最高の音質が生きる空間

• ティアラこうとう

  下町に出現した宝冠の輝き
  　今なお江戸の風情を残す深川は，木遣（きやり）や砂村ばやし等の伝統芸能を大切に保存している。この地に，地域の文化拠点，ティアラこうとうが新しくオープンした。都営地下鉄新宿線住吉駅から徒歩５分，外壁の３分の２がガラスで覆われる宝冠の様なその外観から，「ティアラ」と名付けられた。差し込む自然光によって常に明るい内部にはメインとなる客席数１，２３４席の大ホールと１４０席の小ホールの他，地下２階には大小６室のリハーサル室，大，中，小の会議室を配備している。大ホールは四層吹き抜けで，１３．７ｍの天井高を持つシューボックス・スタイルを採用し，クラシックからロックまで幅広く対応できる。小ホールはオープンステージ形状と呼ばれ，ステージを中心とした放射形を形成。ミニコンサートホールとして一般に公開されるが，音響設備はもちろん，格調でも大ホールとともに最上級といえよう。
  
  

• 新日鐵紀尾井ビル・紀尾井ホール

  音楽とくつろぎの空間を創造
  　新日鐵紀尾井ビルは，新日本製鐵の発足２０周年記念事業の一環として計画されたものであり，同社の文化発信と，社会貢献活動の拠点として位置づけられている。特徴は，クラシック音楽専用の中ホールと，邦楽専用の小ホールの２つのホールが上下に重なるように存在するというユニークな構造となっている。
  　中ホールは，シューボックス・スタイルのコンサートホールであり，キャパシティは室内オーケストラの演奏に適した８００席。オープンステージを採用して演奏者と聴衆の一体的臨場感を演出している。小ホールは「音楽としての邦楽」発表の場を主目的とした２５０席のホールである。能舞台の良さを取り入れたオープンステージとワンスロープ式客席が採用され，邦楽用ホールとして，邦楽の演奏に最もふさわしい明瞭な響きを持つ音響空間を創出している。同ホールは，紀尾井町という由緒ある地の利を得て，特徴ある２つの心臓を持つコンサートホールとして，４月２日にオープンする。
  
  

• 住友海上名古屋ビル・しらかわホール

  上質の音響空間
  「しらかわホール」は，住友海上火災保険の創業１００周年記念事業の一環として名古屋市に建設されたもので，地下鉄鶴舞線，東山線の乗り入れる伏見駅から約３分。住友海上名古屋ビルの内部にある。同ホールは，クラシック音楽専用の純粋なコンサートホールとして計画され，ホールの形状に，音響的に理想とされるシューボックス・スタイルを採用。上壁部から天井にかけて曲線が描かれ，下壁面は木質系の色彩にまとめるなどホール全体が豊潤な音が充満するよう，デザイン面でも理想を追求している。
  　２階席には，音響と視覚を考慮し，正面バルコニーを採用。上質の空間を実現するために，様々な音響技術が導入されている。また，リハーサル時においても公演時と同様な音響条件を確保するために，ホールの空席時と満席時の残響時間差を最小にする特殊な椅子を採用し，理想的なハーモニーを提供できる。未来を見つめる「しらかわホール」は名古屋地区の文化・音楽の振興に貢献するとともに「音楽と人の新しい出会い」を提供する事だろう。
  
  

• たかすメロディホール

  町を活性化する起爆剤
  　北海道鷹栖町は，平成４年に開基１００周年を迎え，記念施設として，文化ホール建設を企画した。未来の子孫のため，こころ豊かな文化の町を育てる中心施設，「たかすメロディホール」の誕生である。同ホールは，ローカルから発信する芸術・文化の拠点づくりを目指し，音楽，演劇，映画など幅広く対応でき，上川中部圏域の人々に広く活用される運営方法を意図している。鷹栖の由来である「チカップウニ」すなわち，アイヌ語で，大きな鳥の住む所から発し，大きな鳥が羽をひろげる様な曲面屋根をモチーフとしている。５００人収容の音楽中心のオーディトリアムの前面には大雪山系の山々を眺めることのできるホワイエ，両脇に扇型の形状を持つ多目的ホールと管理諸室を配置。インテリアは，優佳良（ユーカラ）織による緞帳，客席シートをはじめとして，内部には道産材のタモなどを使用している。クラシック音楽の生演奏から，芝居，演劇，講演会まで，多種多様な演目に対応が可能なホールで，生きた音をそのままホール全体に伝えることを主眼としている。