特集:鉄とコンクリートの世紀

大構造架構を実現した
鉄骨

●鉄骨構造を可能にした鋼材の進化
 わが国の鋼材の歴史は、1901年に鋼材の生産を始めたときから始まる。当時の鋼材は品質が安定しておらず、その使用も一部の建造物に限られていた。しかし、1963年にはH形鋼が製作されるようになってその実用範囲を著しく拡大していった。
 重厚長大産業の発達とともに鉄鋼業が基幹産業となり、臨海工業地帯を中心に全国各地に製鉄所が数多く建設された。鋼材の性能や価格、加工面において改良が進み、鉄骨構造への普及に貢献してきた。

●超高層建築への適用

 ところで、当時の建築物は関東大震災の教訓から、高い建物は耐震的に不利であると、建物の高さが31m以下に制限されていた。
 その後、コンピュータの解析技術の発達によって「柔構造」の研究が進み、超高層を実現する土壌が整った。こうして1968年、当社の手により霞が関ビルが完成した。当社はこれより後の世界貿易センタービルや新宿副都心の超高層ビル群、サンシャイン60などを次々と手掛けていった。

●質的向上、多様化した鋼材

 1980年代半ばから始まったバブル経済により、全国で都市の再開発やウォーターフロント開発、リゾート開発などの大型プロジェクトが次々と始まった。街には個性的な外観をもった建物が建ち、その構造も複雑化、大規模化していった。それに応じて鉄骨の性能も、より高強度のものが開発されてきた。
こうした中、高層建築で内部に吹き抜けやロングスパンの空間を持った、スーパーストラクチャーと呼ばれる大構造が注目され始めた。当社が施工した東京都庁第二本庁舎などは、高強度で溶接性の良い厚板のTMCP鋼という鋼材が用いられた。この鋼材は、新宿パークタワー、フジテレビ本社ビルなどの大規模構造物へと受け継がれていった。
 昨年、建築基準法の改正で決まった「性能規定」への移行では、鋼材の使用に関しても同様の規定が盛り込まれた。これに対して、溶接部の品質など多様な要求性能を満たした「SN規格」が鋼材メーカーから開発されている。昨今完成したNTTドコモ代々木ビルなどにはこの鋼材が採用されている。これからは顧客の要求に合った性能を満たすために鋼材の性能を活かす努力が不可欠になってくる。

左から新宿住友ビル、新宿三井ビル、京王プラザホテル、KDDビル
新宿副都心:左から新宿住友ビル(1974年竣工)、新宿三井ビル(1974年竣工)、京王プラザホテル(1971年竣工)、KDDビル(1974年竣工)
 
霞が関ビル
霞が関ビル(1968年竣工)約3万tの鉄骨、約9万m3のコンクリートを使用。鉄骨には極厚のH形鋼が採用された。そして現場で鉄骨の組立てを行うプレハブ化を進めた。各階の床には鋼製のデッキプレートを敷き、捨て型枠としてコンクリートを打設するという画期的工法を生み出した

東京都庁第二本庁舎
東京都庁第二本庁舎(1990年竣工)
NTTドコモ代々木ビル
NTTドコモ代々木ビル(2000年竣工)
ららぽーとスキードームザウス
ららぽーとスキードームザウス(1993年竣工)

フジテレビ本社ビル・ニッポン放送本社ビル
フジテレビ本社ビル・ニッポン放送本社ビル
(1996年竣工)



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