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既存建物制震構法の実用化
既存建物がHDS(ハニカムダンパシステム)により「震度7」に耐えられる「制震ビル」に変身

大正製薬本社ビル制震補強

 当社は小堀鐸二研究所と共同で既存建物の制震構造化構法を開発、実用化し、大正製薬本社ビルに世界で初めて適用した。
HDS(ハニカムダンパシステム)
■制震補強適用第1号―大正製薬本社ビル
 1977年に竣工した大正製薬本社ビル(地下1階、地上10階)は、当時の建築基準法に基づく通常の安全性を備えた建物として設計された。 しかし、全国に拡がる企業活動の中枢機能を担い、震災時にも機能維持が必要とされ、防災拠点の役割を担わなければならないため、 大地震に対しても軽微な被害にとどまることが改めて要求された。 オフィスビルの機能を損うことなく、高い安全性の確保と居抜き施工という要求に応える構法として、制震構造化構法が採用されることとなった。
  • ハニカムダンパによる制震補強システム
     この建物に適用した制震構法は、各方向とも建物外周部の四隅に新たに一構面ずつハニカムダンパ付鉄骨ブレース架構を設け、既存建物と接合するものである。 システムの特長は以下のとおり。
    1. 制震架構のもつ耐力補強とダンパによる応答低減効果によって補強構面数が少なくなる。
    2. 既存部分の柱梁の補強が不要である。
    3. 建物の外周部だけによる補強のため、居抜き施工が可能となる。
     また、この建物への適用では、床面積の増加を伴わないこと、補強構面が少なく大規模修繕に該当しないこと、により既存遡及の扱いを受けないことを確認している。 なお、3〜9階の外壁(雑壁扱い)については、壁がせん断破壊されたのちの変形能力を確保するためスリット施工(壁にスリットを入れる)を行う。

  • 信頼性の高さと合理性
     本構法は動的設計に基づき、地震の大きさ(震度・加速度・速度)に応じ、信頼性の高い制震設計によって安全性の確保が行われている。 また、本建物では安全性レベルを、超高層ビルの指標と同等(入力地震の大きさを50cm/sec.)にしたが、同じ条件で耐震補強とした場合との比較検討も行っている。 その結果、耐震補強に比べ、補強構面数が約1/2になるなど経済性にも優れ、制震構造化構法の方が合理的であることがわかる。
■今後の展開方針
今後は更に、数多く存在している既存不適格建物や防災拠点となる重要建物へ積極的に「既存建物制震構法」の適用をはかっていく方針である。
大正製薬本社ビル制震補強完成模型 四隅にハニカムダンパ付鉄筋ブース架溝を設けている


写真は鹿島月報より転載

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