文部科学省(私立学校施設の例) | |
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補助事業 | 住宅建築物安全ストック形成事業(住宅・建築物耐震改修事業) | 大学、短大、高専 防災機能等強化緊急特別推進事業(学校施設耐震改修事業) 高校、中等教育学校、中学校、小学校、 特別支援学校 防災機能強化施設整備事業(非構造部材の耐震対策) |
対象施設 | 以下の要件に該当する天井であること
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次のいずれかの要件を備えているもの
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補助率等 | 補助対象経費の11.5% ※地方自治体に制度があれば+11.5% |
大学、短大、高専 1/2以内 高校、中等教育学校、中学校、小学校、 特別支援学校 1/3以内 |
限度額 | 天井面積当たり:13,000円/m2 | 大学、短大、高専 下限300万円(短大、高専はなし)~上限なし 高校、中等教育学校、中学校、小学校、 特別支援学校 下限なし~上限2億円 |
その他、各都道府県の独自の補助制度については、各都道府県の窓口にお問い合わせ下さい。
適用事例
学校BCP(事業継続計画)
災害時に生徒の命を守る学校BCP
BCP(事業継続計画)は、緊急時に企業の根幹の事業をいかに継続させるかを常時計画しておくというビジネス用語ですが、東日本大震災では、学校にとっても重要な課題であることが認識されました。
避難所となった公立校は元より、私立校の多くも、帰宅難民となった子どもたちを宿泊させたり、水や情報を求める人達に応じたりしました。
災害に強い学校をつくるには、平常時から被災後を想定した復旧対策の優先度や対応体制、ルールづくりといった運営・ソフト面と、それを支える施設・ハード面の両輪を強くしなければなりません。
鹿島は、幅広い見地と独自のノウハウ、確かな技術で、災害時の事業継続対策を支援します。
学校BCP運営モデル
被災時に校舎や体育館などを近隣や社会にどこまで開放するかを含め、継続すべき事業の根幹は何かを常時想定し、運営モデルを描くことが、BCPのスタートです。
災害が起こると、地域の避難場所に指定されている公立の学校では、モデルⅠの緑の線のように、避難者を受け入れるために施設の稼働率が通常よりも上がります。
そんな中、2011年に発生した東日本大震災では、私立学校においても帰宅困難な生徒・児童を保護しなければなりませんでした。しかしながら、地震への備えには学校によって様々であり、結果として、施設が使用可能になるまでの期間に格差が生じてしまいました。
そうした反省を踏まえ、私立学校でも、モデルⅡの赤色の線のように、復帰の早い施設と運営のシステム化が必要とされます。
学校BCP施設モデル
鹿島は、発災直後、数日後、数か月後と、被災プロセスに応じたBCPメニューを盛り込んだ、学校BCP施設モデルを用意しています。
学校BCP施設モデルでは、被災時に体育館などを避難所として活用することを想定し、ライフラインである電力、水、汚水処理機能を確保しています。
食糧や物資などを保管する備蓄倉庫や停電時に稼働する自家発電設備設置の他、体育館には備蓄水槽、浄化器を設置することで、飲料水として利用できるプール、シャワー室等を完備します。
避難スペースとなる体育館の天井は、落下の危険性をなくすため、天井レスとしています。
BCPに有効な鹿島の技術
火災時避難シミュレーションシステム
鹿島が開発した災害等の予測・対応技術は、施設計画時の検討はもちろんのこと、既存校舎のリスク回避策としてもご活用頂けます。
火災時の高度な避難シミュレーションシステム
-「人・熱・煙連成避難シミュレータ PSTARS:ピースターズ」-
(People, Smoke, Temperature, And
Radiation interaction evacuation Simulator on Sim-Walker)
火災時の「熱」と「煙」が「人」の行動に与える影響を考慮した、世界で唯一の避難シミュレーションです。避難者の滞留による危険や火災に応じた避難状況の違いを動画で可視化し、検証を行います。
多くの避難者を潜在的に抱える学校では、避難安全設計の計画が重要です。施設計画に当たってこのPSTARSを活用することで、シミュレーションに必要なデータ作成の省力化や計算の高速化が図られ、スピーディに熱や煙、生徒や教職員の避難行動を分析することができます。
また、人や火災の動きを3次元の動画で示すことが可能であるため、想定される火災時の避難行動を分かり易く理解頂くことが可能です。
- 火災発生と同時に避難開始、人が出口に殺到がするが、適切な開口部を設けたことで50秒後には避難完了。
- 部屋が煙を留める機能を果し、廊下への煙の漏えいを遅らせ、廊下に煙が漏れ出した時には階の避難が完了。
- 安全に避難できることを検証しています。
本システムは自社開発のため、現地条件に応じた歩行行動ロジックの追加や高度化等の改良が容易に行うことができます。今後、さらなる実績の積み重ねとシステムの改善を進め、火災時の歩行者の安全性・円滑性に配慮した施設計画立案等に役立て、より安全な施設を提供していきます。