特集:ハイ・ファッション & テクノロジー
ねじれるファサード(仮称)ピアス銀座ビル
カーテンウォールの見上げ。正面がアルミ,ほかの面がプレキャストコンクリート(PC)となる。写真右の建物コーナー部に見られるように,部材の端の形状がすべて異なる
施工中のPC側カーテンウォール。珪砂と白色セメントを混ぜた自然発色コンクリートが温かみを醸し出す。3層分を1ユニットとして三重県の工場で製作し現場に搬入した「玉すだれ」を建てる
 東京・銀座4丁目の交差点から歌舞伎座へといたる中ほどに,「(仮称)ピアス銀座ビル」が美しい曲線を描いて建ち上がった。壁全体が1階から最上階へ上がるにしたがい,85度ねじれる。「玉すだれ」のようなイメージだ。
 ファサードはアルミとガラスを組み合わせたボックスと,コンクリートとガラスが組み合わされ,72段積み上がっている。実際は13階建てのビルだが,「工事としては72階建てをつくる感覚。全体がねじれているため,横材の端部の形状が違うだけでなく,各層の平面もすべて異なり,柱と床のジョイント部の角度も変化する。そのすべてを描いた図面の量は,通常の5倍になった」と現場を担当した加藤亮一所長は説明する。
 現場での作業のポイントは,壁材のユニット化だ。一般的な工法では,作業員が上空のゴンドラで取り付け作業を行うが,部材数と横方向の作業量が膨大で工期に間に合わない。壁材の取り付けを地上で済ませる方法を追求したのである。

自然色の表情
 カーテンウォールを構成する横材は,色にも繊細な工夫が込められている。プレキャストの「自然発色コンクリート」である。珪砂(けいしゃ)と呼ばれる赤味をおびた砂と,白色セメントを組み合わせ,自然素材がもつ柔らかな風合いをビルの表情に求めた。
 さらに,この部材は室内にも露出するため,「部材断面の4方向すべてがそのままビルの“仕上げ”となる。非常に高い精度が求められた」と,加藤所長は工事当初を振り返る。
 発注者は多くの化粧品ブランドをもち,美容サービスを行う総合美容企業。「オーナー自らが部材の生産工場まで訪れ,綿密なテストとチェックを繰り返した」という。銀座を訪れたときには,遠くから曲線美を眺めるだけでなく,ぜひビルの間近まで寄って,コンクリートとは思えない穏やかな自然色を見てほしい。
地組みされるカーテンウォール。各段のボックスを工場で製作・搬入し,ビル足元で1フロアユニットに組み立てられる (仮称)ピアス銀座ビル
建物概要
場所:東京都中央区/発注者:ピアスアライズ/設計:久米設計/構造設計協力:当社建築設計本部/用途:商業施設,事務所/規模:S造 B3, 13F 延べ 7,102m2/工期:2006年4月〜2008年2月
(東京建築支店JV施工)

 都心に「氷山」を築く The Iceberg
 ねじれるファサード (仮称)ピアス銀座ビル
 軽やかに包む石のカーテン ザ ジュエルズ オブ アオヤマ
 銀座をうるおす垂直の庭 ニコラス・G・ハイエックセンター
 紙工作のような白い塔 (仮称)青山プロジェクト