特集:鹿島のCSRを考える

メディアの眼〜いまこそCSR
メディアは,企業のCSRのどこを注目しているのか。
企業がCSRに関する情報発信で気をつけるべきことは何か。
CSRに詳しい「AERA」(朝日新聞社)の後藤絵里記者に聞いた。
後藤絵里記者 「CSR(企業の社会的責任)」という言葉は一般用語として広く定着しましたが,証券会社,保険会社,流通からゼネコンまで,世間を揺るがす企業不祥事は後を絶ちません。今ほど企業のCSRが求められる時代もないでしょう。
 CSRに積極的な企業は「強い企業」なのではないか。そんな思いをきっかけに,AERAでは,06年初めに業界を代表する201社(回答は135社)にアンケート調査をしました。従業員の働きやすさ,環境への取り組み,コンプライアンス(一般に法令遵守と訳されますが,意味するところは「社会への適応」)など,AERAの視線で企業価値を考えてみました。取材して感じたのは,業績と100%連動しているわけではなくても,安定成長する企業,着実に伸びている企業ほど,CSRに積極的だということです。番外編で北海道の老舗菓子会社「六花亭」を取り上げました。小さな家族的な会社で,顧客,従業員の満足度はともに高く,ホームページからも経営の理念が伝わってきます。新商品開発にも積極的で,業績も堅調です。小所帯ならではの動きやすさもあるのでしょうが,CSRと業績が相乗効果を生んでいる好例だと思いました。
 具体的な話をすると,企業のCSR度をみる時,いくつか重視する点があります。トップが率先して取り組んでいる,コンプライアンス体制が整っている,経営の透明性が高い――などです。中でも情報開示は非常に大切です。株主だけでなく従業員,消費者,地域社会など企業活動にかかわるすべての利害関係者(ステークホルダー)に対するものです。情報開示にはメディアを大いに利用すればよいのです。時には自社に不都合な情報の開示も迫られ,瞬間風速的にマスコミや世間の糾弾を受けるかもしれません。でも,ステークホルダーが事実に対して共通認識を持つことで,知恵が結集され,解決策は自ずと見えてくる。それだけ問題解決も早いのです。
 その意味で,CSRは「転ばぬ先の杖」だと思います。日頃からCSRに取り組むことは,長い目で見て企業のリスク回避になります。働きやすい職場の実現は生産活動の質を高め,生み出す製品やサービスの質の向上をもたらします。環境への配慮は息の長い企業活動を続ける礎になります。コンプライアンスと情報開示に日頃から努めていると,不測の事件事故に直面した時,ステークホルダーの理解も早く,不必要な混乱を招かずに済むでしょう。昨今のテレビ局や製菓会社の例に見られるように,事後対応のまずさが問題をさらに広げるというケースが多いのです。

 ただし,CSRは上だけの号令も下からの提案だけでもダメ。トップの本気の姿勢,従業員一人ひとりの意識が大切です。多くの働く人たちは,単に給料を得るためでなく,社会にとって有意義な仕事をしたいと願っています。企業の存在意義は経済的利潤の追求だけではないはずです。少子化や地球環境問題など,社会全体で取り組まなければならない問題が増える中,企業の役割,中でも業界のリーダーの役割は大きいのです。鹿島のCSRに大いに期待したいところです。

 interview
 鹿島のCSRの全体像・鹿島のCSR関連部署
 ア・ラ・カルト 〜建設業と鹿島とCSR〜
 メディアの眼〜いまこそCSR