5-1(注1) 平行線ケーブル
 
 
 細い鋼線を撚って束ねたワイヤーロープを発明したジョン・ローブリング。彼は、より強い平行線ケーブルを発明します。これは、鉛筆大の太い鋼線を撚らずに平行に束ね、それをバンドで束ねたもので、非常に強いケーブルを作ることに成功したのです。この平行線ケーブルを使ったはじめての近代的な吊り橋が1855年に完成したナイアガラ橋です。橋の設計・建設はジョン・ローブリング。ナイアガラ渓谷をひとまたぎするこの橋は、中央径間244m、上段を鉄道、下段を人と馬車が通っていました。これだけの重さの列車を通す長大吊り橋は、現在に至るまで、瀬戸大橋と香港のツィンマ橋(1997年完成)しかありません。 この橋の成功によって、彼は、ブルックリン橋を手がけることになるのです。
 
 


 

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  5-1(注2) 潜函工法
     (ニューマチック・ケーソン)
 
 
 
 
  
 ケーソンとは、基礎あるいは港湾工事に用いられる箱状もしくは円筒状の構造物。ケーソンを利用して基礎を築造するケーソン工法は,適当な支持層が地中の深いところに存在するが,土止めや仮締切りをしただけではその深さまでの掘削が困難な場合に使われます。 ニューマチックケーソン(空気ケーソン、潜函(せんかん)とも呼ばれる)は、通常,長方形,小判型の断面をもつ筒状の構造物で,先端部に作業室と呼ばれる蓋付きの空間を作り、その内部に外部の水が入らないように高圧の空気を送り込みます。そして作業員が作業室内に入って土を掘り出しながらケーソンを沈下させるのです。人などの出入りや土の排出は鉛直のシャフトとエアロックを通じて行い、沈下終了後、載荷試験を行ってから作業室をコンクリートで閉塞します。地盤を直接確認しながら作業を進められる利点はありますが,人が作業できる限界は3.5気圧までなので,空気ケーソンの水面下の深さは最大35mと考えていいでしょう。ヨーロッパでは1850年ごろから利用され、日本には1900年ごろ導入されました。関東大震災後の復興時、隅田川の橋梁基礎を作るのに用いられて以来盛んに利用されるようになったのです。なお、空気ケーソンでは,高圧下での作業後の減圧に伴って、体内組織中に溶けていた空気中の窒素分が気泡化してケーソン病(潜水病)を引き起こす危険があるので、気圧に応じた作業時間、気圧の増減時間の規制を行う必要があります。(c) 1998 Hitachi Digital Heibonsha, All rights reserved. ブルックリン橋の橋脚工事では、多くの作業者がこのケーソン病で倒れ、陣頭で指揮したワシントン・ローブリングもこのため、半身不随になりました。
 
 


 

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