3-3(注) 「カンチレバー・トラス」
 
 
 
 ドイツのハインリッヒ・ゲルバーが径間を延ばすために考えた橋の形式。 1867年にゲルバーは彼のアイデアにより中央径間に2つのヒンジをもつ3径間連続桁橋をハスフルト市のマイン河に架けた。 この形式の連続桁橋をゲルバー桁といい、長スパンに適していたため欧米で急速に普及していきました。

  この考えを取り入れたのがエディンバラ郊外のフォース湾に架かるフォース鉄道橋。それまでの橋では、両岸の橋脚を支点にして、トラスの橋の中央に延ばしていき、中央で両側のトラスが出会ったところをヒンジで止める方式であった。橋の荷重は橋脚を支点として、中央側と岸側では釣り合いを保つように(カンチレバー方式)設計していました。ゲルバーは、橋脚を支点にし、岸側におもりをつけ、両側の橋脚から中央へのびるトラスに、さらに橋桁を載せても橋荷重が十分に釣り合うようにしました。中央径間に2つのヒンジをもつ形式の橋がゲルバー桁と呼ばれるようになりました。

  ゲルバーの考えを採用したフォース鉄道橋(1890年)は、鋼トラス構造の橋です。左右から伸びた橋桁を支えにして、中央トラスを載せて荷重のバランスがとれるようになっています。 こうした構造の場合、中央の橋桁は、工場で製作し、巨大なフローティングクレーンで一気に架け渡すという工法をとることが多いです。(フォース鉄道橋でもこの方法で中央桁を架けました。)

  この考え方は、その後、橋の形式に関わらず、採用されています。たとえば、後で出てくる斜張橋でも、中央径間を延ばすために、橋荷重を支えるケーブルに余裕がある場合には、主塔より岸側の箱桁におもりを入れてバランスを取る例もあります。この後、フォース鉄道橋の橋の形式は「カンチレバー・トラス橋」といわれるようになりました。
 
 


 

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