特集:水といきる−水のある豊かな暮らし−
Chapter 2 上水をつくる〜水質の浄化 part1
 近年,水道水源の汚染がクローズアップされている。これまで主流だった沈殿,砂濾過,塩素滅菌による浄水処理システムでは,クリプトスポリジウム※1が十分除去できなかったり,トリハロメタン※2などが生成したりすることが問題となった。さらに最近では,主に藻類が原因で生じる水のカビ臭さや,滅菌剤によるカルキ臭を低減して「より美味しい水」に対するニーズが非常に高い。また重要なライフラインとして,水道施設の耐震性確保も,これからの重要課題となっている。
 これらのことから,老朽施設の更新・耐震化にあわせ,従来システムから膜濾過や紫外線滅菌システムへの転換,オゾン処理+活性炭処理という高度処理の導入といった流れが加速してきた。
 当社では現在施工中の東京都水道局・東村山浄水場の高度処理施設建設をはじめ,全国で多くの浄水場,高度処理施設,配水池の建設を担当している。また紫外線処理や膜濾過をはじめ様々な技術開発を行い,新たな浄水処理技術の導入も働きかけている。

※1 クリプトスポリジウム
病原性微生物の一種。人間の消化管内で増殖し,下痢症状を引き起こす。1996年に日本でも,水道水にクリプトスポリジウムが混入したことが原因で,集団感染が発生している。クリプトスポリジウムには塩素耐性があるため,紫外線で不活化するか,膜濾過などにより物理的に除去することが必要である。

※2 トリハロメタン
水の中の有機物質と浄水に用いる塩素が反応して生成される化合物。肝障害,腎障害を引き起こす原因となり,発癌性も疑われている。
横浜市水道局 小雀浄水場小雀6号配水池(横浜市戸塚区 当社JV施工 2007年竣工)「緑豊かな水源の森」をイメージした巨大壁画に彩られた配水池 大阪市水道局 柴島浄水場上系高度浄水処理棟(大阪市 当社JV施工 2000年竣工)
当社関係会社のカジマアクアテックが販売する高度浄水システム
「クリプトレス」砂濾過と大孔径膜の特徴を併せ持ち,クリプトスポリジウムを効率よく除去するスレッド式濾過装置 マイクロフィルター膜濾過装置「クリプトガード」の大規模施設設置例 紫外線を照射してクリプトスポリジウムを不活性化させる「クリプトキラー」

 Chapter 1 飲み水、農業用水を貯える
 Chapter 2 上水をつくる
 Chapter 3 水の力で電気をつくる
 Chapter 4 ビルの中で活躍する水
 Chapter 5 水辺で動植物と共生する
 Chapter 6 水をきれいにして戻す