特集:新エネルギー最前線

生ごみ発電 生ごみで自動車が走る時代へ!
世界初 生ごみ燃料電池発電
映画「Back To The Future」のラストシーンで,未来から戻ってきた博士が自動車型タイムマシーンに路上のバケツから生ごみを取り出して入れる。そんなシーンを覚えているだろうか?未来では生ごみを燃料にして自動車が走るの?そんなことできるの?と疑問を感じた人もいただろうが,この新世紀の始まりにそれが今,現実となる。

生ごみ燃料電池発電施設が ついに完成!
 生ごみ発電はこの度,新エネルギー供給目標の中にバイオマス発電として新たに導入された。有機性廃棄物である生ごみを燃やすことなく,電気を起こすという点で,廃棄物発電とは異なる。近年のごみ処理問題と温室効果ガス削減に寄与する,夢のような技術が実用化への第一歩を踏み出した。 
 
施設全景
施設全景
地図
設置者:環境省
発注者:富士電機
実証期間:平成13年から3年間
建設場所:神戸市中央区港島(ポートアイランド)
敷地面積:約2,000m2
対象生ごみ量:事業系生ごみ6t/日

バイオリアクター/ガスホルダー
奥に見える円筒形のものがバイオリアクター,その手前の白い球体がガスホルダー

燃料電池
燃料電池

 神戸市で,世界初の生ごみのバイオガス化燃料電池発電施設が稼動を開始した。この施設は環境省が実施する地球温暖化対策実施検証事業の一環として,温暖化の原因となる温室効果ガスの削減に資する新しい技術と,バイオマスエネルギーを利用した実証システムの構築,そして,その成果を全国に普及させることを目的として計画された。この事業に,当社が開発した生ごみメタン発酵システム「メタクレス」が採用されている。メタクレスは既に数件の大型商業施設で実績を上げ,その後NEDO(新エネルギー・産業技術開発機構)との共同開発により,世界で初めてバイオガス化燃料電池発電を実証した。今回の事業にはこの成果が生かされている。
 この施設では,市内の複数の大型ホテルから発生する調理屑・残飯などの生ごみ(一日約6t)をメタン発酵させ,バイオガスを発生させる。バイオガスの中から水素を取り出して燃料電池で発電させる。燃料電池は水の電気分解の逆の反応で,水素と酸素を反応させることにより電気と水を発生させる。燃料電池で発電された電気は,その半分が施設内で利用される予定である。将来構想としては残りの電気は充電スタンドに送られ,電気自動車の燃料に,また,燃料電池に利用されないバイオガスの一部は圧縮され,CNG(圧縮天然ガス)自動車の燃料に使われる。
 具体的には,6tの生ごみから約2,400kWhの電気を得ることができる。これは,240世帯分の1日の消費電力量に相当する。

神戸生ゴミ燃料電池発電施設システムフロー

メタクレスのしくみ
 生ごみは水で希釈され粉砕された後,バイオリアクターと呼ばれる円筒形のプラントに送られる。バイオリアクターの中には,有機物の分解力に優れた高温メタン発酵菌を固定化した炭素繊維性の黒い筒(担体)が充填されている。このリアクター内を菌が最も活発化する約55℃に保つことで,高温メタン発酵菌が効率よく生ごみを分解し,短時間で大量のバイオガスを発生させる。
 バイオガスは天然ガスと同様に,メタンガスを主成分とするガスで,そのまま燃焼させることができ,ボイラーやガスエンジン,マイクロガスタービン発電機,燃料電池などに使用できる。
 生ごみは含水率が高いため,焼却させるためには大量の化石燃料が必要なうえ,燃焼条件によってはダイオキシン発生の原因とも成り得る。「メタクレス」は生ごみを燃やさずに,エネルギーを生み出すバイオマス技術であり,温室効果ガスを大量に削減できるだけでなく,資源循環型社会の構築にも貢献できる21世紀の画期的技術である。

7/7〜9/30に福島県 須賀川市で行われている「うつくしま未来博」の展示施設でも,メタクレスが稼動している。会場内の生ごみ30kgをバイオガス化し,マイクロガスタービン発電機で発電して,施設の夜間照明の一部に利用している。

メタン発酵菌 バイオリアクター内部
メタン発酵菌 バイオリアクター内部




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